あのコルトを狙え

TOKYO2020 子供たちに負債を(笑)

(ハイヤーで往く、熱海ニューフジヤホテル 14)

2011-03-25 20:44:17 | 熱海

目が覚めると誰もいなかった。

敷いてあった布団で軽く眠るつもりだったのだが運転や緊張で疲れていたようだ。

テーブルの上にメモ書きが残してあった。

「ちょっと遊んできます。疲れているようなので起こさずに行きます」

隣の502号室をノックするが誰もいない。

地下のボーリング場にでも行ったのかと思い探してみることにした。

自動エレベーターで地下二階へ降りる。

8レーンほどの小さなボーリング場に姿はなかった。

ゲームコーナーを覗くとスロットカーに興じる集団があったがそこにもいない。

お茶でもしているのか?と一階のハイランドラウンジも探してみたがここにもいない。

自分だけ置いてけぼりをくったような気持ちに腹が立ってくる。

 そんな時

玄関を振り返ると水色の小さな車が入ってきた所だった。

ホンダのスポーツ600だ!

玄関を出るとドアマンが「そのまま駐車場に降りて下さい」と運転手に話している。

仕事柄ナンバーを見てしまうクセは抜けない。

「わ」ナンバーなのでドライブクラブのだな、と思って眺めていた。

「レンタカーご利用ですか?」とドアマンに声を掛けられた。

 いや、人を探しているんだけど・・・連れがみんなどこかへ行ってしまいまして。

そう言いながら通りを見ると雨が降る前なのか薄暗くなっていた。

昼間に靄がかかっているような不思議な雰囲気を醸し出していた。

  私もお兄さんと同じ仕事をしているんですよ

どこのホテルですか?と問われて職場名を伝えると知らないようでした。

そのドアマンと話しをしていると先ほどのスポーツ600の話しとなった。

ニューフジヤにはホンダレンタカーの営業所があるのだそうな。

 私は車で来ているので用もないな、と言うと

何にお乗りですか?三菱コルト?で今日はセドリック?お堅い車ですね(笑

お時間があるのならオープンカーでドライブされたらいかがですか?スカっとしますよ!

そう言われてもこの天気じゃな~・・・・

チラシを見せてくれたのだが

 

6時間も乗らないし、と言いながらも「乗ってみたくなった」

でもあまり時間もないので、と答えるとそのドアマンは

 じゃぁ、私が交渉してみましょう

と受付カウンターに取り合ってくれた。

「1時間?」怪訝な顔をしているレンタカースタッフとを遠くから眺めていたが

うまく交渉してくれたようだ。

手続きを済ませ受付嬢とドアマンの○黒さんの三人で地下へ降りると三台のSがあった。
水色のS600が私が借りる車のようだ。

先ほど見掛けた車なのでエンジンも温まっている。

街中で見かけると小さいなと思っていたが近くで見ると改めて小さく見える。
もっともこの小ささが良いのだ。

着座しレンタカーの受付嬢から簡単な説明を受けた後に恐る恐るアクセルを煽ってみる。
一緒に来てくれたドアマンのO黒さんが笑いながら
「この車はもっと回しても大丈夫ですよ」
と言ってくれたがレンタカーの係員は渋い顔をしたのを見逃さなかった。

コルトのハンドルは細いがこの車は更に細いようだ。
シフトノブの小ささに驚きを感じる。
「じゃあ、お借りします」
と声を掛け発進しようとフロアシフトのギアをローに入れる。
いきなりエンスト。
普通のファミリーセダンのOHVと違いスポーツカーDOHCとは違う。
私はコルトの場合低回転でクラッチを繋ぐがこの車はある程度高回転から繋ぐようだ。
2人しか乗れない車体といい
さすがにスポーツカー
実用車ではないという事か
レンタカーとはいえ人様の車をいきなり高回転で、という状況を受け入れられずにいたがなんとか発進出来た。
会釈して地下のスロープを左に曲がり糸川沿いに出る。
外は相変わらず霞んでいる。

 
恥ずかしながら本町通りに出る所でまたエンスト。

熱海銀座を右折し海岸通りに出る。

右折せず直進すれば福島屋旅館だが今回の宿をニューフジヤにしてしまった事に後ろめたさを感じ直進。
サイドブレーキもシフトノブの位置も違う車に悪戦苦闘。
海岸通りを左折する。
二代目お宮の松が植えられている海岸通りにハンドルを切った。
「スポーツカーで独り海岸通りを流す」

普段と違う視界や運転感覚が実に楽しい♪

海岸通り左手につるや 熱海グランドホテル等が並ぶその前には
ちょうど観光バスが並び客を降ろしていた。
関西のバス会社のバスからゾロゾロとお客がホテルに吸い込まれて行く。
どこかの社員旅行だろう。
大ホテルには館内にバーや遊戯施設があり夜になると鍵を掛けられて商店街でお金を落とす事は無いと聞く。

(昭和41年4月5日 熱海新聞)


霧雨となり慌てて臨海ホテルの手前で停車し説明書を開き幌を出そうとした。

しかしすぐに止んでしまい幌を出さずに済んだ。

ふと道路脇の電柱を見ると

「熱海パークウエイ レストラン明治 オープン」と看板が立て掛けてある。

 

(熱海サンデータイムス 昭和42年7月)

そこに行ってみることにした。

この車、発進時にお尻が撥ねるような感覚はなんとかならないかな? 

 

昭和40年3月24日 熱海新聞より

つづく

 

コメント (2)
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