Ⅱ-1-6 所有・雰囲気・振動ーSLITⅠ
銅板に青い線描、地平線らしきものがあり、それを基準に見ると道と林を感じるが、林(二本突き出た線描)と道(地平線に沿って突き出た線描)は《鳥・飛翔》のようにも見える。
物を見るとは、具体性を捜すことに他ならない。この手掛かりの二重性は空気を動かす。AからBへの変化は風(振動)を起こす雰囲気があり、鑑賞者はその所有を余儀なくされる。
単なる銅板にすぎない。しかし緑色の線描が立ち上がることで意味を生じてしまう。この微妙さ、この原始性、データの集約からデータを引き出す本能との関係性である。
作家はその意図を言明しないが、言明を可能にするものでないという矛盾を孕んでいる。
この揺らぎの錯視が「所有・雰囲気・振動」の所以である。
写真は若林奮『飛葉と振動』展より 神奈川県立美術館
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