
『予期せぬ答え』
不定形な形にくり抜かれたドアが描かれている。手前の空間は光が差し、ドアの向こうは光がなく暗い。ここに(予期せぬ答え)があるという。
問いはあったのだろうか。答えとは、問いに呼応するものであるはずではないか。
問いに対して見せた答えがこの作中にあり、それが予期しない意外な答えであるという。
問いが存在しない場合、答えというものは出せるのだろうか。
ドアとは空間を仕切るものである。ドアの向こうは見えない、故に知ることはできない。しかし、無理に開けた不定形な開口部から覗くあちら側は漆黒の闇である。
「ドアの向こうには」という問いを仮定してみると、「期待に反して何も無い」という答えが導かれる。逆に漆黒の闇の方から覗けば「現代社会」が垣間見えるかもしれない。
このドアはどういう遮断なのだろうか、隔絶された時間の暗喩にまで拡大解釈すると、《存在と無》の仕切りということになる。
不定形な開口部はドアという通念から人の出入りを想像される大きさであり、二つの空間を行き来する介在は人間を想定している。
存在と無、どちらに問いを立てても、予想不可の意外性は成立する。
ドアの仕切り、くり抜いた不定形の開口部は、過去と現在あるいは現在と未来かもしれない。
『予期せぬ答え』は、鑑賞者の胸の内を問うている。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)
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