ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ハイドン/交響曲第89番、90番、91番、協奏交響曲

2018-12-25 12:08:43 | クラシック(交響曲)
久々の更新はハイドンの交響曲集を取り上げます。ハイドンの交響曲に関しては当ブログでもたびたび取り上げてきましたが、104曲あるうちの93番以降が「ロンドン交響曲」と呼ばれで人気です。それとは別に82番から87番までの6曲も「パリ交響曲」と呼ばれ、ロンドン交響曲ほどではないにせよそれなりに評価されています。その一方、その間に挟まれた88番から92番は特に統一的な名称もなく、目立たない存在です。過去ブログでも紹介した88番「V字」と92番「オックスフォード」は副題が付いてることもあってまだ知られている方ですが、89番、90番、91番の3曲に関しては演奏機会も録音もほとんどないのが実情です。ただ、最近個人的にハイドン再評価ブームが高まっていることもあり、タワーレコード限定盤でカール・ベームがウィーン・フィルを指揮した88番~92番の2枚組を買いました。本CDにはこの5曲に加え、同時期に書かれた協奏交響曲も収録されています。うち88番と92番については以前にバーンスタイン盤をアップしているので割愛します。



まずは第89番から。この曲の第2楽章と第4楽章は他の協奏曲からの旋律を転用したらしく、いわば“手抜き”の曲。そのせいか評価は高くないですが、第1楽章はさすがにクオリティが高く、ハイドンらしい華やかな旋律です。とあるホームページで冒頭部分が童謡の♪しょ、しょ、しょ~じょ~じ、と同じと書かれてましたが、言われてみれば確かにそうですね。第2楽章、第3楽章は特に聴き所もないのでスキップしても良いぐらいです。第4楽章は楽しいロンド形式ですが、ハイドンの他の交響曲に比べると少し弱いかもしれません。

続いて第90番。第1楽章はジャーンと重々しい序奏から始まり、続いて魅惑の旋律が次々と現れるこれぞハイドンと言った曲。ここだけ聴くと後のロンドン交響曲の傑作群と比べて遜色ありませんが、違いはこの曲も89番と同じく中間楽章が弱いこと。優しいアンダンテの第2楽章に関してはまだマシですが、第3楽章メネエットは平凡で迷わずスキップです。ただ、第4楽章に関しては文句なしに素晴らしい。思わず踊り出したくなるような楽しいアレグロで、きびきびした弦楽合奏がたまらなく魅力的。3分半過ぎに一旦終わったとみせかけて、まだ続くのもご愛敬です。

お次は第91番。第1楽章は90番に比べると全体的に穏やかで優美な印象ですが、サビの部分の激しい弦楽合奏がドラマチックな要素を与えています。第2楽章はこの頃の交響曲の中間楽章の中では白眉の出来で、穏やかで親しみやすい旋律のアンダンテです。ただ、第3楽章メヌエットに関しては相変わらず単調。ハイドンは第3楽章には必ずと言っていいほどメヌエットを置くのですが、残念な出来が多いですね。でも、それも続く第4楽章の前の箸休めと思えば許せます。こちらは第90番をさらに上回る出来で、宝石のようにきらびやかな旋律がぎっしり詰まった名曲中の名曲と言っていいでしょう。今回は取り上げていませんが、続く第92番「オックスフォード」の第4楽章も素晴らしい出来ですし、この頃のハイドンの交響曲は全体的な出来はともかく、最終楽章に関しては全交響曲中でも上位と思いますがいかがでしょうか?

最後は協奏交響曲。こちらは番号は付されていませんが時期的には上記の交響曲と同時期に書かれたものです。協奏交響曲と言えばモーツァルトの二曲(ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲オーボエ、クラリネット、ホルンとファゴットのための協奏交響曲が有名ですが、ハイドンの曲はヴァイオリン、ヴィオラ、オーボエ、ファゴットの4つの楽器が大きくフィーチャーされています。前述のモーツァルトの2曲に比べると演奏機会に恵まれているとは言えませんが内容的には文句なしです。特に第1楽章は宮廷音楽的な華やかさを持った美しい曲で、独奏楽器のソロと弦楽合奏のバランスも絶妙です。第2楽章の穏やかなアンダンテ、躍動感あふれる第3楽章も素晴らしいですね。私は常々モーツァルトに比べてハイドンは過小評価されていると思っているのですが、この協奏交響曲の扱いを見てもまさしくそうですね。もちろんクラシック通の人には知られているのでしょうが、もっと普遍的に知られても良い名曲だと思います。
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