登りきると辺りは広く開放的に広がった草原のようなところで、強風が吹い
ていた。右手遥か山の上に白亜の竜飛崎灯台が見え、ここからその灯台に
向けて、「階段村道」が続いていたが、もうそこを行く元気は残っていない。
有名な観光地だから観光客も多かろうと思っていたが、意外にも人影が
なく、広い駐車場には車がたった一台だけ停まっていた。
その駐車場脇の建物の横に軽トラを停めて行商をする、テレビなどでお
馴染みになった名物おばさんが、郵便局の制服を着た男性と暇そうに話し
こんでいる。
そこを海に向かって少し歩いて行くと、「風の岬 龍飛」と書かれた展望台
のようなところに、良く知られた歌謡曲の石碑が建っている。
昭和52年に発売され、レコード大賞歌唱賞を受賞する大ヒット曲となった
石川さゆりの「津軽海峡冬景色」の碑だ。
波をイメージしているのであろうか、丸く削られ重なった赤い石の中に建つ
三枚の石に、二番の歌詞が刻まれている。
その前にある赤い大きなボタンを押すと、その歌が少し調子の外れた割れたよ
うな音で大きく響き渡る。
「ごらん あれが 竜飛岬 北のはずれと 見知らぬ 人が 指をさす~♪♪」
この風向きなら、駐車場で話し込むあの二人に聞かれることもなさそうな
ので、津軽海峡を見下ろしながら大きな声で歌ってみる。本物の歌手に合わ
せて歌うのは気持ちが良い。余勢を駆って一番も歌いながら、車の通らない
道を今晩の宿に向かい歩き始めた。
「上野発の 夜行列車 降りた時から 青森駅は~♪♪」(続)
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