そんな親父がある日、丁度大人の頭ぐらいの石を沢山家に持ち込んだ。
どこかで買い求めてきたものなのか、拾ってきたものなのか、貰ったものなのか・・・
そこら当たりの事情は今となっては知る術も無い。
それから間も無く、裏の小屋の一角でセメントをこね初め、石を積み上げ、なんと自ら
岩風呂を作り始めた。
どれぐらいかけて出来上がったのか良く覚えては居ないが、兎に角岩風呂は完成した。
浴槽の脇には、ゴムの木などの観葉植物が植えられジャングル風呂の様子を呈していた。

【写真:岩風呂(本文とは無関係)】
風呂は石を積み上げ、セメントで固めているので、背もたれがごつごつとして落ち着か
ない。
おまけに底もセメントの打ちっ放しだから、ざらざらとしていて座るとお尻が痛い。
おまけに随分と広かった(小さかったからそう感じただけかも知れないが)ので、冬など
は浴室が寒くて適わなかった。
それでも親父は、この手作りの岩風呂がいたく気に入っていたのであろうか。
当時は、まだ内風呂がようやく普及し始めたころであり、まだ銭湯に通う人も少なくない
時代だったので時には近所の人を招き入れ、風呂を勧めた。
そのたびに私は竈の前で薪くべをさせられた。
今のように温水器が有るわけではないので、誰かが入っている間中お湯を冷まさないため
に薪を絶やすことが出来ない。
そんなこんなで私はこの岩風呂が余り好きになれなかった。
それでもどこかで石を見ると、こんな器用で不思議能力を秘めた親父を思い出す。
結局、親父の命日に石屋が我が家を訪ねてきたのも何かの縁と、石の購入を決めた。
車窓から吉野川を眺めながら、しばし遠い日の思い出に浸っていた。(続)
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どこかで買い求めてきたものなのか、拾ってきたものなのか、貰ったものなのか・・・
そこら当たりの事情は今となっては知る術も無い。
それから間も無く、裏の小屋の一角でセメントをこね初め、石を積み上げ、なんと自ら
岩風呂を作り始めた。
どれぐらいかけて出来上がったのか良く覚えては居ないが、兎に角岩風呂は完成した。
浴槽の脇には、ゴムの木などの観葉植物が植えられジャングル風呂の様子を呈していた。


風呂は石を積み上げ、セメントで固めているので、背もたれがごつごつとして落ち着か
ない。
おまけに底もセメントの打ちっ放しだから、ざらざらとしていて座るとお尻が痛い。
おまけに随分と広かった(小さかったからそう感じただけかも知れないが)ので、冬など
は浴室が寒くて適わなかった。
それでも親父は、この手作りの岩風呂がいたく気に入っていたのであろうか。
当時は、まだ内風呂がようやく普及し始めたころであり、まだ銭湯に通う人も少なくない
時代だったので時には近所の人を招き入れ、風呂を勧めた。
そのたびに私は竈の前で薪くべをさせられた。
今のように温水器が有るわけではないので、誰かが入っている間中お湯を冷まさないため
に薪を絶やすことが出来ない。
そんなこんなで私はこの岩風呂が余り好きになれなかった。
それでもどこかで石を見ると、こんな器用で不思議能力を秘めた親父を思い出す。
結局、親父の命日に石屋が我が家を訪ねてきたのも何かの縁と、石の購入を決めた。
車窓から吉野川を眺めながら、しばし遠い日の思い出に浸っていた。(続)
