画・江嵜 健一郎
今年もチユーリップが元気に咲きました。例年より気持ち数日早いような気がする。
先日スケッチをしていたらフエンスの外から男の子二人が熱心に中の様子を覗いていた。
男の子二人で一人は小学校へ上がったばかりだろうか。もう一人は5歳くらいかもしれない。
「中に入りますか」と男の子に声をかけた。「入る!!」と一声上げて飛び込んで来た。お母さんも
宜しければどうぞと入ってもらった。小さい子の方がチユーリップの頭を押さえようと
したので「チユーリップさんがびっくりするから見ててあげてね」と話した。
帰りに実がまだついている南天の枝を切って二人の子供に渡した。何か大変なお土産を
もらったような顔をしてスキップしながらその場を離れた。
後日、偶然だが更地に着いて草取りをしていたら先の子供二人が「アッ、また、入りたい」と
声をかけてきた。「急いでるからきょうはダメよ」と母親。子供二人は恨めしそうにその場を
離れた。
筆者はせいぜい週1ていどしか更地に行かない。彼らは毎日花のそばを通り過ぎているに
違いない。子供の時のちょっとした出来事でも鮮明によく覚えている。見知らぬ人との出会いとはいえ
かれらが大きくなったときにチユーリップが咲く季節になると思い出すに違いない。(了)