大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・178『高坂侯爵邸・2・高坂霧子』

2020-09-29 15:05:00 | 小説

魔法少女マヂカ・178

『高坂侯爵邸・2・高坂霧子』語り手:マヂカ    

 

 

 ドス! ドス!

 

 小柄は田中執事長の頬を掠めて廊下の壁に突きたった。

 壁には、すでに幾つも小柄が付きたった痕が付いていて、ノンコは目を丸くして金魚みたいに口をパクパクさせている。

「お嬢様、オイタはなりませんぞ」

「オイタじゃないわ、心の準備が整わないうちにドアを開けるからよ」

「開くのを待っておりましたら日が暮れてしまいます」

「フン……なに、うしろの二人は?」

 霧子お嬢様と目が合ってしまった。

 竹久夢二の美人画を思わせる美少女だけど、挑戦的な瞳と立ち姿と清楚なワンピースがチグハグで、川島芳子(東洋のマタハリと言われた女傑)が華族令嬢に化けそこなったみたいだ。

「お嬢様のご学友をお連れしました」

「そんなもの……!」

 言い切る前に槍が飛んできた!

 

 ハッシ!

 

 田中執事長の前に出ると同時に槍を掴んでやった。

「これは……」

 田中執事長が恐縮している、田中は自分で槍を掴むつもりだったのが、わたしに先を越されて驚いている。

「出過ぎたことをしました」

 と言いながら、肩の力は抜かない。これから面倒を見ることになるお嬢様に舐められてはいけないからね。

「二人とも、わたしの前に……いま、槍を掴んだのが渡辺真智香さま、そちらが野々村典子さま。明日からごいっしょに通学いたします」

「学校になんか行かないから!」

「お二人には、筋向いの蓮華の間を使っていただきます」

「え、住み込みなの!?」

「はい、寝食を共にいたしてもらいます。それに、お二人は西郷侯爵ゆかりの方々でもありますし、粗略にはあつかえません」

「ふーん、わたしの気持ちも無視して、田中って、そんなに偉かったんだ」

「お嬢様の事に関しましては、お父様より、この田中が全権を委任されております。田中が申すことはお父様のご意思と思し召しください」

「ふ、ふーん……偉そうに」

「田中の偉さはお父様より委任されたものでございます、偉そうに見えたとしたら、それは霧子お嬢様の行く末をご心配されるお父様のお気持ちと思われませ」

「田中ッ……」

 こいつ、目に殺意が籠ってる……

「二人とも、ご挨拶を」

 ノンコの背中に手をやって前に出す。

 ――なんでわたし!?――という目をするが無視。

「の、野々村典子……です、よろしくお願いします(^_^;)、えと……ノンコって呼んでください……キャフ!」

 お嬢様と目が合い、ネコみたいな悲鳴を上げてわたしの背中に隠れてしまう。

「渡辺真智香だ、遠慮はしない、覚悟してもらおう」

「……ふん」

 ソッポを向いた瞳に影が出来たような気がしたが、まだ、ツッコミを入れるような局面ではない。大人しく田中執事長の後ろに回る。

「では、これにて。さ、お二人とも……失礼いたしますお嬢様」

 田中執事長に促されて廊下に出る。

 ッウオオオオオオオオオオオオ!

 階段まで戻ると、獣が吠えるような泣き声が霧子の部屋から聞こえてきた。

 

 

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ポナの季節・48『関東大会を目指そう!』

2020-09-29 06:51:50 | 小説6

・48
『関東大会を目指そう!』
     
  

ポナ:みそっかすの英訳 (Person Of No Account )の頭文字をとって新子が自分で付けたあだ名



「やるからには、関東大会を目指そう」

 達孝は、遠足の目的地を挙げる程度の気楽さで言った。

「関東大会ですか!?」
 勘のいい美智は驚き、訳が分かっていないモクとチイはポカンとした。
「関東大会ってのは、関東の代表を決めるコンクールで、そのあとは日本一を決める全国大会しかないんだよ!」
 美智が唾を飛ばしながら解説。
「え、ウッソー!」
 モクとチイは、女子高生の常套句で驚きと感激を現して、顔にかかった唾を拭いた。
「本当は全国大会って言いたいけど、それは来年の夏。オレは、もう定年を過ぎていないからな」
「でも『幕が上がる』じゃ、吉岡先生は全国大会を保証してましたよ」
「自分が居ない時のまで保証するのは無責任だし、顧問の影響力というのは、そこまで大きいものなんだ。オレは無責任なことは言わない。それまでに後継の顧問を探せる保証もないしな(本当は育てると言いたかった)」

 そこまで言ったところで、優奈が大学の放送同好会を連れて視聴覚教室に入ってきた。

「ウワー、テレビ局!?」

 美智たちが感動するくらい、機材は本格的だった。
 大学の放送部だと言うと、ちょっとガックリし『ジョーナンデス!』というネット番組を持っているというと、少し株が上がった。
「ウィークリーだけど、アクセス一万ちょっとはある。関東大会までドキュメント撮らせてもらうから」
 優奈が言うと、美智、モク、チイは再び歓声を上げた。

「うちの演劇部もブログをつくろう。タイトルは『ミモチのドラマブログ』だ」
「あ、あたしたちの頭文字ですね!」
「ベースは、このジョーナンデスの人たちが立ち上げてくれる。あとは、おまえらが毎日更新するんだ。じゃ、優奈、進行台本見せてやってくれ」
「先生、この人のこと呼び捨てにしてるけど、教え子なんですか?」
「いや、オレの娘だ」
「え、ウッソー!」
「あのな、今月中でいいから、別の驚き方できるようにしとけ。おまえら表現力なさすぎ」
「でも、親子にしちゃ、似てませんね」
 モクが遠慮なく言う。
「ああ、オレとは血の繋がりないからな」
「ええー!?」

 ここで、ジョ-ナンデスのみんなが笑った。

「今、驚いた後、瞬間でいろいろ想像したろ。その驚きと想像力が演劇の基本なんだ。この五分で、おまえらは七回ほど驚いた。美智は関東大会のことは知ってたから感動のレベルが違うけどな。見ろ、ジョ-ナンデスのみんなも笑ってるだろ。おまえらの驚きが新鮮だからだ。さあ、舞台に上がれ『とことん自己紹介』をやるぞ」
 三人は、いそいそ舞台に上がって自己紹介したが、通り一遍でまるで面白くない。
「おまえたちは、友だちぶってるけど、その程度だ。もっとアピールと、相手への疑問を持て。感動は自然にやってくる。チイから話し始めてみろ。まず、なんでチイなんてニックネームなんだ?」
「えと、苗字が地井なのと、背がチッコイから。でも背の高さはAKBのたかみなと同じです!」
「それでチイって言われても平気なんだ」
「そうだよ、センターとれなくても総監督はやれるぞ!」

 チイの精一杯の背伸びに、みんなが笑った。それから、互いの肉体的やらプライベートの告白やら暴露大会になった。美智が出べそなことや、モクが三日目の便秘であることから、スキンケアの話へ、四日を超えると切れ痔になりやすいこと「あたしは鉄の肛門してんだ!」などと、日常が丸出しになって、とてもいい絵が撮れたとジョーナンデスの一同は喜んだ。

 三人は自己解放と、自然なコミニケーションの有り方を実感した。

「最後に、あたしから。あたしはお父さんとは血の繋がりはないけど、お母さんとは血のつながりがあるの。さ、ここから考えられる寺沢家の問題はなんでしょう?」
 三人とも興味津々になった。

 あいつら、思ったより初心で良い感性をしていると感心した達孝であった。

 

ポナの周辺の人たち

父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長
浜崎安祐美 世田谷女学院に住み着いている幽霊
吉岡先生  美術の常勤講師、演劇部をしたくて仕方がない。
佐伯美智  父の演劇部の部長
蟹江大輔  ポナを好きな修学院高校の生徒

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かの世界この世界:86『エスナル温泉!?』

2020-09-29 06:38:51 | 小説5

かの世界この世界:86

『エスナル温泉!?』    

 

 

 三十秒で乾いてしまった。

 

 ほら、町長の重しが取れた反動で、着いたばかりのエスナルの泉に飛び込んでしまった。

 とっさのことに黒魔法を使うことも出来ずに濡れネズミになって岸に上がった。

 さすがに、ガキンチョのロキも、箸が転んでも笑う年頃のケイトも気の毒そうな顔をしている。タングリスは「申し訳ありません!」とタオル代わりに上着を脱いでわたしを拭こうとし、テルは乾燥魔法がないかとウィンドウを開くし、ポチは頭上でぐるぐる飛び回って、ささやかな風圧で乾かそうとしてくれた。

 その下僕たちのアクティビティーとは関係なく、クシャミ一つする間もなく乾いてしまったのだ。

「まるで、アルコールが揮発していくみたいだ!」

 アルコールの揮発なら気化熱を奪われ寒くなるのだが、それもない。いや、少しはある、石化した町長をボルガの船曳みたいに引っ張ってきて汗みずくだったのが、すっかり爽やかになってしまっている。

「これは乾燥ではなく、泉のエスナの効果なのですよ!」

 タングリスが閃くと同時に胸を張る。

「すまん、もう上着を着てくれ」

 上着を脱いで胸を張ると、タングリスの形のいいバストが強調されて面白くない。

「じゃ、わたしたちも飛び込もう!」

「そうだ、汗びちゃだしね!」

 ロキとケイトが思いつくと同時に泉に飛び込んで他の者も続く。

 なんだか楽しそうなので、わたしももう一度浸かってみる。

 あ~あ~極楽極楽~🎵 

 温泉状態になってしまった。じっさい、泉の周辺は形のいい岩や、盆栽のように枝ぶりのいい木々があって、湯気さへ立ち上っていれば完璧な温泉の風情なのだ。

 

 けして町長の事を忘れていたわけではない。

 

 しかし、あまりの心地よさに、もう少し……もう少し後でもいいだろうと思ってしまう。

 ……みんな……町長さんを……町長さんを……直してあげなきゃ……

 ポチが耳元で囁いているのに気付いたときは、日が傾きかけていた。

「みんな、さっさと上がって! 町長の石化を解くぞ!」

 真っ先にタングリスが上がって、みんなを促した。

 泉の効果だろうか、誰言うともなく町長を担ぎ上げて泉に浸けた。

 石化していた時間が長かったせいか、解けだすのに一分近くかかった。

「よし、もう大丈夫だ。我々は先に上がろう。浸かり過ぎていると上がれなくなってしまうぞ」

 ロキは少しムズがったが、ポチに叱られながら上がって、みんなで町長の回復を待った。

 

「おや……なんで服を着たまま風呂に入っているんです?」

 

 石化の解けた町長は、そう呟くとスルスルと服を脱ぎ始めた。

「町長、脱ぐな、ここは温泉じゃない! 聞こえてない……ロキ、町長を止めてこい!」

 ロキが飛び込んで、背中を蹴り上げて、やっと町長は正気に返った。

「あ、あ、みなさん!?」

 町長は前を隠しながら、やっと上がってきた……。

 

 

☆ ステータス

 HP:6000 MP:3000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・55 マップ:6 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高35000ギル)

 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6の人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

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