ハードバピッシュ&アレグロな日々

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チャイコフスキー/組曲第3番&第4番

2019-06-08 00:18:31 | クラシック(管弦楽作品)
本日はひさびさにチャイコフスキーです。交響曲、バレエ音楽、協奏曲と数多くの有名曲を残しているチャイコフスキーですが、単に「組曲」と題された作品を4曲残しています。時期的には交響曲第4番と第5番の間、30代後半から40台にかけての円熟期に書かれたものですが、一般的にはあまり知られていませんね。特に今日取り上げる第3番と第4番は内容的にも傑作と思うのですが、CDの数も限られていますし、名曲一覧で紹介されることもありません。以前にブログにアップしたピアノ協奏曲第2番もそうですが、チャイコフスキーの作品の中にはなぜかスルーされる名曲がありますね。なぜでしょうね?



まず組曲第3番から。この曲は当初は交響曲を意識して書き始められたようで、4曲計42分とスケール的にもかなり大きな曲です。中でもお薦めは第1曲の「エレジー」と第4曲の「主題と変奏曲」。「エレジー」はやや哀調を帯びた旋律で始まり、続いて弦楽アンサンブルが奏でる第2主題が何とも切なくロマンチックです。「主題と変奏曲」は文字通り前半部分は変奏曲で、目まぐるしく色々な変奏が現れますが、14分過ぎから曲の雰囲気がガラリと変わり、華やかなポロネーズの旋律に変わります。最後はフルオーケストラが鳴り響くド派手なフィナーレです。

続く組曲第4番には「モーツァルティアーナ」という副題が付いています。文字通りモーツァルトへのオマージュとして書かれたもので、彼のピアノ作品をチャイコフスキーがオーケストラ用に編曲したものです。チャイコフスキーの他の曲を聴いているとモーツァルトの直接的な影響はあまり感じられませんが、やはり前世紀の偉大な作曲家としてモーツァルトのことを尊敬していたようです。第3番と同じく4曲構成ですが、1曲目「ジーグ」、2曲目「メヌエット」、3曲目「祈り」はどれも2~4分程度の小品です。ハイライトは第4曲「主題と変奏」でこちらは14分以上もあります。ここで取り上げられている主題はもともとグルックのオペラ中の曲をモーツァルトがピアノ曲に編曲したもので、それをさらにチャイコフスキーがオーケストラ用に編曲するといういわば二重に手が加えられた構成です。とても明快で親しみやすい主題が序盤からさまざまな変奏で演奏されますが、8分過ぎから4分近くヴァイオリン独奏も入り、曲にアクセントを加えています。普段の作風とはかなり違いますが、モーツァルト風チャイコフスキーもなかなか魅力的です。CDはナクソス盤でシュテファン・ザンデルリンク指揮アイルランド国立交響楽団のものです。ジャケットのセンスのなさは相変わらずですが、演奏の方は文句なしと思います。
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