大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

ポナの季節・34『Person Of No Account ③』

2020-09-14 06:08:34 | 小説6

・34
『Person Of No Account ③』
     


ポナ:みそっかすの英訳 (Person Of No Account )の頭文字をとった新子が自分で付けたあだ名


 

 出たあああああああああああああ!!

 三人はポナを先頭に、狭い裏口では一ムギュっと詰まって、次の瞬間はじき出されたように旧講堂を飛び出し、グラウンドを横切り、中庭をつっきり、ピロティーを突き抜け、正門まで逃げてしまった。

「……で、出たって……なにが?」
 由紀が意外なことを聞いてきた。
「せ、生徒よ、女生徒。お下げの後姿で、前の席に座ってたでしょうが!?」
「あ、あたしは見えなかった」
「じゃ、なんで叫んで逃げ出したのよさ……?」
「だって……」
「ポナが逃げ出すんだもん!」
「叫んだのもポナが最初だし」
 奈菜が口を尖らせる。

「じゃ、見えたのは、あたしだけ?」
 奈菜と由紀が顔を見合わせる。
「……のようね」
「じゃ、なんか幻覚でも見えたんだろうね……だよね? だよね?」
 同意を求めるような眼差しでポナは、二人の親友を上目づかいに見た。
「いや、あれはポナ……ほんとに見えたって感じだったよ」
「あ、それに、こんなこと言っちゃなんだけど……ポナの靴片方無いよ」
「あ、裏口で押し合い圧し合いしてる時に……」
「脱げたんだろうね」

 由紀が他人事のように言い。事故の時のテレビインタビューを受けた目撃者ように奈菜がコックリした。

 ポナのすがり付くような眼差しに、旧講堂の裏口までは付き合うが、中にはポナ一人が入ることで話がついた。
 逃げる時は、まるでリニアモーターカーのようだったが、再び旧講堂に戻る時は、とろくさい各駅停車のようだった。

「失礼しまーす……」
 裏口から五十メートルは離れている由紀と奈菜をしり目に、ポナは裏口を開けた。

 予想に反して靴は裏口のあたりにはなかった。目が慣れると、舞台の真ん中、胸の高さあたりで靴がプラプラしているのが分かった。

 やがて、靴を持っている手、腕、体、そしてお下げの顔が明らかになった。

「あたし、浜崎安祐美。よろしくね!」

 お下げ髪は、弾むような明るさでポナに迫ってきた。



ポナの周辺の人たち

父     寺沢達孝(59歳)   定年間近の高校教師
母     寺沢豊子(49歳)   父の元教え子。五人の子どもを、しっかり育てた、しっかり母さん
長男    寺沢達幸(30歳)   海上自衛隊 一等海尉
次男    寺沢孝史(28歳)   元警察官、今は胡散臭い商社員だったが、乃木坂の講師になる。
長女    寺沢優奈(26歳)   横浜中央署の女性警官
次女    寺沢優里(19歳)   城南大学社会学部二年生。身長・3サイズがポナといっしょ
三女    寺沢新子(15歳)   世田谷女学院一年生。一人歳の離れたミソッカス。自称ポナ(Person Of No Account )
ポチ    寺沢家の飼い犬、ポナと同い年。死んでペンダントになった。

高畑みなみ ポナの小学校からの親友(乃木坂学院高校)
支倉奈菜  ポナが世田谷女学院に入ってからの友だち。良くも悪くも一人っ子
橋本由紀  ポナのクラスメート、元気な生徒会副会長

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かの世界この世界:71『ローゼンシュタット・4』

2020-09-14 06:00:25 | 小説5

かの世界この世界:71     

 『ローゼンシュタット・4』   

 

 

 月は人を化かすという。

 タングリスが迎賓館に戻ってからも月を見上げていたせいだと思った。

 

「く、来るなああああ!」

 

 庭とホールを隔てるドアに手を掛けると、タングリスの慌てた声がした。

「どうした!?」

 緊急事態だ!

 腰の剣に手を伸ばすというデフォルトの行動をとりかけたが、戦車乗りのコスに剣は付いていない。

 代わりにモーゼルを引き抜くと傍らの窓の隅っこから中を覗いた。

 着飾った町の幹部たちが見えた……ような気がした。

 同じところから覗いていては気取られるので、ほんのコンマ二秒ほどだ。

 場所を変えて二度三度……人数は八名か……ミュンツァー町長、ゼイオン司祭、他にレセプションで紹介された幹部の男たちが四名。それに、こちらに背を向けているスタイルのいいドレス姿の二人の女性。

 たった今、声がしたタングリスは?

 うかつに見てしまったので、ゼイオン司祭と目がってしまった!

 ゼイオン司祭が組んだままの手をひらりとそよがせた。

 

 カシャリ……掛け金が外れて窓が全開になった!

 

「どうぞ、テルキ殿もお入りになって」

 司祭にニッコリ言われ、オズオズと窓枠を跨ぐ……そう広くもないホールなので、背を向けた女性の直ぐ横に立ってしまう。

「み、見るな……」

 と言われてしまうと見てしまう。

 数秒かかった。横に立っているのは、髪も整え、美しくドレスアップした……

「タ、タングリス!?」

 ホールが明るい笑い声に満ちた。

 タングリスが女の子なのは、ムヘンの流刑地で出会った時から分かっていたが、いつも軍服姿だったので意識しなかった。

 なかなか、どうして……同性のわたしから見ても、震えがきそうな美少女なのだ。

「お、おまえ、こんなに可愛かったのか……」

「み、見るなと言ったろおが!」

「いやあ、明日の降臨祭にはドレスアップしていただかなくてはなりませんので、ちょっと試着していただいておるのです」

 ミュンツァー町長が嬉しそうに言う。

「似合ってる……恥ずかしがるな。ほんとはまんざらでもないんだろ。こうやって自分で着たんだし」

 そう、自分から進んで着なければ、こんなバッチリな着こなしにはならない。

「ち、ちが……呼ばれて、ホールに入ったら、瞬間で、こうなったんだ!」

「え?」

 ゼイオン司祭がニヤニヤ笑っている。どうやら、白魔法で有無を言わせず着替えさせられたようだ。

「テル! わたしのことも見ろ!」

 初めて気づいた!

 タングリスの隣の赤いドレスは、自慢げに鼻の穴を膨らませてさえいなけてば、そして大口さえ開いていなければタングリスの倍ほどもキュートなブリュンヒルデであった。

「すごいぞ、まるでバラの妖精だ!」

「それが気に入らぬ。我は真正のナイトメア、漆黒の堕天使の衣こそ相応しいのだぞ!」

 そう言うと、ここのところ小康状態であった中二病全開の顔を半分隠すポーズをとる、まるで五更瑠璃、小鳥遊六花!

 

「やっと、捕まえてきた!」

 

 騒がしく入ってきたのは、わが相棒のケイト。ケイトに腕を掴まれてジタバタしているのはロキだ。

 二人とも、立派に王子・王女の出で立ちで、空中をプカプカ浮いているポチまでもがドレスアップしている。

「さあ、あとは慣れていただくだけです! さあ、次は……」

 一同の目が集まる。

「え、え? わたし!?」

 

 わたしについては省略……。

☆ ステータス

 HP:2500 MP:1200 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・35 マップ:4 金の針:20 所持金:500ギル(リポ払い残高80000ギル)

 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)

 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)

 

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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