本日はソニー・ロリンズの珍しいビッグバンド作品をご紹介します。原盤は「ソニー・ロリンズ・アンド・ザ・ビッグ・ブラス」と言い、MGM傘下のメトロジャズと言うマイナーレーベルからリリースされましたが、後にヴァーヴ・レコードが買い取り「ブラス・アンド・トリオ」の名でリイシューしました。その後CDで再発売されたのはヴァーヴ盤で、私の手元にあるのもそちらの方です。録音年月日は1958年7月。ロリンズが活動を休止し、3年間の充電期間に入る半年前の作品ですね。
さて、「ブラス・アンド・トリオ」の名前の通り、本作にはビッグバンド編成の4曲だけでなく、ピアノレスのトリオ編成の曲も4曲含まれています。ロリンズは前年1957年のコンテンポラリー盤「ウェイ・アウト・ウェスト」を皮切りに、ブルーノート盤「ア・ナイト・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード」、リヴァーサイド盤「フリーダム・スイート」とトリオ作品を立て続けに発表していた頃で、本作もその一環と言えます。トリオで相棒を務めるのはヘンリー・グライムス(ベース)とスペックス・ライト(ドラム)です。
一方、ビッグバンドの方はナット・アダレイ(コルネット)、クラーク・テリー、アーニー・ロイヤル、ルノー・ジョーンズ(トランペット)、ビリー・バイヤース、ジミー・クリーヴランド、フランク・リハック(トロンボーン)、ドン・バターフィールド(チューバ)の計8名から成るブラスセクションにベルギー出身のルネ・トマ(ギター)、ディック・カッツ(ピアノ)、ヘンリー・グライムス(ベース)、ロイ・ヘインズ(ドラム)が加わった布陣。アレンジを手掛けるのはベイシー楽団出身の黒人アレンジャー、アーニー・ウィルキンスです。
全8曲、前半4曲がビッグバンド、後半4曲がピアノレストリオです。オープニングトラックはジョージ・ガーシュウィンの”Who Cares”。アーニー・ウィルキンスのシャープなビッグバンドアレンジに乗ってロリンズがメロディアスなソロを展開します。途中で挟まれるルネ・トマとディック・カッツのソロも良いですね。続く”Love Is A Simple Thing”も歌モノでキャッチーな感じです。3曲目”Grand Street”はロリンズのオリジナルで、やや歌謡曲っぽい独特のメロディが印象的。後にデイヴ・ベイリーやシャーリー・スコットらもカバーした名曲です。この曲ではナット・アダレイのソロも聴けます。4曲目”Far Out East”はアーニー・ウィルキンスのオリジナルでこちらもホーンアレンジがカッコいいですね。
一方、ピアノレストリオの方は全て歌モノで”What’s My Name""If You Were The Only Girl In The World""Manhattan"と言った曲でロリンズが思う存分にソロを吹きまくります。ただ、個人的にはどうもピアノレス作品ってのは馴染めませんね。後年の「橋」あたりはギターが入っていてリズム楽器の役割を果たしているのですが、ベースとドラムだけではちょっと物足りない。ラストの”Body And Soul”に至っては無伴奏テナーソロで当時のロリンズの求道者的な一面が良く出ています。評論家によってはピアノレスこそロリンズの真骨頂と評価する人もいますが、そこは好みの問題でしょうか?私は断然ビッグバンドの方をおススメします。
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