ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ホレス・パーラン/アライヴァル

2017-08-24 12:20:54 | ジャズ(ヨーロッパ)
今回からしばらくはデンマークの名門レーベルであるスティープルチェイス(SteepleChase)の再発シリーズを取り上げたいと思います。同レーベルはニルス・ウィンターという人物が1972年にコペンハーゲンで立ち上げたレーベルです。当時のデンマークにはアメリカからジャズミュージシャンが多数移住してきており、またデンマーク人の中にも実力あるミュージシャンが多くいたため(ジャズ・クインテット60ビャーネ・ロストヴォルドの頁を参照)、コペンハーゲンのジャズシーンは活況を呈していました。70年代のアメリカはフュージョン全盛期で、バップの流れを汲むモダンジャズは時代遅れとみなされていましたが、このスティープルチェイスはあくまで正統派ジャズにこだわり、デクスター・ゴードン、ジャッキー・マクリーン、ケニー・ドリュー、デューク・ジョーダンらハードバップの時代を生き抜いた大物ジャズマン達に多くの録音機会を提供しました。



今日取り上げるホレス・パーランもアメリカからの移住組の一人。個性派ピアニストとして1960年代にブルーノートに7枚ものリーダー作(うち「ヘディン・サウス」は本ブログでも紹介しました)を発表した彼ですが、その後のジャズシーンの変化についていけなかったのか、1973年にコペンハーゲンに移住。本作はその年の12月に録音された作品です。共演者はイドリース・スリーマン(トランペット)、ベント・イェディク(テナー)、ヒューゴ・ラスムッセン(ベース)、エド・シグペン(ドラム)の4人。うちスリーマンとシグペンはパーランと同じく移住組。前者は50年代に主にプレスティッジで活躍、後者は言わずと知れたオスカー・ピーターソン・トリオの一員ですね。イェディクとラスムッセンはデンマーク人で、特に前者は北欧を代表するテナー奏者だったそうです。

曲は全10曲。半数の5曲がクインテット編成で、残りはトリオ編成です。クインテット編成の方はブルーノート時代を思い起こさせるような王道ハードバップで、タイトル曲でもあるパーラン自作の“Arrival”、ランディ・ウェストン作の“Saucer Eyes”、パーラン作の“Back From The Gig”と粒揃いの名曲ばかりです。パーランの躍動するピアノはもちろんのこと、スリーマン&イェディクのフロントラインの演奏も素晴らしいです。一方でトリオの方はどちらかと言うとミディアム&バラード系が中心。ブルーノート時代のファンキーさは影をひそめ、夢見るようなタッチのロマンチックなピアノを聴かせてくれます。このあたりは北欧で新たに生み出したスタイルでしょうか?自作の“Norma”と“Waltz No.1”が特に秀逸です。1曲だけバップの古典“Bag's Groove”だけは往年を思わせるファンキーなタッチです。この作品を皮切りにパーランは多くの録音をスティープルチェイスに残し、第二の黄金時代を迎えることになります。ブルーノート時代とは一風違いますが、北欧時代のパーランもなかなか良いですよ。
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