ハードバピッシュ&アレグロな日々

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ドン・スリート/オール・メンバーズ

2024-12-04 18:50:36 | ジャズ(ハードバップ)

本日は幻の白人トランぺッター、ドン・スリートをご紹介します。生涯にリーダー作はたった1枚のみ、サイドマンもたった3枚しかない超寡作のジャズマンです。もともとインディアナ生まれで、西海岸のサンディエゴでトランぺッターとして腕を磨いたようですが、50年代のウェストコーストジャズ全盛期にはサイドマン含めて全く名前を見つけることはできません。50年代末に黒人ドラマーのレニー・マクブラウンのバンドに加わり、パシフィック・ジャズとリヴァーサイドに1枚ずつ作品を残しますが、ここでのプレイがリヴァーサイド社長オリン・キープニューズの目に留まったのか、翌1961年3月にリヴァーサイド傍系のジャズランドに吹き込んだのが本作「オール・メンバーズ」です。

ただ、このセッションのメンバーがなかなか凄いですよ。2管編成でフロントラインを組むのがテナーのジミー・ヒース、リズムセクションはウィントン・ケリー(ピアノ)、ロン・カーター(ベース)、ジミー・コブ(ドラム)とさすがはリヴァーサイドと唸りたくなるようなメンバーです。ジャケ写のスリートはちょっとジェイムズ・ディーンを思わせるような白人イケメンですが、内容的には上記のメンバーから想像できるようにかなり黒っぽいハードバップです。

全7曲、歌モノスタンダードが3曲、オリジナルが4曲という構成ですが、個人的にはオリジナルの方を推しますね。演奏自体には参加していませんがテナーのクリフ・ジョーダンが2曲を提供しており、うちオープニングトラックの"The Brooklyn Bridge"が出色の出来です。ファンキーなテーマ演奏の後、まずスリートがブリリアントなトランペットを響かせ、ヒース→ケリー→カーターのアルコ(弓弾き)ソロと続きます。スリートの自作曲"Fast Company"、ヒース作のタイトルトラック"All Members"も同じような熱血ハードバップ。ラストのジョーダン作"The Hearing"だけ少しモーダルな感じです。

一方、歌モノですがドリス・デイがヒットさせた"Secret Love"はミディアムテンポの小粋な演奏。スリート→ヒース→ケリーとメロディアスなソロをリレーしますが、後半に再度登場するスリートのソロはなかなかに奔放です。続く”Softly, As In A Morning Sunrise"も力強い硬派の演奏で、白人だからと言ってヤワな演奏はしないぞ!と言う決意のようなものが感じられます。唯一のバラード”But Beuatiful"で見せる端正なバラードプレイもなかなかのものです。

スリートのトランペットは技術的に申し分ない上にアドリブも力強く、ジャズトランペッターとして必要な全てを兼ね備えているように思えますが、結局スリート自身のドラッグ依存やジャズシーンの変化もあり、その後も活躍の機会は巡って来ませんでした。この後に残された録音は当ブログでも紹介したシェリー・マンの「マイ・フェア・レディ」のみです。何とももったいない話ですね・・・


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