「リターンマッチ」とは、
負けた相手に再戦を挑む事であるが、
この本では敗者復活戦として使っている。
1994年発行の後藤正治のノンフィクション小説。
主人公である脇浜義明は兵庫県西宮市にある西宮西高校と言う、
定時制高校に20年以上勤務している英語の教師である。
定時制高校にはいろんな生徒が通っている。
最も多いのは母子家庭や父子家庭に育った子供、
金銭的事情から中学卒業と共に働かざるを得なかった子供、
全日制高校からドロップアウトした子供、
グレてしまい高校に行かなかった(行けなかった)子供、
20歳を超えた生徒もおり、派手な服装であったり、
ほとんど出席しなかったり、授業中も勉学にいそしむ事もなく、
睡眠やおしゃべりに費やすことも多い。
定時制の教師もそんな授業に嫌気がさし、
数年で転勤を希望して辞めていく。
脇浜義明は自身が貧しさゆえに学べず、
その上、半端ないゴンタクレであったがゆえに、
他の教師と違い根気よく生徒と向き合っている。
ある時、生徒からの要望でボクシング部を創設する事になる。
実は脇浜は若い頃にボクシングをやっていた事があったため、
最初は乗り気ではなかったが、やがて授業は出なくても、
部活には来いというくらいにのめり込んで行く。
一般的な高校生の学校生活から落ちこぼれた子供たちに、
ボクシングに打ち込むことで人生の敗者復活戦に挑む事を教え、
負ける悔しさを教え、勝つ事へのたゆまぬ努力を教え、
なだめすかしながら勝つ喜びを教えて行く。
大半はドロップアウトを繰り返しながら帰ってこなくなり、
少数はそれでも脇浜について行く。
子供は変わっても脇浜は粘り強く、時にはくじけながら、
ボクシングで人生に勝つことを教えて行く。
なんか凄いのよ。脇浜センセは。
西宮市って関西でしょ。不良も凄そうじゃない、
センセが言うには筋金入りの不良って言うか、
根性の座った不良がいいんだって。
やっぱりハンパはよくないよね。(笑)
ノンフィクションだから実際にあった話なわけで。
センセもボクシングを教える事で人生の敗者復活戦に挑んでいる。
落ちこぼれてしまった子供たちを立ち直らせることが、
センセの敗者復活戦である。