今宵は中秋の名月。相次いだ台風で被災された方にはお月様どころではない日々と思います。
嵐山周辺の、お月見の名所の景観も渡月橋はじめ大変なことになっているようです。こちらは、大雨にはみまわれましたが、さしたる被害もなく、久しぶりにしみじみと月を眺めていました。
やはり無月に月を恋う兼好法師流の風流よりも、雲一つない大空に冴えわたる月は、人にさまざまな郷愁を呼ぶようです。古馴染みの人々が他界することの多い昨今、月の光は格別のものがあります。
三五夜中新月色 二千里外故人心
二千里どころではない遠くに去った友を今宵は偲んでしみじみと一献をかたむけました。
中村芳中の「月に萩鹿図」 縦111、2 横41,6 江戸後期
月、鹿、萩のほとんどが緩やかな弧で表現され、余白と曲線の美しい画面です。俳諧に親しん だ芳中らしい俳味の余韻が見事です。