本日はハンク・モブレーのプレスティッジ盤です。ハンク・モブレーと言えばキャリアを通じてブルーノートを中心に活動し、同レーベルに25枚ものリーダー作を残すまさに"顔"的存在でしたが、1956年の短期間だけプレスティッジに在籍し、本作を含め3枚のリーダー作(うち1枚はコルトレーンやアル&ズートとの共同名義による「テナー・コンクレイヴ」)を残しています。
さて、モブレーの初期のブルーノート作品は同じようなタイトルばかりと言うことは以前に「ハンク」のところで述べましたが、プレスティッジも似たようなもので本作は「モブレーズ・メッセージ」でその次の作品が「モブレーズ・セカンド・メッセージ」です。同じ年にサヴォイにも「ザ・ジャズ・メッセージ・オヴ・ハンク・モブレーVol.1」「ザ・ジャズ・メッセージ・オヴ・ハンク・モブレーVol.2」を吹き込んでいますので、もう何が何だかと言う感じです。本作はジャケットも意味不明(なぜに高圧電線?)ですし、もう少しタイトルやジャケットに工夫しろ!と当時のモブレーに説教したくなりますね。
ただ、内容は折り紙付きです。何せメンバーが素晴らしいです。2管のクインテット編成でフロントラインを組むのがドナルド・バード(トランペット)、リズムセクションがバリー・ハリス(ピアノ)、ダグ・ワトキンス(ベース)、アート・テイラー(ドラム)、さらに1曲だけジャッキー・マクリーンが加わるという豪華さ。ただ、今振り返れば凄いメンツでも録音時点(1956年7月)は全員が20代で若手主体のジャムセッション的なノリだったのでしょうね。
全6曲、うち3曲は偉大なバップの先人達に経緯を表した選曲です。1曲目がバド・パウエルの”Bouncin’ With Bud"、2曲目がセロニアス・モンクの"52nd Street Theme"、4曲目がチャーリー・パーカーの”Au Privave"。これらのバップの古典を題材に若き俊英達が生き生きとしたフレイを聴かせてくれます。いつもながら良く歌うモブレーのテナー、溌溂としたトランペットを響かせるバード、コロコロと玉を転がすようなタッチのバリー・ハリス、そして堅実にリズムを刻むワトキンス&テイラー。皆最高ですね。”Au Privave"では短いながらもマクリーンのアルトソロも聴くことができます。
モブレーのオリジナルによる2曲も悪くないです。3曲目”Minor Disturbance"はタイトル通りのマイナーキーのハードバップ、ラストの”Alternating Current"はアート・テイラーのドラミングに乗せられてバード→モブレー→ハリスの順でエネルギッシュなソロをリレーします。歌モノスタンダードは”Little Girl Blue"1曲のみですが、これがまた素晴らしいバラード演奏で、ここではモブレーがワンホーンで美しいテナーソロをじっくり聴かせてくれます。ブルーノートの諸作品の影に隠れがちですが、ハードバップ好きなら100%気に入ること間違いなしの名盤です。