ハードバピッシュ&アレグロな日々

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ジョニー・ハートマン/アイ・ジャスト・ドロップド・バイ・トゥ・セイ・ヘロー

2024-11-14 21:15:58 | ジャズ(ヴォーカル)

前回ご紹介したサラ・ヴォーンに代表されるように黒人女性ヴォーカルはビリー・ホリデイ、エラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーン、カーメン・マクレエ、ダイナ・ワシントン、ナンシー・ウィルソンと人気歌手がたくさんいます。ただ、これが黒人男性となると意外と人材が少ないですよね。一般的に有名なのはナット・キング・コールと本職はトランぺッターですがルイ・アームストロングぐらいでしょうか?

今日ご紹介するジョニー・ハートマンも決してメジャーとまでは行きませんが比較的名前は知られている方ですね。理由は何と言っても「ジョン・コルトレーン・アンド・ジョニー・ハートマン」の存在でしょう。黄金のコルトレーン・カルテットとハートマンの共演作で、前衛的な演奏の多いインパルス時代のコルトレーンの中では「バラード」と並んで比較的聴きやすい作品として昔からジャズファンの間で人気があります。今日取り上げる「アイ・ジャスト・ドロップド・バイ~」はコルトレーンとの共演の半年後の1963年10月に同じインパルスに残された1枚で、50年代のベツレヘム時代の作品群と合わせてハートマンの代表作に挙げられる1枚です。

メンバーはイリノイ・ジャケー(テナー)、ケニー・バレルまたはジム・ホール(ギター)、ハンク・ジョーンズ(ピアノ)、ミルト・ヒントン(ベース)、エルヴィン・ジョーンズ(ドラム)と言った顔ぶれ。基本的にはハートマンの声が主役で各楽器は脇役に徹していますが、イリノイ・ジャケーとハンク・ジョーンズが随所で短いソロを聴かせてくれます。

全11曲。基本的にはバラード中心の選曲です。"In The Wee Small Hours Of The Morning""Stairway To The Stars"と言った定番スタンダードもありますが、どちらかと言うとそれ以外の曲の方が良いですね。映画音楽の巨匠ヘンリー・マンシーニがオードリー・ヘプバーン主演の映画のために書き下ろした"Charade"、デューク・エリントンの隠れた名曲"Don't You Know I Care"の他、"If I'm Lucky""I Just Dropped By To Say Hello"と言ったあまり知られていないバラードをハートマンが独特のバリトンヴォイスで語りかけるようにじっくり歌い上げていきます。イリノイ・ジャケーのテナーも素晴らしく、随所で挟まれるソロ以外にも太い音色のオブリガートでバラードに彩りを加えます。ちょっと下世話なまでにムードたっぷりのテナーがハートマンの重低音ヴォイスとよく合いますね。

バラード以外は元々はシャンソンの”Kiss And Run”、ピアニストのロンネル・ブライト書き下ろしの”Don’t Call It Love"、ラストトラックの”How Sweet It Is To Be In Love”とこちらもマイナーな曲揃いですが、ミディアムテンポの曲をハートマンがスインギーに歌い上げます。これらの曲ではハンク・ジョーンズも軽やかなタッチのピアノソロを披露し、演奏を盛り上げます。以上、大人の男の色気がムンムン漂うヴォーカル作品です。


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