庭に初夏を告げる躑躅の競演はもう盛りを過ぎようとしています。花ごと潔く散り落ちてきます。
躑躅と言えば、必ず思い浮かべるのが平家物語の「大原御幸」の後白河法皇と建礼門院がご対面になる場面です。突然登場した若い尼をいぶかる法皇に、「花篋肱に懸け岩躑躅うち添へて持たせ給ひたるは女院にて渡らせ給ひ候ふなり」と老いたる尼がお答えする場面です。もっとも山躑躅は朱赤で花も小さく、現代の園芸品種とは異なるのですが。
躑躅が散るころには藤が盛りを迎え、ゴールデンウイークのころが盛りの時期なのに、今年は少し開花が早かったようです。万葉集にも30首くらい藤を詠んだ歌があったと思うのですが覚えているのは僅かです。
藤波の花は盛りになりにけり奈良の都を思ほすや君
藤波の茂りは過ぎぬあしひきの山霍公鳥などか来鳴かぬ
藤波の茂りは過ぎぬあしひきの山霍公鳥などか来鳴かぬ