雑草の繁る広場の向こうを見ると、砂利を敷き詰めた広大な駐車場が有り、その
先に錆びた車止めが立ち上がり、そこから二本のレールが、生えた草に見え隠れ
しながら伸びている。
その脇に、ただただ短いだけの、何もないホームがジオラマのように佇んでいる。
この最果て感のある終着駅は、何とも良い雰囲気を醸し出していた。

脇には駅舎とトイレが建ち、中には旧駅務室を利用したそば処や、地元の物産
を売る店、休憩所を備えている。
アイヌ語で「かもめの多いところ」を意味する増毛駅の開業は大正10年、江戸の
時代からサケやニシンの漁で栄えた町の駅は、広い構内に旅客や貨車がひしめ
き合う活気ある駅であったらしい。
しかし今では、僅かに1面1線しかない完全な行き止まり駅で、到着した列車は、休
む間もなくすぐに折り返していく。

増毛に来たからには、どうしても外せないものが有る。
それは「ぞうもう(増毛)」の霊験もあらたか(?)と、噂に高い入場券を購入する事。


駅の前に「風待食堂」があり、観光案内所の看板を掲げているので訪ねてみる。
ここは昭和8年に建てられた建物で、駅と共に映画「駅・STATION」の舞台にもなっ
たところである。
「二種類有りますが・・・どちらに?」と言うので、「どっちが良く効くの?」と聞くと、
苦笑を浮かべながら「どっちも」と言うものだから、「じゃぁ、両方貰う」と。

二種類の入場券を買い込んで、髪の毛の増えることを念じつつポケットにしまい、
もらった地図を頼りに、町歩きに繰り出してみた。(続)