双頭の人は画面の前を向き、窓から劇場をのぞく少女は背中を見せている。この桟敷席は途方もなく続く広がりがあるのではないか。いわば、来世、冥府の広がりであり、桟敷席は現世と結ぶ接点、隔てると言った方がいいかもしれない。
少女の髪の毛は腰まで伸びている。時間、ずっと長い時間現世(劇場)を見つめている、現世への執着に思える。
一方、双頭の人物は男女の境を消失していく様ではないか。人間としての姿かたちを変形させていく時間の流れ…ここは相当に長い時間がゆっくり流れている。
敢えて一つの案をいうならば、少女はマグリットの母であり、双頭の人物は彼女の父母(先祖)、現世に未練を残す少女は先に逝った父母に見守られているという図ではないか。天国へ行った母を一人にさせないマグリットの心情のような気がしてならない。
そして常に母(少女)に見守られている自分であると。母は女であってはならず神聖なる少女のままの守り神であってほしいというマグリットの願いだと憶う。
写真は『マグリット』展・図録より
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