どうしようもない曇天である。晴れることのない空、遠く霞む地平線、高く張り巡らせていると思い込んでいるバリア・・・風はなくどんよりとした空気のまま時は止まったように見える。
高く、誰からも観察をされないほどに高くから降ろしたカーテン。しかし、タッセルが掛けられた左右のカーテンは、それぞれランダムに置かれている。つまり、完全に閉鎖されているわけではなく、開放の隙間がある。
《見る》ということは《見られること》でもある。しかし、あえて見せようとはしない。世間に出て行くことは拒みたい、しかし、世間には興味があってカーテンを完全に閉じることもまた出来ないでいる。
人間嫌いたちの本質を衝いた作品である。
他者に対する警戒心、関わりに対する猜疑心…遮蔽を暗示するカーテンの微妙な使用。
カーテンは雄々しく直立している。立つはずのないカーテンが質を変換させて硬直している。つまりは虚勢である。
人間嫌いだとは公言できない、しかし内実はこのように物寂しく陰鬱である。人間嫌いたち・・・わたし一人の感慨ではないはずだと。
(写真は国立新美術館『マグリット』展/図録より)
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