ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ヴォーン=ウィリアムズ/交響曲第5番&チューバ協奏曲

2019-08-17 23:11:52 | クラシック(交響曲)
本日はイギリスの作曲家レイフ・ヴォーン=ウィリアムズの作品を取り上げます。ヴォーン=ウィリアムズについては以前に代表曲の「タリス幻想曲」「グリーンスリーヴス幻想曲」「揚げひばり」を本ブログでも取り上げました。民謡や古楽を題材にイギリスの田園風景を思わせるような透明感あふれる曲調が持ち味ですね。一方でヴォーン=ウィリアムズは生涯で9曲もの交響曲を残し、交響曲の分野にも相当力を入れていたようですが、本国イギリスはともかく海外での人気はそれほど高いとは言えません。CDも古くはエイドリアン・ボールト、最近だとロジャー・ノリントン、アンドリュー・デイヴィス等イギリスの指揮者のものが中心です。今日ご紹介するCDはアンドレ・プレヴィン指揮で彼はイギリス人ではありませんが、本盤でもタクトを振るロンドン交響楽団の首席指揮者を長く務めたので英国ものはお手の物ですね。



曲は4楽章形式で第2楽章のみスケルツォで毛色が少し違いますが、他の楽章は全ていかにもヴォーン=ウィリアムズと言った感じの透明感あふれる気高い感じの曲調です。同じようなテンポが続くので起承転結には乏しく、ドイツやロシアのロマン派音楽のようなわかりやすい「ツボ」がありません。なので最初は正直退屈ですが、何度か聴くうちに各楽章に静かながらも盛り上がるポイントが見つかってきます。中でも第4楽章の3分過ぎから始まる盛り上がりは感動的です。

このCDには他にもヴォーン=ウィリアムズが「エリザベス朝のイングランド」と言う映画のために書いた音楽から3つの楽曲。そしてバス・チューバ協奏曲が収録されています。前者は特筆するほどの曲ではありませんが、後者は12分強の小品ながらなかなかの魅力的な作品。そもそもチューバを主楽器とした協奏曲自体が激レアで、実際この曲自体が歴史上初めてのチューバ協奏曲だとか(現在では他にも映画音楽で有名なジョン・ウィリアムズの作品等があります)。チューバは重低音を司る金楽器としてオーケストラには欠かせない存在ではありますが、音的にはボッボボッボと鳴るだけですのでソロには明らかに不向きですよね。ところがヴォーン=ウィリアムズのこの曲は重苦しくドラマチックな曲調にチューバの重低音がうまくマッチしていて得も言われぬ魅力を醸し出しています。ソリストはロンドン交響楽団でチューバ奏者だったジョン・フレッチャーと言う人でヴォーン=ウィリアムズのこの曲を吹かせたら世界一と言われていた人だとか。確かに第3楽章のチューバとは思えない高速パッセージなどは素人でも凄さがわかります。腹に響くボッボボッボとオーケストラとの不思議な融合が耳について離れません。
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ニールセン/交響曲第3番&第4番

2019-08-03 12:04:28 | クラシック(交響曲)
本日はデンマークの国民的作曲家カール・ニールセンの交響曲2曲をご紹介します。ニールセンについては半年前のブログでも取り上げており、その中でも交響曲や協奏曲は取っつきにくいみたいなことを書いていまが、あらためて聴いてみると全然そんなことはないですね。20代の頃に第4番「不滅」を聴いていまいちピンと来なかった記憶があるのですが、当時の私には理解できなかったのか、そもそも別の曲を聴いたのを記憶違いしていたのか?とにかく普通に良い曲です。曲は単一楽章ですが、実際は4部に分かれており、冒頭の不安げな旋律の後に曲のメインとなる主題が現れます。北欧の雄大な大地を思わせる感動的な旋律で、シベリウスとか好きな人にはたまらないと思います。中間部は地味ですが、フィナーレの部分で再びメインの主題が登場して感動的なクライマックスを迎えます。この曲はニールセンの代表曲とされ、カラヤンやバーンスタインら20世紀の巨匠と呼ばれる人のディスクもありますが、私が購入したのはネーメ・ヤルヴィ指揮イェーテボリ交響楽団のものです。



このCDには交響曲第3番も収録されていますが、こちらもまた良い曲です。この曲にはラテン語でSinfonia Espansivaと言う副題が付けられており、日本語では「広がりの交響曲」と訳されていますが、よく意味がわかりませんね。第1楽章の演奏記号allegro espansivo(快活、広々と開放的に)から付いたとのことですので、無理に訳するとしたら「広々とした開放的な交響曲」と言ったところでしょうか?第1楽章は力強いオーケストレーションで始まるエネルギッシュな曲で中間部はまさに広々と開放的な感じです。第2楽章はゆったりしたアンダンテで後半に入るソプラノとバリトンの独唱が幻想的な雰囲気を醸し出します。第3楽章はスケルツォ風な始まりですが、途中からシベリウス風の旋律が顔を出します。第4楽章はブラームスを思わせる格調高い旋律で堂々としたフィナーレを迎えます。「不滅」に比べると知名度は低いですが全体的な出来としてはこちらの方が充実しているかもしれません。ニールセンは合計で6曲の交響曲を残しており、話によると第5番も傑作との誉れが高いとのことですので、近いうちに購入してみたいと思います。
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シューベルト/交響曲第3番、第4番、第5番、第6番

2019-07-25 17:03:25 | クラシック(交響曲)
本日はフランツ・シューベルトの交響曲をご紹介します。シューベルトの交響曲と言えば、何と言っても「未完成交響曲」、そして「ザ・グレート」の2曲が圧倒的に有名ですが、それ以外の交響曲については知る人ぞ知ると言った感じですよね。本日取り上げるのは第3番から第6番までの4曲。いずれもシューベルトが18歳から20歳までの間に書かれた作品群です。一般的によく知られているシューベルトの名作群(前述の「未完成」や「ザ・グレイト」、歌曲の数々)は彼が20代後半に書かれたものがほとんどで、それ以前の交響曲は比較的初期の作品にあたります。音楽史的にはロマン派の先駆け的存在と言われるシューベルトですが、この頃の作品は古典派の色合いが濃く、特にハイドンの影響が濃厚に感じられますね。CDについては豊富とは言えないまでもそれなりに出回っていますが、今回ご紹介するのはリッカルド・ムーティ指揮ウィーン・フィルのシューベルト全集です。CDは第3番&第5番、第4番&第6番の組み合わせでそれぞれで発売されていますが、ブログでは番号順に紹介していきます。

 

まず第3番から。ハイドン風の重々しい序奏から一転して勇壮な旋律が現れます。同じ交響曲第3番と言うこともあり、どことなくベートーヴェンの「英雄」を思い起こさせますね。第2楽章の穏やかなアレグレットと第3楽章メヌエットは完全にハイドン風。第4楽章はきびきびとしたプレスト・ヴィヴァーチェ。全部で23分強とコンパクトな内容で規模的にも内容的にも完全に古典派の交響曲ですね。

続くは第4番。こちらは「悲劇的」という副題が付いています。交響曲のタイトルは後世に付けられたものが多いですが、このタイトルに関してはシューベルトが自ら命名したもので、その名のとおり単調で重々しい内容です。ハイライトは何と言っても第1楽章で、ハイドン風の序奏の後で悲愴感を帯びたドラマチックな主題が現れます。19歳でこの旋律を書いたシューベルトはやはり天才としか言いようがないですね。第2楽章はモーツァルトを思わせる優美なアンダンテですが、途中で悲劇的な旋律も現れます。第3楽章は箸休め的なメヌエットで、疾走感あふれる第4楽章で幕を閉じます。曲の長さも32分と長く、内容的にも格段にドラマチックになっており、第3番と比べて大きな進歩の跡がうかがえます。

第5番は第4番とほぼ同じ時期に書かれた作品ですが、こちらは一転して明るい雰囲気に満ちた作品です。第1楽章は珍しく序奏がなく、モーツァルト風の終始浮き立つような曲調です。重厚な第4番とは正反対の作品ですが、これはこれで素晴らしく甲乙つけがたい魅力があります。続く第2楽章アンダンテの爽やかな美しさも捨てがたいですね。唯一短調の第3楽章メヌエットを経て、古典風の第4楽章アレグロ・ヴィヴァーチェでフィナーレを迎えます。

第6番は上記の第4番、第5番に比べると、これと言った特徴もなく地味な曲です。が、決して内容的に悪いわけではありません。第1楽章は重厚な序奏から一転して勇壮な旋律が次々と現れる楽しい曲。第2楽章アンダンテ、第3楽章スケルツォはまあまあと言ったところですが、第4楽章は再びベートーヴェンを思い起こさせる力強い曲調で幕を閉じます。

4曲とも「未完成」や「ザ・グレート」ほどの完成度はありませんが、若きシューベルトがハイドンやモーツァルト、ベートーヴェンの影響を濃厚に受けながら自己のスタイルを確立していく様子がよくわかりますし、その中でも第4番第1楽章や第5番第1楽章は文句なしに名曲だと思います。
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グノー/交響曲第1番&第2番

2019-07-14 23:40:55 | クラシック(交響曲)
本日はフランスの作曲家シャルル・グノーを取り上げたいと思います。ヨーロッパでは「ファウスト」や「ロメオとジュリエット」の2つのオペラがそれなりに知られているグノーですが、日本ではあまりメジャーではありません。辛うじて歌曲「アヴェ・マリア」が知られているぐらいでしょうか?1818年生まれの1893年没と言うことで世代的にはベルリオーズとサン=サーンスの中間世代にあたりますが、この頃のフランスは音楽の世界では決して先進国とは言えず、オペラの面ではイタリアに、交響曲等の面ではドイツ・オーストリアに完全に後れを取っていました。フランスならではのクラシック音楽が盛んになるのは印象主義のドビュッシーやラヴェル以降のことです。今日ご紹介する2曲の交響曲も内容的にはハイドンやベートーヴェンの影響を強く受けたと思しきものです。演奏機会や録音は決して多いとは言えませんが、今回購入したネヴィル・マリナー指揮アカデミー・オヴ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズのCDは知られざるグノーの交響曲の素晴らしさを伝えてくれる貴重なものです。



交響曲第1番は1954年に書かれたもの。4楽章で25分強と規模的には小さめです。内容ですが第2楽章と第3楽章はハイドンを思い起こさせるような曲調で正直かなり古臭い感じを受けます。聴きどころは勇壮な第1楽章とフィナーレの第4楽章ですね。特に第4楽章の後半はもう少し後のブラームスにも通じるものがあります。第2番はその2年後の1956年の作品。こちらは4楽章全てハズレなしの名曲。第1楽章は重厚な序奏から華やかなアレグロとまさにハイドン的展開。第2楽章以降はベートーヴェンの影響が顕著で、美しい緩徐楽章の第2楽章、勇ましいスケルツォの第3楽章を経て、壮麗な第4楽章フィナーレで幕を閉じます。2曲ともハイドンとベートーヴェンをブレンドして、香りづけにブラームスを少しまぶしたような感じで、独創性はあまりないかもしれませんが、逆に言うと古典音楽のエッセンスを凝縮したような曲作りで非常にクオリティは高いと思います。

CDにはこの2曲に加え、オペラ「ファウスト」の劇中で演奏されるバレエ音楽が収録されています。劇中の踊りのシーンで挿入される曲だそうですが、今ではオペラと関係なく独立して演奏されることが多いようです。全7曲で20分ほどあり、優美な旋律が魅力の第2曲「クレオパトラと金の杯」、エキゾチックな第3曲「ヌビア奴隷たちの踊り」、美しいワルツ風の第5曲「トロイの娘たちの踊り」、そして興奮のクライマックスを迎えるラストの「フリネの踊り」とエンターテイメント性あふれる内容です。古典の王道を行く2曲の交響曲とは毛色が違いますが、こちらも捨て難い魅力です。
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カルウォヴィチ/交響曲「復活」

2019-04-04 12:28:15 | クラシック(交響曲)
ナクソスのマイナー作曲家シリーズ第4弾は前回に引き続きポーランドの作曲家でミェチスワフ・カルウォヴィチです。カルウォヴィチについては当ブログでも7年前にヴァイオリン協奏曲を紹介しており、そこにも書いたように19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したものの、32歳の若さで事故死した悲運の作曲家です。本作は彼が残した唯一の交響曲で「復活」という題名が付いています。マーラーの有名な第二番も「復活」ですが、あっちは英語にすればresurrection、こちらはrebirthなので「復活」というより「再生」の方がより原題の意味に近いかもしれません。



肝心の内容ですが、これはもう素晴らしいの一言。カルウォヴィチ25歳の時に書かれた曲ですが、そんなことが信じられないほどの完成度です。作風的にはポロネーズやマズルカと言ったポーランドの民族音楽的な要素はあまりなく、むしろ同時代のリヒャルト・シュトラウスやマーラーら後期ロマン派の王道に近いです。第1楽章はオープニングを飾るにふさわしい重厚な作りの曲で、やや不安を帯びた始まりの後に勇壮な第1主題、続いてロマンチックな第2主題が現れます。ボリュームも18分超でこれだけで1つの楽曲として成立します。第2楽章は一転して美しいアンダンテで、哀愁を帯びたチェロ独奏が印象的です。第3楽章は序盤は珍しく舞曲風の展開ですが、その後で甘美な旋律が現れます。再び舞曲風の旋律に戻って、途切れることなく第4楽章へ。こちらはフィナーレを飾るにふさわしいドラマチックな曲で、力強い序盤に引き続き中間部にまるでエルガーの「威風堂々」を思わせるような栄光に満ち溢れた旋律が現れます。フィナーレの盛り上がりも見事で、終わった後は思わず「ブラボー!」と拍手したくなります。CDは前回のパデレフスキに引き続きアントニ・ヴィト指揮ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏です。ナクソスではすっかりお馴染みのコンビですね。このCDにはもう一曲「ビアンカ・ダ・モレナ」という曲が収録されています。が、こちらもいかにもカルウォヴィチらしい甘美な旋律に彩られた美しい曲です。素晴らしい楽曲を残しながらも若死にしたこともあり本国以外では無名の存在だったカルウォヴィチ。ただ、日本でもこうやってナクソス盤が発売されるなど再評価の兆しがあるのは喜ばしいことです。このブログを読んで1人でも多くの人が耳にしていただければ嬉しい限りです。
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