『チョコレート粉砕器』
チョコレート粉砕器を模したものであるが全く異なる意図を持つものである。
目的である粉砕を果たせない奇妙な図式であり、要の心棒は中心に位置していない。回転すべきローラの傾きも意味がない。ローラーを乗せた台も猫足で貧弱である。不条理である前にこの対象物は現実には存在できない。
なぜ、このような負の産物を表示したのだろう。あり得ない設計図は無というより負の領域にある。
しかし、現前として描き得た『チョコレート粉砕器』は意味の剥奪である。動く意味をもたず、又動く機能も備えていない。見せかけの異物、嘘、非生産性…存在すること自体、哀しいまでの虚無感があるなか不思議な反論が見え隠れする。
壊れているのでなく、動かそうとすれば崩壊は目に見えている不合理。じっとその不合理に息をつめて耐えているが、やがて無為に帰す。
いかにもという風袋、見えている物が促す正(現実)の領域。しかし、浮いているのか落ちていくのか不明な対象物の在り様を眩暈を感じながら凝視している。
写真は『DUCHAMP』より www.taschen.com