雀の手箱

折々の記録と墨彩画

蛍への旅

2011年06月25日 | 雀の足跡
今年もまた蛍に遭うことができました。
 日ごろ何かと心遣いしてくれる義妹が激しい腹痛で緊急入院しました。胆管に生じた胆石のいたずらと判明しましたが、種々の検査や処置でかなりの日数の入院になりました。
 快復のお祝いを兼ねて、お見舞いのお返しに、温泉旅行をプレゼントするからと、私に選択が任されました。
 このところの警報の出る長雨や、体調が思わしくない夫のことなども勘案して、蛍の季節でもあるので、すぐお隣の関門の奥座敷、一ノ俣温泉を選択しました。
 幸い前日までの大雨もあがり、曇り空ながら、雨傘の世話にもならず1泊の小旅行を楽しみました。
 時間がたっぷりあるので、関門トンネルを抜け、壇ノ浦経由で長府庭園に寄り道してゆくことにしました。期待していた花菖蒲は今年は植え替えでみすぼらしく、紫陽花が盛りの時を謳歌していました。孫文ゆかりの池でコウホネが黄色い花をつけてひっそりと夏を告げていました。
 弟の案内で昼食は 長府の老舗料亭古串屋の別館、十樂でということになり、老舗の和の味わいをモダンな部屋で楽しみました。
 途中時間つぶしに自然農園の施設「みのりの丘」にも寄り道し、3時にチェックインでした。
 昭和40年ごろに幼かった子供たちと一度訪れたことがあるという弟達は余り気乗りがしなかったようでしたが、当時の鄙びた山の宿のイメージとはすっかり様変わりしていたようです。
 とろりとした定評のある温泉にゆっくり浸かり、何が出るかわからない、「料理長におまかせ」のコースを6時に私達の部屋でと指定しました。
 今日のメインは、尺二寸の大鉢にこれで二人分と驚くほどに盛付けられた大量のふぐ刺しでした。多すぎるといいながら、時間を掛けて全部食べてしまいました。河豚好きの夫は大満足でした。
 蛍ホタルと騒ぐ私に「蛍ぐらい家の上のほうの川にも出ているよ」といっていた弟でしたが、8時過ぎにホテルが出すバスに乗って、川を遡り、群集するスポットでバスを止め灯りを消して、群舞するホタルの明滅をみた時には驚きの声を発していました。
 黒々と闇に包まれた山を背景に、川を挟んで3秒おきくらいに一斉に点滅を繰り返し、舞い上がり、斜めに光の尾を引き、あるいは高く、低く交差する光のシンフォニーに、みな声もなく見入っていました。
 川の畔に、低く明かりを灯す小さな姫ホタルや、平家ホタルとは異なり、ここのホタルは飼育されたものではなく、大きな天然記念物に指定されている源氏ボタルですから、迫力が違います。
 弟によると、ホタルは常時出ているわけではなくて、9時前後に一斉に明滅し、そのあとしばらくは休み、また12時過ぎあたりに出るのだそうです。頃合いを見計らったバスの運行だったわけです。存分に光のショーを堪能した40分でした。