例年は七草の頃には蕗の薹も顔を覗かせているのですが、今年は芹、はこべの姿もなく、爪ほどの蕗の薹を三つだけ見つけて、水菜や蕪、これだけはたくさん茂っている三つ葉と春菊を収穫しました。春の七草ではないのですが、この季節の葉物を取り集めての五草粥です。
手術以来、ことのほかお粥にうるさくなったあるじの好みににあわせて、昆布が多めの合わせ出汁でゆっくり炊きあげました。
最後に刻んだ若菜を入れ、塩で味を調えると、台所中に早春の香りが匂い立ち、目に鮮やかなさみどりが春を告げてくれます。
古人はうまく季節を賞味し、正月のご馳走で疲れた胃袋をいたわった智慧の持ち主だったことに感服します。
この人日の節句で正月気分にもけじめがつきます。塗り物の手入れをして、よい日和にも恵まれたので、片づけもはかどりました。
久女の句に 草の戸に住むうれしさよ若菜摘 という句があります。今年は数は揃わないものの今のご時世に庭先での若菜摘みはしわわせと思わねばなりません。
若菜を摘むついでに、藪の中に凛と咲いている水仙を切ってきたので、今日は久しぶりに、三枚ほど書いてみました。
何もかも水仙の水も新らしき 子規
水仙や古鏡の如く花をかかぐ たかし
水かへて水仙影を正しけり 草城