続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

🈞マグリット『恋人たちの散歩道』

2018-07-17 06:23:12 | 美術ノート

   『恋人たちの散歩道』

 道を描く場合ずっと続いている感じ・・・画面のどこかに消失点を置くのが通常ではないか。
 この画に於いて向かうべき前方は、集合住宅の上部(あるいは家々の上方)で塞がれており空は漆黒の闇である。
 高い空は暗黒で光も見えず、町の家々はカーテンで閉じられ閉鎖的であり、まるで活気がない。深夜の眠りだろうか…。

 星も月明りもない、道標のない空間。しかし、真正面に二つのフレームがあり、その中には明るい青空と白い雲(自然)が描かれている。見上げている位置ではなく真正面であるというのは、恋人たちが巨人であるか空中を浮遊している、ということである。
 二つのフレームには大きさに差異があるのは男女の示唆かもしれない。共に理想としての(あるがままの自然)を抱ている。
 立派に構築された環境、しかし閉塞の翳りはないだろうか・・・。

 この社会を超えていく、乗り越えていくための示唆/暗示・・・前に立ちはだかる障壁を超えて行け!飛躍/飛翔せよ!
 抗議なき沈黙、一見平和に見える社会に《若き恋人たちよ、風穴を開けよ、明るい未来を描け》とマグリットは声援を送っている。
 静かな沈思の声援である。


(写真は新国立美術館『マグリット』展/図録より)


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