大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

大阪ガールズコレクション:14『都島区 毛馬水門』

2020-09-11 14:00:09 | カントリーロード

大阪ガールズコレクション:14

『都島区 毛馬水門』     毛馬閘門 : 淀川と大川の分岐点 (r271-635)

 

 

 新任にして四年二組の担任になった。

 

 本来なら三年生から受け持って持ち上がるんだけど、前任の香住先生が転勤になってしまい、急きょ四年から受け持つことになった。

 初の担任でオロオロしている間に十一月。

 学期末の成績処理を除けば耐寒ウォーキングだけが大きなイベント。

 実施要項を見て「あれ?」っと思った。

 ゴール地点が『毛馬水門』となっているのだ。

 場所に問題はない、自分が小学生だったころも耐寒行事のゴールはここだった。

 コースの半分以上が淀川の堤防道で、見晴らしはいいし、交通事故の心配もないし、学校からの距離もほどほど。

『毛馬水門』という呼び方に違和感がある。

 学年主任の門田先生に聞いてみると「いらん連想する子ぉがおるからねえ、こんなことでもこじれるとセクハラとか言われるし、まあ『毛馬水門』いうのが正しい表記やしねえ」という返事。

 ま、いいや。

 新卒のペーペーだし、何事も勉強。それ以上の異議はさしはさまず本番を迎えた。

 

「うっわ!」「ええ!?」「おもしろー!」「あはは」「きゃはは」「ハズーーっ!」

 

 予想通り、一時間かけて到着すると、あちこちから驚いたり面白がったりする声が上がる。

 だって、水門の門扉に『毛馬こうもん』と大書してある。

 小学生と言うのは下ネタが大好きだ。

 主に男子が騒いで、女子は眉をひそめながらも面白がっている。

 振り返ると門田先生のクラスでも騒ぎかけたが「セクハラ発言はいけません!」と押さえ込んでいる。

「みんな『こうもん』って、漢字で書けるう!?」

 と言うと、ペチャクリながらも集中する。

「書ける!」「わから~ん」「せんせ、下品!」「どのこうもん?」

「じつは、先生が知ってるだけでも、これだけあるぞ!」

 兼て用意のフリップを掲げる。

 

 校門 黄門 口問 肛門 閘門 後門 坑門  

 

「これ、ぜんぶ『こうもん』なんだぞ」

 へえ!?

 自分たちが話題にして盛り上がった意外にもあるので関心は大きい。

「では『毛馬のこうもん』のこうもんはどれだ!」

 ハイハイハイハイ!

 三回外れが出て四回目に正解。

 正解が出ただけでは終わらない。

「じゃ、ここに書いた『こうもん』の意味分かる人!」

 校門がすぐに分かって、次に黄門、あとは「字の意味から考えて」と言うと、オボロながらも正解が出る。

『前門の虎後門の狼』なんてのも教えてやって、我がクラスは『こうもんブーム』になる。

「せんせ、手すりに掴まって水見てると船に乗ってるみたい」

 女子がロマンチックなことを発見する。

「えらい! 発見したんだね、みんなもやってみ」

 手すりは子どもの目の高さほどもある鉄製で、船に乗っているような雰囲気がある。

 自分が小学生の時にもやって、ちょっとえらい目に遭った。

「う、酔った……」

 ほんの十秒で酔ってしまう。小学生の時から進歩がない。

 子どもたちは平気だ。

 まあ、たまに弱点を見せるのもいいよね。

 真っ青になった私の顔を見て、意外に男子が心配してくれる。

 芝生の上に横になり、見上げた青空は自分が小学生だった頃と同じように青かった。

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ポナの季節・31『サッシーの勝利から』

2020-09-11 06:36:12 | 小説6

・31
『サッシーの勝利から』    



ポナ:みそっかすの英訳 (Person Of No Account )の頭文字をとって新子が自分で付けたあだ名



 AKBの総選挙はチャンスだと思った。

 チャンスは二つだ。
 
 一つは、やっと薄皮が張ったばかりの心の傷を、友だちと言う即効薬で直すこと……ちょっと説明がいる。

 この土日は、ポナが寺沢家の養女であったことが分かってしまった最初の週末。ミスコンのプレゼンで吹っ切れたとは言え、傷は深い。ほんのわずかでも家族と気まずくなるのは嫌だ、怖い。そのためにはAKBの総選挙を友だち呼んで賑やかにやって、精神的に一気に駆け抜けるのがいい。AKBの総選挙なら、人畜無害。上手くいけば、お父さんやお母さんとの距離も取り戻せる。

 もう一つは、バラバラな友だち由紀と奈菜とみなみをくっつけて、より大きくて楽しい友だち集団になれる。今のポナには主観的にも客観的にも友だちのサポートが必要だ。

 それに、うまいことに先週から同居のチイニイが泊りがけでいないことだ。チイニイがいては、みなみの肩がこる。なんといっても同じ学校の先生と生徒だ。

 中継が始まる三十分前には、友だち三人がポナの家に集まった。

「こんにちは、世田女の支倉奈菜です」
「こんばんは、同じく世田女の橋本由紀です」
「どうも、お馴染みのみなみでーす」
 そして、高校生らしく「失礼します」で三人の声が揃い、お父さんもお母さんも笑った。

 最初はポナの部屋のテレビで観るつもりだったが、リビングの大きいテレビで観ていいというお許しが出た。ついでにでっかいピザが三枚ドーンと出てきた。

「二枚買ったら、一枚無料のサービスだから、遠慮しないでね」
 みなみは小学校からの付き合いだから、遠慮はもともと無いが、お母さんの、この一言はみんなの気持ちを楽にした。
「なんだ、母さん。おれ、寿司注文しちゃったよ」
「わ、ラッキー!」
 ということで、ますますリラックスし、自然な形で両親ともども少女たちの輪の中に入ってこられた。
「なに支倉さん、あたしの顔になにかついてる?」
「あ、いいえ、失礼しました」
「ハハ、奈菜ちゃんは、こんなオッサンと一緒になった母さんが珍しいんだよ」
「あ、いえ……」
「先生と生徒がいっしょになるって、どうなんですか?」
 由紀の質問には遠慮が無い。
「もう三十年だからね。今は普通の夫婦だよ」
「いろいろ時めく話はありますけど、まあ、おいおいと」
 古株のみなみがほのめかす。由紀と奈菜が興味津々な目を向ける。もう、これで三人は友だちになれたようだ。

 中継の進行に従って、意外にお父さんが情報に詳しいことが分かった。

「オーシ、佐江ちゃん抜けた!」
 オシメンの宮澤佐江が八位に入ると、お父さんは中腰になってガッツポーズ。
「エー、お父さんて宮澤佐江がオシメンだったんですか!?」
 由紀がたまげる。
「あ、なんてのかな……生徒の目線で世の中見てるのは大事なことだからね」
「フフ、知ってますよCD買って投票してたの」
「それはだな、芝居で言えば虚実皮膜だな。教師というスタンスを保持しながら、限りなく本当のファンのようにだな……」
「正直におっしゃいな。AKBは発足のころからのファンだったって」
「だから、それは母さん……」
 お母さんがプっと吹いて、みんな大笑いになった。ポナは、いい両親だと思った。
「予言しておく、一位はサッシーだ!」
「エー、マユユでしょ」
「世間には浮動票というのがある。案外こういうのが決定するんだ。世の中って、そういうもんだ!」
「だって、お父さん小林よしのりの予想は違うよ」
「あいつの予想は当たらん!」

 結果は、お父さんの予想通りサッシーが一位になった。まぐれか才能か分からなかったが、お父さんが、かなりのAKBファンであることは確定的になった。

 ポナは考えた。

 スケールも、置かれた局面も違うけど、そして一位と二位という差はあるけれど、サッシーと通じるものを自分に感じていた。

 そのあとは、二人ずつでお風呂に入り、夜遅くまでポナの部屋で喋って雑魚寝。
 朝は、さすがにボンヤリしていたが、昼前には街に繰り出してカラオケで騒いだ。

 両親と友だちの距離が縮まった一泊二日ではあった。



ポナの周辺の人たち

父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長

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かの世界この世界:68『ローゼンシュタット・1』

2020-09-11 06:24:58 | 小説5

かの世界この世界:68     

 

『ローゼンシュタット・1』    

 

 

 どっちが早かったのか……

 

 峠に差し掛かったところで「停まれ」と、ブリュンヒルデは命じた。

 同時に四号は停車した。

 

 当たり前なら、車長であるブリュンヒルデが命じて、即座に操縦手であるタングリスがブレーキを踏んだということなんだが、違うのだ。

 タングリスは、自分の判断で停車している。同時にブリュンヒルデも判断して命じている。二人それぞれの判断なのだ。

 十日に近い旅で、その微妙な違いが分かるようになった我々だ。

「え? どうかした?」

 付き合いの浅いロキには分からないようだ。

 

「一瞬、Cアラームが反応したような気がしたんだ」

 

 ブリュンヒルデはCアラームを見つめる。Cアラーム(クリーチャー警報装置)は砲塔の天井にぶら下げてあり、砲手であるわたしの視界にも入っているのだが、アラームの反応には気づかなかったというかアラームは反応していないと思う。装填手のケイトも怪訝な顔をしている。

「タングリスは?」

「いや……ちょっと気配がしたもんでな。気のせいでしょ、進めてよろしいか?」

「ああ、前進しよう」

 ヨッコラショと動き出すと、バラの香りが車内にまで入り込んできた。

 そして、峠が下り坂になった瞬間、バラの花で溢れかえったローゼンシュタットの町が広がってきた。

 荒れ地同然の草原や灌木ばかりの、ゴルフコースで言えばラフやベアグランドのようなところを走ってきたので、お花畑のようなローゼンシュタットの町はため息が出そうなほど新鮮だ。

 

 パパパパーン!

 

 町の入り口に差し掛かると可愛い花火が打ち上げられ、『熱烈歓迎ブリュンヒルデ御一行様!』の懸垂幕が教会の尖塔に掲げられた。

「ようこそ、お立ち寄りくださいました! ローゼンシュタットの町を代表いたしまして、町長のミュンツァーがご挨拶いたします!」

 同時に、町のあちこちから手すきの大人たちや子どもたちが現れて、バラの花びらを撒きながら歓待してくれた。

「い、いやあ……」

 戸惑ってしまった、我々は巡回警備の分遣隊ということになっている。いわば、ただのパトロールだ。

 どこの世界にパトロールを町ぐるみで歓待するところがあるというのだ!?

 ケイトとロキは無邪気に喜んでいるが、我々は当惑するばかりだ。

「承知しております、ですから、お名前の下の敬称は記しておりません」

 ……なるほど、ブリュンヒルデの下には『姫』だの『殿下』だのの敬称は記されていない。

「このようにバラ以外にはなんの取り柄もない町です。なにもございませんが、我が町、我が家と思ってお寛ぎください」

 詮索も野暮なようで、我々は、とりあえずはミュンツァー町長らの歓待を素直に受けることにした。

 

☆ ステータス

 HP:2500 MP:1200 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・35 マップ:4 金の針:20 所持金:500ギル(リポ払い残高80000ギル)

 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)

 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)

 

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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