
この日浅草駅に入線してきた列車は、日光東照宮の式年大祭を記念したもので、
金色に塗り込められ車体に、黒と朱色のラインが引かれた荘厳な雰囲気の特別塗
装が施されていた。
東京と日光や鬼怒川温泉を結ぶ「スペーシア」は、東武鉄道が誇る特急列車だ。

ここ浅草駅はホームの構造上、車体乗車口との間に隙間が広くなる場所がある。
そんなホームに板を持った駅員が何人もいたので、初めは何をするのか気になっ
ていたのだが、列車が到着して納得した。隙間を埋める渡し板で、これは初めて見
る光景で、これもまた旅の思い出としては一興だ。

車体の側面には「SPACIA」や「日光詣」のロゴが掲示されている。
列車は全席指定の6両編成で、1号車から5号車までが普通車、6号車はJRで言う
グリーン車扱いで4人用の個室が6部屋設けられたコンパートメントになっている。
3号車にはビュッフェや自動販売機もある。
初めて乗る列車はつい車内探検をしてみたくなる。

座席は片側二人掛けの回転式リクライニングシートが採用されていて、前席との
間隔が心持広く取られているようで、座ってみると圧迫感はなく、シートの座り心地
も悪くない。
窓側に折り畳み式のテーブルが有り、足元にはフットレストも用意されている。

「当列車の座席指定券は完売です」との放送を後に、特急「きぬ」は発車したが、
座席は二割ほどの空席が有る。この先の停車駅で更に乗り込んでくるのであろう。
沿線の日光や鬼怒川辺りで紅葉が見ごろを迎えているからか、車内には旅姿の
カップルや家族連れ、数人のグループ連れが多いようだ。(続)


