鋳型ー鋳物を鋳造するのに用いる型、決まった一つの型。
9つのタイプを紹介している。人を想起させるものもあるが、単に外装であって、雄という決定的な要素はない。
これらは鋳型から鋳造されたものにさえ見えるが、内部には《雄》である事由が隠されてるのだろうか。
笑止、雄を決定づける要素は外観には表れにくい。むしろ隠蔽されているのではないか。
鋳型は同一な形態をあまた製造する器具である。
大量生産、世界の動物の半分は雄であり、雌である。しかし、動物は無機物質ではなく有機生命体であれば、鋳型には収まらない。
この不協和音ともいうべき混沌の提示。鑑賞者は作家の意図に寄り添う努力をするが、しごく冷たく跳ね返されてしまう。
作品との距離に焦燥感さえ覚えるが、『雄とは何であったか』と、逆に問われているのではないか。
これら9つの図版は並べて倒立が困難であるにもかかわらず、あたかも立っているように提示されている。存在そのものが絵空事であり真意は隠されている。
《雄》は確かに明確な相違であるが、外観から決定づけられるものではなく、本来秘められるべきものであると。
写真は『DUCHAMP』より www.taschen.com