大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

ポナの季節・37『決断のシースパロー』

2020-09-17 06:32:47 | 小説6

・37
『決断のシースパロー』
         


ポナ:みそっかすの英訳 (Person Of No Account )の頭文字をとって新子が自分で付けたあだ名


 護衛艦ひとなみではカレーの味が話題になっていた。

 横須賀を出港するときに烹炊長の移動があった。その新しい烹炊長が、昨日着任以来最初の金曜日を迎え、初めてのカレーを作ったのだ。
 海自では、曜日感覚を保つために毎週金曜日はカレーライスと決まっていて、その味付けは烹炊長の腕にかかっている。
 大ニイの達幸は味の違いは分からなかったが、艦内では昨日からこの話題でもちきりだった。
 海上勤務は単調なので、こんなことでも乗組員には重大事のようになる。

 しかし、今回の哨戒任務がカレーライスどころではなくなることを誰も予想は出来なかった。

「当直任務を交代します」
「当直任務交代。18:00(ヒトハチマルマル)」
「いよいよ尖閣だ。哨戒厳重に」
「了解」

 達幸は、いつものように船務長と当直を交代した。尖閣に差し迫った事態は起こっていなかったが、尖閣の哨戒にあたるときは、これが合言葉のようになっていた。

「砲雷長、カレーはどっちがうまかったかね?」
 同じく当直に入った艦長が聞いてきた。ブリッジの空気を和やかにしようという心配りであることは分かっている。それほど、この任務は神経を使う。
「はあ、自分は味オンチなので、違いが分かりませんでした」
「ハハ、砲雷長らしい答えだ」
「二時の方向に中国機の反応。距離50海里。高度300、上昇中!」
 若いレーダー手が、一気にブリッジを緊張させた。
「低空で隠れて、一気に姿を見せる……威嚇だな」
「……高度1000で水平、速度350ノット。5分で領空に侵入します」
「やれやれ、警戒態勢レベル2。CICに行くぞ。当直交代」

 当直がとけたばかりの船務長を筆頭に、交代要員がブリッジに上がってきた。

 CICに着くと、さらに詳しい情報が分かってきた。
「目標はドローンと思われます。高度500まで落とし、さらに接近中」
「JDAスクランブル確認」
「艦長、空自さん間に合いませんね……」
「衛星周回の隙を狙った発進ですね」

 達幸は、自衛隊では行儀が悪いとされているズボンのゆすり上げをやって、艦長に苦笑いされた。

「過去のデータには無い新型のようです。画像出します」
 CICのモニターは、正面からのドローンの映像を写し、デジタルで拡大していった。
「艦長、こいつミサイルを搭載しています!」
「レーダーコーンの見間違いじゃないのか?」
「……HY2の改良型に見えます」
「域内の巡視船に連絡、対空防御。総員戦闘配置!」
「目標ドローンミサイルを発射。弾着まで50秒!」
「艦長、撃ち落します」
「よし、スパローでやれ」
「右舷スパロー、オート!」

 三秒後スパロー2発が発射され、15秒後にミサイルが、20秒後にはドローンそのものが撃ち落された。

 どこから見ても正当防衛であったが、事態は意外な方向に、そして寺沢家に影響を及ぼすのであった。



ポナの周辺の人たち

父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊

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かの世界この世界:74『タングリスと以心伝心の目配せ』

2020-09-17 06:23:09 | 小説5

かの世界この世界:74     

 『タングリスと以心伝心の目配せ』   

 

 

 乾杯の後は宴になった。

 いつの間にか広場のあちこちにテーブルが出され、そのテーブルを中心に人々が思い思いに集まってビールを飲んだり、ふんだんに用意された料理に手を伸ばして盛り上がっている。二十人ほどの楽隊は、三つほどに散らばってポルカのような軽快な音楽を奏で、町の人たちが二人一組で手を取り合ってステップを踏んでいる。

 誰が指揮をしているわけでもないのに、ステップの輪は広場の噴水ステージを二重に取り巻く大きな輪になって、文字通りのフェスティバルになった。

「俺たちも入っていいかなあ」

 ロキが目を輝かせながらも、しおらしくタングリスに聞く。

「ああ、いいとも。ここから見ていてやる」

「よし、行くぞ!」

「こら、引っ張んなあ!」

 ロキはケイトの手を取って踊りの輪の中に入っていく。

――見物だけとはつまらない――

「うわーー」

 声がしたかと思うと、タングリスもブリュンヒルデも町長や町の若者に手を引かれていってしまった。

 臆したわけではないが、わたしは山車の陰に回ると、クルクルと踊っている人やビールの泡を飛ばしている酔っぱらいたちをかいくぐって、迎賓館のポーチに移った。宴もたけなわなのだろうが、一人ぐらいは冷めた目で控えていないといざという時に対応できないと思ったからだ。

 タングリスも分かっているようで、踊りの輪の中で揉みくちゃになりながらも――あとで代わる――と以心伝心の目配せ。

「いやあ、クリーチャー相手の戦闘の方が楽かもしれんなあ」

 二十分もすると、ジョッキを二つ持ってタングリスがやってきた。

「みんなタフだ。気は抜けないが、ま、一杯ひっかけてからでもいいだろう」

「そうだな、我々も、ようやくチームになりかけてきたな」

 縁の下の力持ち同士、小さく乾杯。特に言葉を交わすこともないが、これからの旅への覚悟と労いを交わすことができた。

「さ、交代だ」

 ポーチの陰から立ち上がると、相変わらず盛り上がっている踊りの輪。だが、さすがに疲れたのか充電しているのか、柱にもたれかかったり、テーブルに突っ伏している者がチラホラ。

「大丈夫かい?」

 そんな一人の肩に手を置いて……驚いた。

 石化している!?

――メドューサが入り込んでいる!――

――声を立てるな、パニックになる――

 タングリスが二度目の目配せをした。

 

☆ ステータス

 HP:2500 MP:1200 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・35 マップ:4 金の針:20 所持金:500ギル(リポ払い残高80000ギル)

 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)

 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)

 

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

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