
近頃では観光地での「食べ歩き」が物議を交わしているようだが、旅先の
トラブルと言えば、もう一つ気になるものがある。
人の集まる繁華街や観光地で最近よく目にする、「自撮り棒」である。
1メートルほどの金属製の棒で、先端に自身のスマホを取り付け、自分自身
を撮影するときに使う写真撮影補助具のことだ。

これを使えば自分自身だけではなく、大勢の集合写真や、広く大きく取り
入れた背景に自身の姿をおさめた写真を自身で撮ることが出来る。
一寸したブームになっているらしく、カメラ屋さん、ホームセンターや家電
量販店などには色々なものが並べられている。

随分前の事、出始めの頃町中のベンチに座る制服姿の二人の女子高生が使っ
ているのを、目にしたのが初めてである。二人が顔を寄せ合って、棒の先端を
見ながらにっこり笑っている珍しい光景に出くわしたので思わず、「何してる
の?」と聞くと、「ジドリです」と答えた。実はこの時彼女たちの言葉が良く
聞きとれなくて、何のことなのか理解できていなかった。

「ジドリ=自撮り」と言う意味を教えられて知るのであるが、「それで写真
が撮れるの?」と追い打ちをかけるようにバカなことを聞いてしまった。
何の変哲もない釣竿のような棒だからどうやってスマホ画面のシャッターマー
クを押すのだろうか?と不思議に思ったのだ。

怪訝な顔をしていたのであろう。
「この棒に何か仕掛けでも・・・」などと妄想する心の中を見透かしたように、
二人は笑いながら「セルフですよ」と声を揃えて教えてくれた。
「あっそうか、そうだよねっ」世の中の進歩について行けない己を知らされた
一時であった。(続)(写真:本文とは無関係 東京・浅草寺)


