本日はアメリカの作曲家サミュエル・バーバーのヴァイオリン協奏曲をご紹介します。バーバーは1月のブログで取り上げましたが、20世紀生まれの作曲家でありながら現代音楽の要素はほぼなく、あくまでロマン派音楽の延長線上にある作風で知られています。1940年に作曲されたこのヴァイオリン協奏曲もそんなバーバーの特徴が表れた作品で、「弦楽のためのアダージョ」と並んでバーバーの代表作の一つに数えられています。曲は3楽章形式ですが、特に第1楽章が素晴らしく、叙情的な旋律でありながら雄大さも感じさせてくれます。第2楽章はゆったりしたアンダンテでこちらもメランコリックでありながら非常に美しい旋律です。第3楽章は一転して無窮動、すなわちヴァイオリンが休むことなくアグレッシブなソロを奏でる楽章で、この部分だけが現代っぽいと言えばぽいです。とは言え、全体的にはロマンチックなヴァイオリン協奏曲であることには違いありません。
CDですがまだまだ数は少なく、メジャーレーベルからはほとんどありません。私が購入したのはナクソス盤で、演奏はマリン・オールソップ指揮ロイヤル・スコティッシュ国立管弦楽団、ヴァイオリンはジェイムズ・バスウェルによるものです。オールソップはアメリカが生んだ世界的女性指揮者で、近年若手の活躍が目覚ましい女性指揮者達の中でも重鎮的存在として知られています。このCDは他にもバーバーの楽曲がいくつか収録されていますが、その中でもお薦めが「思い出」と言う曲。ダンスホールでの男女の出会いを描いた計6曲からなる組曲で2分弱〜5分弱の小品ばかりですが、どれも軽妙洒脱でチャーミングな曲ばかり。特にお薦めが華やかな1曲目「ワルツ」とエキゾチックな香りのする5曲目「ためらいのタンゴ」、そして疾走感溢れる軽快な6曲目「ギャロップ」です。知名度は低いですがなかなかの名曲と思います。