夏から楽しみにしていた狂言の会でした。
北九州芸術劇場は二階席まで満席の盛況でした。私の切符は幸なことに3列目、16番で、中央シテ柱を正面に見る、演者の足袋の裏まで見える位置でした。
期待は人間国宝、野村万作さんの萩大名でした。今年80歳「違いの分かる男」の軽妙な演技は健在で、声こそ張りが少し減ったかと思いますが、年齢を重ねたいぶし銀の洒脱は磨きがかかって、存在感がありました。
解説の萬斎さんは、話馴れていて、観客を引き込む術も心得たものです。過不足のない演目の解説の最後は、”首引き“の終わりのところの掛け声「エイー サラサ、エイサラサ」を自分の発声に習って、観客にも発声させました。笑いに包まれて狂言への導入が終了しました。
首引きは狂言には珍しく、登場人物は為朝のほかはみな面をつけていました。親鬼のユーモラスな面、姫鬼のおかめの愛らしい面と初々しいしぐさも楽しめました。
記念のチケットと舞台(パンフレットより)
矢来能楽堂から謡と仕舞のお稽古の案内が届き興味津々なのですが、お稽古の時間帯が平日の夜7時~の始まりで、残念ながら断念しました。
今年は国立劇場で文楽を見る機会にも恵まれましたが、至芸のぶつかり合いに感動こそすれ、はねた後の余韻というものが感じられず、なんだか疲れました。文楽は「たしざんの舞台」なのですね。お能や狂言のような「ひきざんの舞台」のほうが、性に合っているようです。
ひとつ前の記事の、藍地に紅葉の絵がステキですね ^^
私には上等のお酒のあとの酔いにそれは似ているようです。残念ながらこれは甘党の雪月花さんには話が通じませんね。
鍛え抜かれた演者の至高の動きは、まさしく序破急にはまり、すきのない足の運びがさりげなく流れるようで、ため息が出ました。
能の番組と切り離して狂言だけで観賞することは初めてでした。
省略を想像で紡ぐのが楽しいのですよね。
1月も萬斎さんの狂言です。
謡曲,お仕舞の稽古、和服姿で絵になるところを残念でした。想いがあれば必ずまたの機会があることでしょう。