大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

ポナの季節・27『みなみからのビックリメール!』

2020-09-07 06:16:05 | 小説6

・27
『みなみからのビックリメール!』
   



 ポナ:みそっかすの英訳 (Person Of No Account )の頭文字をとった新子が自分で付けたあだ名



――ポチとポナの写真が最優秀になったよ!――

 ポナの親友、乃木坂学院の高畑みなみのメールだった。

 ポナがボールを投げ、ポチが元気よく体を捻ってボールを追いかける瞬間を少し俯瞰のアングルで撮った写真が添付されていた。

 ポナは複雑な思いだった……たぶんポチと最後にボール遊びをした時のものだ。

 どうして、みなみがこんな写真を撮れたんだろう……懐かしさというのにはあまりにも近い思い出、みなみに知らせなかった悔い。

 暖かさと苦しさが一度に胸にせきあげてきた……。


「なんで言ってくれなかったのよ!?」
 あくる日の放課後、みなみに呼び出された。みなみの家なので、のっけから容赦がない。
「忘れてた……」
「忘れてたあ!?」
「……わけじゃないんだ。ウイークデイだったし、みなみには気持ちの整理がついてから話そうと思ってた。ごめん」
「気持ちは分かるけど、でもね……」
「あの写メ、ポチと最後にボール遊びしたときの……良く撮れてた、ありがとう」
「最後の……こっち来て」

 みなみは、ポナを仏間に連れて行った。みなみの家は東京では珍しい戦前からの旧家。むろん今風に改装はしてあるけど、基本は昔のままだ。
 仏壇にポチの写メをプリントしたのを飾って、みなみはお線香を焚いた。手を合わせたあと暫く無言になった。

「あの日、久々にお父さんの仕事に付いて車で大川の堤防道を走ってたの。そしたら河川敷でポナとポチが遊んでるのが目に入って、後ろがつかえてたから停められなかったけど、かわりに写メ撮った。それが、これ……なにか神様か仏様が作ってくれたチャンスだったんだよね」
「ありがとう、みなみ。ポチの最後の写真が、こんなにすばらしいものになって、本当に嬉しい……これ、ポチの遺骨で作ったの」

 ポナは、首からペンダントを外してみなみに見せた。

「へー、こんなことができるんだね……ポチの毛に似た色だね」
「うん……毛の色にも似てるけど、ポチの瞳の色と同じ。偶然こんな色になったんだって」
「不思議だね……」
「もう犬は飼わない。ポチは血のつながりはないけど双子の姉弟みたいなもんだったから」
「ハハ、気持ちは分かるけど、血のつながりって言葉が出てくるところが、ポナらしいね」
「あのね……」

 ポナは、もう一つの血縁関係の話をした。

 ポチのことで、気持ちに整理がついていたはずだったが、みなみに話すと改めて涙が溢れてきた。
「そんな……」
 絶句したあとで、みなみはポナを思い切りハグしてくれた。

 今の家族に不満なんかない、ミソッカスも幸せの表現だ。

 我が家、我が家族が一番に決まっている。だけど乗り越えるのには、もう少し時間がかかる。なにかが足りないと思うポナだった。
 



ポナの周辺の人たち

父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長

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かの世界この世界:64『ノルデン鉄橋』

2020-09-07 06:03:06 | 小説5

かの世界この世界:64     

 『ノルデン鉄橋』    

 

 

 ノルデン鉄橋は全長八百メートルのトラス式鉄橋だ。

 

 分かりやすく言うと、四車線になっていて、上流側から単線の鉄道、二車線の車道、一車線分の歩道になっている。

 そのノルデン大鉄橋が目前に迫っている。

 右手にはムヘンブルグ城塞都市。

 一週間前にムヘンブルグの北門を出て、そのまま鉄橋を渡るところをシュタインブルグに行っていた。

 あの時以上に人や車両の動きが盛んだ。軍用車両に民間のトラックなども見えるし、自転車や徒歩で歩道を行く人たちも居る。

 ムヘンは流刑地ではあるが未開の荒れ地ではないようだ。

「北部に限られているようだが、ちょっとした開拓ブームなんだ」

 全開したハッチに寄り掛かりながらタングリスが呟く。短めのボブを川風になびかせて腕組みした姿は宝塚の男役のように景色がいい。けしてマッチョでも大柄でもないのだが、この佇まいの良さは、持って生まれたものと今までの軍歴が尋常なものではないことを物語っている。チャンスがあればケイトも交えて話がしたいが、ま、今少し親しくなってからでないと実のある話はしてくれないだろう。

 ビビ~~~~~

 いかれた玄関ブザーのような音がした。

 橋のたもとの合流点に停車した四号戦車の警笛であると気が付いたのはタングリスの反応だ。

「やあ、また会ったな軍曹」

 それは、一週間前に出会った二号戦車のクルーたちだった。

「あんたらも四号か」

「ああ、あんた曹長に昇進したのか」

 階級章が変わっていた。

「一個だけな。除隊して鍛冶屋でもやるつもりだったんだが、鍛冶屋よりも辺境警備をやれってさ、人使いが荒いぜ」

「こんなところに停車して、なにかの監視任務か?」

「いや、操縦手の交代要員を待ってるんだ」

 開け放った操縦手ハッチに済まなさそうな顔が見えた。

「卑下すんなハンス、お前が移動になれただけでラッキーなんだからな」

 そうだそうだの声があちこちのハッチからする。

「交代要員はまだなんだな」

「ああ、名前も分からん。こんなことまで軍機扱いしなくてもいいのにな」

 ピピピピ……こちらの通信手席に着信音が、受けたブリュンヒルデが何やら受け答えしている。

「その交代要員は、わたしのようです」

 なんとタングニョーストが出てきた。

「軍のやることに無駄は無いようだな。よろしくな、タングニョースト軍曹」

「曹長、あんたの名前は?」

「ルドルフだ、砲手がクリストフ、装填手がデニス、通信手がアデーレ、まあ、おいおい慣れてくれ」

「それはいいが、うちの操縦手は?」

「指示がない、問い合わせてみる」

 ブリュンヒルデがレシーバーを操作する。

「すまんが、先に行く。交代次第出発の命令なんでな」

「ああ、タングニョースト、またな」

 互いに手を振っただけで曹長の四号は行ってしまった。鉄橋を渡らずに川沿いを東に向かった、困難な南部の警備に行くようだ。

 

「信じらんない!」

 

 ブリュンヒルデがレシーバーを投げつけた。

「どうしました?」

「交代要員は無し、そっちで都合を付けろって! それもトール直々の、このブリュンヒルデに命令なんてあり得ない!」

「そうきましたか……」

 ポーカーフェイスで一同を見渡すと、頭を掻きながらタングリスは提案した。

「わたしが操縦します。姫が車長をやってください」

「えー! じゃあ、通信手は?」

「ロキ、お前だ。ポチを助手にしてがんばれ」

「オ、オレ?」

「そうだ、お前もなにかの役にたたなきゃな」

 そう言うと、ジャングルジムの中を移動するように操縦席に移動した。ブリュンヒルデとロキも移動、わたしとケイトはそのままで、四号はイグニッションのスイッチが入った。

 ブリュン! ブリブリブリ!

 ブリュンヒルデの気持ちを代弁するような起動音をさせて四号は八百メートルのノルデン鉄橋を渡り始めた。

 

☆ ステータス

 HP:2500 MP:1200 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・35 マップ:4 金の針:20 所持金:500ギル(リポ払い残高80000ギル)

 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)

 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)

 

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

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