先日(2024年11月12日)ロイ・ヘインズが亡くなりました。御年99歳。天寿を全うしたと言えるでしょう。以前にベニー・ゴルソンのところで存命中のジャズジャイアントについて述べましたが、そのゴルソンも9月に亡くなりましたし、ヘインズの3日前にルー・ドナルドソンも亡くなりました。残る90歳越えはソニー・ロリンズとケニー・バレルぐらいでしょうか?少しでも長生きしてほしいものです・・・
さて、本日は追悼の意味も込めてヘインズの60年代の代表作をご紹介します。プレスティッジ傘下のニュージャズに1963年4月に吹き込まれた「クラックリン」です。1940年代のビバップ期から活動を開始し、チャーリー・パーカーやバド・パウエル、ワーデル・グレイらのレジェンド達とも共演するなどこの時点でベテランとも呼べるキャリアを刻んできたヘインズですが、60年代に入ると時代の波に乗ってモードやフリー系のミュージシャン達とも共演し始めます。前年の1962年には鬼才ローランド・カークを迎えて「アウト・オヴ・ジ・アフタヌーン」をインパルスに残し、本作でもブッカー・アーヴィン(テナー)、ロニー・マシューズ(ピアノ)、ラリー・リドリー(ベース)とハードバップの枠に収まらない人材を起用しています。
全6曲、基本的にメンバーのオリジナル中心です。1曲目はブッカー・アーヴィン作の”Scoochie"。ホレス・パーランの「オン・ザ・スパー・オヴ・ザ・モーメント」でも”Skoo Chee"のタイトルで収録されていた名曲です。ヘインズの激しいドラムをバックに熱いソロを繰り広げるアーヴィンとマシューズが素晴らしいですね。2曲目はロニー・マシューズ作の”Dorian"。匂いが強烈な果物のドリアンではなく(あちらはdurian)、何でもドリアン・モードと呼ばれる音楽理論に基づき書かれた曲のようです。私もドリアン・モードについてネットで調べてみましたが、正直良くわかりませんでした。楽器を演奏する方ならわかるかもしれませんが、私は聴く専門なので・・・理論的なことはともかく、ちょっとエキゾチックで不思議な感じの曲です。
3曲目”Sketches Of Melba"は個性派ピアニストで作曲家のランディ・ウェストン作。エリック・ドルフィーも演奏した曲ですが、これがなかなか美しいバラードで、”Scoochie"と並ぶ本作のハイライトと言って良いでしょう。クセ強系テナーのブッカー・アーヴィンが珍しくストレートにバラードを歌い上げています。4曲目マシューズ作の”Honeydew"はR&Bっぽいソウルジャズで特筆すべきところはありません。5曲目"Under Paris Skies"はどこかで聞いたことある曲ですが、フランス映画「巴里の空の下セーヌは流れる」の主題歌で、エディット・ピアフやイヴ・モンタン等のシャンソン歌手が歌った曲です。お馴染みの哀愁漂うメロディをモード風に演奏しています。ラストの”Bad News Blues"はヘインズ作のブルース。アーヴィンがお得意のウネウネしたテナーソロを聴かせます。以上、全体としてはまずまずの出来ですが”Scoochie"”Sketches Of Melba”はなかなかの名曲名演と思います。
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