学校が教えてくれない経済学・・・江嵜企画代表
NY為替市場で10月21日、ドル安が進み、1ドル=107円42銭
で取引された。一時1ドル=110円台でうろうろしていた。
背景を探って見たい。
日本では円相場がドルに対して110円、109円、108円、107円と
進むと円高と呼ぶが、米国ではドルが機軸通貨だから、当たり前の
話であるが、ドル以外の通貨に対して上がればドル高、下がれば
ドル安と呼んでいる。
世界の為替市場では、1日1.3兆ドル(1ドル=110円換算で
140兆円)近いお金がやり取りされているといわれる。
実際の貿易量この100分の1にもみたないだろうからいかに
投機資金が介入して思惑に左右され易い体質をそもそも
持っているかがわかる。
ドルが将来値上がりすると為替ディーラーが思えばドルを買う。
安くなると思えばドルを売る。買えば上がる。売れば下がる。
これば自然の摂理である。誰も値下がりがわかっていて
買うバカなお人はいないからだ。
最近ドルが値下がりしているのは目立たないがドル資産離れを
起こしているためである。ドルを持っているより、他の通貨を持って
いたほうが値上がりを期待できる。あの天下の商売人の中国が
ユーロ資産を着々と増やしているらしい。単純明快である。
昨日のNY為替市場では、対円だけでなく、対ユーロでも、
対スイスフランでもドルの値下がりが進んだ。人間の心理は不思議な
もので値下がりがはじまるとどこまでもドルが下がりつづけると
思うが、為替専門家は、対円では、1ドル=110円から105円、
対ユーロでは、1ユーロ=1.22ドルから1.32ドルの範囲
〔レンジ〕で動くと、どちらかといえばドル安の見方だが、
一体に冷静に見ている。
日本では銀行や郵便局にお金を預けておいても
利子がつかない。だから外国為替でもどうかとすすめる人が
結構多い。ところが為替市場に手をだす暇があれば、
庭のあるひとは、庭木の手入れでもしておる方が
よっぽど気が利いている。相場の世界は気まぐれだ。
庭木は裏切らない。
為替は、売り買いダブルで手数料はとられるわ、
締めて見たら1ドルでせいぜい5円から10円動いて
いたにすぎないというケースがほとんどである。
有り余るお金があって金の使い道に困っている人の
時間つぶしに最適なゲームと心得ていた方が無難であろう。
昨日のドル安は、為替ディーラーは、米債券相場の
値下がり、原油高騰、米国の巨額の経常赤字を嫌気して
売られたと説明している。この説明自体が実に曲者である。
都合よくコロコロ変わる。油断もスキもならない。
円がドルに対して高くなるときまって日銀によるドル買い
円売り介入は始まると見てきたようなうわさを流す。
日本政府は誰の依頼があったのか知らないが昨年
1ケ月に集中して30兆円以上の円売りドル買い介入を
敢行した。
原油価格が1バレル当たり55ドルと暴騰している。1ドル=300円
時代なら日本経済は壊滅していた。いま1ドル=110円近辺だから
日本が支払う原油代金は第1次オイルショックの時に比べて1/3に
第2次ショックのときの1/2に納まっている。
円が高くなったお陰である。
自国通貨が高くなって慌てるのは日本だけである。もし反対に
自国通貨〔日本円〕がどんどん安くなり、1ドル=130円、150円と
安くなったらどう説明をつけるのであろうか。ただでさえ高い野菜は
さらに暴騰するだろう。日本は輸入大国だから円安阻止のために
手の平をかえして介入するのであろうか。
石油で飯を食っている産油国はドルの値打ちがなくなる(ドル安)
ことを心底恐れている。原油高騰の犯人はドル安である。
ドルの目減りを少しでも食いとめようとして原油相場〔ドル建て価格)
を彼らは必死になって上げにかかった形跡が大いに有る。
カブリツキで夢中になってショーを見ていると、原油デイ-ラーも
為替ディーラーも劇場の出口に向けて密かに移動しているかもしれない。
ブッシュさんが勝つにしろケリーさんが勝つにしろ、
米国という国は大統領選挙となるとなんでもありになる。
選挙が終わればがらりと変わる。中国の動静にも微妙な変化が出てきた。
イラク戦争もいつまた鎌首をもたげてくるかもしれない。
為替相場は生き物である。必要以上に心配することは健康にも
良くないが、不確定要因満載の船にお互い乗リ合わせていると
いうことだけは頭の片隅にチラッと置いておいた方が
安心かもしれない。(了)