本日は西海岸の白人ピアニスト、クロード・ウィリアムソンを取り上げたいと思います。トランぺッターのステュ・ウィリアムソンの兄で、ラス・フリーマンやマーティ・ペイチらと並んで50年代のウェストコーストを代表するピアニスト、と言うのが世間的な評価でしょう。ただ、クロード本人は自らがウェストコースト・ジャズにジャンル分けされるのが嫌だったようで、音楽的にはあくまでビバップを志向していたようです。特に影響を受けたのがバド・パウエルで、そのせいか“白いパウエル”というニックネームも付けられています。アルトのバド・シャンクの作品に多く参加していますが、リーダー作としてはベツレヘムの2枚、どちらも1956年に録音された「ラウンド・ミッドナイト」と本作「クロード・ウィリアムソン・トリオ」が真っ先に挙げられます。メンバーはシャンクのバンドでも共演したドン・プレル(ベース)とチャック・フローレス(ドラム)です。
全9曲、オリジナルが2曲とスタンダードが7曲という構成です。オリジナルはどちらも典型的なバップ・チューンで特にアルバム冒頭を飾る“June Bug”が最高です。ここでのプレイはパウエルというよりむしろ同時期に人気絶頂だったホレス・シルヴァーをも思わせるようなファンキーなタッチです。「ラウンド・ミッドナイト」でもシルヴァー作の”Hippy”をカバーしていますので、実際影響を受けていたのでしょうね。一方でスタンダード曲では歌心あふれるプレイを披露してくれます。バラードの“Moonlight In Vermont”や‟Embraceable You”ではきらびやかなタッチでロマンチックなムードを演出しますし、一転して‟I'll Remember April”では息もつかせぬようなテンポで華麗なアドリブを繰り広げます。その他ではドン・プレルのベースソロを大きくフィーチャーした‟Have You Met Miss Jones”、ラストのハードドライヴィングな‟Hallelujah”も出色の出来です。ウェストコーストなのかビバップなのかジャンル分けはひとまず置いといて、普通に上質のピアノトリオ作品として楽しめる内容だと思います。