今年6月、JR東日本・五能線の新型車両導入計画が発表された時、男鹿線はどうなのかと疑問を呈した。
発表がないからには、そのまま車齢40年の車両を使い続けるのかとも思えたが、ネット上では別の新型車両が入るのではないかという、ウワサもあった。
ウワサは、2014年から栃木県の烏山線で既に走っている、蓄電池式の(バッテリーを積んだ)電車が男鹿線にも入るというもの。烏山線と男鹿線は、距離など路線の性格が似ていて導入しやすそうではあるが、電化方式が異なり(直流と交流)、男鹿線は寒冷地対策も必要で、烏山線のものをそのまま持ってくることはできない。でも、願望や期待をこめて、実現してもいいかもしれないと思っていた。
11月20日。JR東日本秋田支社(本社からの発表でないのは珍しい)から、「新たな「蓄電池車」を男鹿線に導入します」がプレスリリースされた。
ウワサが実現する!(ウワサというか、実際には関係者からの“リーク”に近いものがあったのかも)
21日付秋田魁新報 秋田市地域面でも、予想図入りで報道された。うまくまとまっていて、おかしな言い回しもない。
まず、「蓄電池車」の説明。
※一般に、鉄道車両全般を指す「列車」のニュアンスで「電車」と呼ぶことがありますが、ここでは狭義で用います。
電化された(線路の上に架線と呼ばれる電線が張られた)路線では、モーターで走る「電車」が走る。
男鹿線のような電化されていない(非電化)路線では、エンジンを積んだ「気動車」が走る。現代ではディーゼルカーが普通。
蓄電池車は、車両の中にバッテリーを積んで、その電力でモーターを回して走る。エンジンは積まない。分類としては「電車」(運転士も電車用の免許が必要とのこと)。【22日補足】蓄電池車は「電源を自ら持つ電車」であり、「電車なのに非電化路線を走行できる」乗り物。
リゾートしらかみのような「ハイブリッド気動車」や、五能線に入る「電気式気動車」は、モーターも使うがディーゼルエンジンも積んでいるので、気動車に分類される。
路線としての男鹿線は追分-男鹿。その列車は、電化された奥羽本線・秋田-追分間にも乗り入れる。
蓄電池車は、秋田(正確には車両基地からか)-追分は、パンタグラフで集電して走り(=従来の電車と同じ)ながら、同時に充電もして、追分-男鹿は充電した電気を使って走行。折り返しの男鹿駅には充電設備を設け、停車中に充電。その電力で追分まで戻る。
男鹿線の新車両は、
・「EV-E801系」という形式名。(烏山線はEV-E301系)
・2017年春に営業運転開始予定。(魁によれば2016年秋以降に試運転を行う)
→五能線の普通列車用新型車両よりも先。
・2両1組の1編成を導入。
→とりあえずは1本だけの導入。増備についての言及はなく、2017年に男鹿線全部が新型車両に置き換わるわけではない。
・1両につき片面に乗降ドアが3つあり、座席は窓を背にするロングシート。
→リリースでは、比較として現行車両のキハ48形のデータも掲出しているが、キハ48もロングシートになってしまっている。正しくは「セミクロスシート(一部車両はロングシート)」でしょう。(関連記事)
オールロングシートなのは予想し得た。男鹿線は、さして車窓が良いわけでもなく、通学や秋田市への用務で利用する客が多いから妥当なところでしょう。(観光客もたまに乗っているし、どうせならボックスシートがベターなんでしょうけど)
・トイレあり(2両とも)
→烏山線EV-E301系にはトイレはないのに。しかも、最近は特急でも水回りは2両に1か所とかに集約されているし、今は車椅子対応のでっかいスペースを取るトイレが設置されている。リリースによれば2両両方に設置されると読める。ホント?(定員は2名しか違わないからホントかも)
・最高運転速度は、電化区間110km/h、非電化区間85km/h。
→現行のキハ40系は95km/h。ただし、車両に関わらず線路側の制限速度が、奥羽本線95km/h、男鹿線85km/hなので、結局は現行と変わらない。ただ、加速性能は改善されると思われるので、わずかにスピードアップするかもしれない。なお、EV-E301系は100km/hで、烏山線は65km/hまでしか出せないので、男鹿線のほうが速そう。
・ボディは、キハ40系と同様の「裾絞り」と呼ばれる、座席部分の車体幅が若干広いタイプ。
→烏山線EV-E301系は、ストンとした箱型で裾絞りでない。
・外観の塗装は、片方は真っ赤、片方は真っ青。予想図には、EV-E301系と同じ愛称「ACCUM」ロゴや、現行のカラーイラストを黒地に白線でかいたナマハゲの顔らしきものも描かれる。
意外だったのは、予想した「烏山線のものを男鹿線仕様にする」のではなく、「JR九州で開発中のものを男鹿線仕様にする」こと。(魁はこの点に言及なし)
JR九州でも、同じコンセプトの車両を開発していて、2016年秋から営業運転予定。それを、積雪地・寒冷地向けにカスタマイズするという。(九州の電源は交流60ヘルツ、こちらは50ヘルツだからその対応も必要)
そう言われれば、デザインがどことなくJR九州っぽいような…(デザインに水戸岡氏が関わるのかな?)
JR九州の車両には、鉄道総合技術研究所が関わっていることもあるのだろうが、JRグループ間とはいえ遠く九州と共通する車両が東北を走るとは。国鉄時代は当たり前のことだったけど。
五能線などは公募調達だし、大手鉄道会社でも、すべて自前で開発・設計する時代ではなくなったのかもしれない。
烏山線のEV-E301系は、現在のところ1日3往復の運行(固定ダイヤだが、検査・故障時は従来車両が代走)。男鹿線でもそんなところか。キハ40系との併結はできなくてラッシュ時に2両だけの運用は無理だろうから、昼間を中心に。
ワンマン運転も対応しそう(烏山線は対応)。
魁の記事で秋田支社長が答えているように、今年3月に沿線にメガソーラーが稼働(追分駅近くの大清水信号場跡【29日補足・信号場の跡地そのものでなく、その近くの線路際にソーラーパネルが並んでいる】)している。さらに秋田運転支所跡地にもできる。
男鹿線を、二酸化炭素排出量が現行車両の4割(魁より)という蓄電池車が走る、環境に配慮した路線として特徴づけて行くようだ。
男鹿線は1913(大正2)年部分開業、1916年全線開業だから、101年目での画期的な車両投入。
男鹿線に新型車両が入るのは、およそ40年ぶり(キハ40系もだし、1994年まで一部使われていた50系客車以来)。
今はキハ40系ばかりの男鹿線に、それ以外の営業用車両が入るのもかなり久々だろう。(リゾートしらかみ用が入ったことはあったが、あれは形式はキハ40系。貨物列車は2001年までだし、その頃までは急行「よねしろ」用キハ58系が普通列車に入ることがあったはず)
「(狭義の)電車が走る」といえば「架線を張って電化する工事が必須」であり、男鹿線でそんなことはどちらも未来永劫ないと思っていた。
ところが、「電池を積んだ電車」を走らせることによって電化同然の状態にして電車を走らせるとは、コロンブスの卵的な発想だ。
長距離とか急勾配のある路線では、充電が持たなくて難しいけれど、今後はこういう路線が増えていくのかもしれない。
※完成した実車はこちら。
発表がないからには、そのまま車齢40年の車両を使い続けるのかとも思えたが、ネット上では別の新型車両が入るのではないかという、ウワサもあった。
ウワサは、2014年から栃木県の烏山線で既に走っている、蓄電池式の(バッテリーを積んだ)電車が男鹿線にも入るというもの。烏山線と男鹿線は、距離など路線の性格が似ていて導入しやすそうではあるが、電化方式が異なり(直流と交流)、男鹿線は寒冷地対策も必要で、烏山線のものをそのまま持ってくることはできない。でも、願望や期待をこめて、実現してもいいかもしれないと思っていた。
11月20日。JR東日本秋田支社(本社からの発表でないのは珍しい)から、「新たな「蓄電池車」を男鹿線に導入します」がプレスリリースされた。
ウワサが実現する!(ウワサというか、実際には関係者からの“リーク”に近いものがあったのかも)
21日付秋田魁新報 秋田市地域面でも、予想図入りで報道された。うまくまとまっていて、おかしな言い回しもない。
まず、「蓄電池車」の説明。
※一般に、鉄道車両全般を指す「列車」のニュアンスで「電車」と呼ぶことがありますが、ここでは狭義で用います。
電化された(線路の上に架線と呼ばれる電線が張られた)路線では、モーターで走る「電車」が走る。
男鹿線のような電化されていない(非電化)路線では、エンジンを積んだ「気動車」が走る。現代ではディーゼルカーが普通。
蓄電池車は、車両の中にバッテリーを積んで、その電力でモーターを回して走る。エンジンは積まない。分類としては「電車」(運転士も電車用の免許が必要とのこと)。【22日補足】蓄電池車は「電源を自ら持つ電車」であり、「電車なのに非電化路線を走行できる」乗り物。
リゾートしらかみのような「ハイブリッド気動車」や、五能線に入る「電気式気動車」は、モーターも使うがディーゼルエンジンも積んでいるので、気動車に分類される。
路線としての男鹿線は追分-男鹿。その列車は、電化された奥羽本線・秋田-追分間にも乗り入れる。
蓄電池車は、秋田(正確には車両基地からか)-追分は、パンタグラフで集電して走り(=従来の電車と同じ)ながら、同時に充電もして、追分-男鹿は充電した電気を使って走行。折り返しの男鹿駅には充電設備を設け、停車中に充電。その電力で追分まで戻る。
男鹿線の新車両は、
・「EV-E801系」という形式名。(烏山線はEV-E301系)
・2017年春に営業運転開始予定。(魁によれば2016年秋以降に試運転を行う)
→五能線の普通列車用新型車両よりも先。
・2両1組の1編成を導入。
→とりあえずは1本だけの導入。増備についての言及はなく、2017年に男鹿線全部が新型車両に置き換わるわけではない。
・1両につき片面に乗降ドアが3つあり、座席は窓を背にするロングシート。
→リリースでは、比較として現行車両のキハ48形のデータも掲出しているが、キハ48もロングシートになってしまっている。正しくは「セミクロスシート(一部車両はロングシート)」でしょう。(関連記事)
オールロングシートなのは予想し得た。男鹿線は、さして車窓が良いわけでもなく、通学や秋田市への用務で利用する客が多いから妥当なところでしょう。(観光客もたまに乗っているし、どうせならボックスシートがベターなんでしょうけど)
・トイレあり(2両とも)
→烏山線EV-E301系にはトイレはないのに。しかも、最近は特急でも水回りは2両に1か所とかに集約されているし、今は車椅子対応のでっかいスペースを取るトイレが設置されている。リリースによれば2両両方に設置されると読める。ホント?(定員は2名しか違わないからホントかも)
・最高運転速度は、電化区間110km/h、非電化区間85km/h。
→現行のキハ40系は95km/h。ただし、車両に関わらず線路側の制限速度が、奥羽本線95km/h、男鹿線85km/hなので、結局は現行と変わらない。ただ、加速性能は改善されると思われるので、わずかにスピードアップするかもしれない。なお、EV-E301系は100km/hで、烏山線は65km/hまでしか出せないので、男鹿線のほうが速そう。
・ボディは、キハ40系と同様の「裾絞り」と呼ばれる、座席部分の車体幅が若干広いタイプ。
→烏山線EV-E301系は、ストンとした箱型で裾絞りでない。
・外観の塗装は、片方は真っ赤、片方は真っ青。予想図には、EV-E301系と同じ愛称「ACCUM」ロゴや、現行のカラーイラストを黒地に白線でかいたナマハゲの顔らしきものも描かれる。
意外だったのは、予想した「烏山線のものを男鹿線仕様にする」のではなく、「JR九州で開発中のものを男鹿線仕様にする」こと。(魁はこの点に言及なし)
JR九州でも、同じコンセプトの車両を開発していて、2016年秋から営業運転予定。それを、積雪地・寒冷地向けにカスタマイズするという。(九州の電源は交流60ヘルツ、こちらは50ヘルツだからその対応も必要)
そう言われれば、デザインがどことなくJR九州っぽいような…(デザインに水戸岡氏が関わるのかな?)
JR九州の車両には、鉄道総合技術研究所が関わっていることもあるのだろうが、JRグループ間とはいえ遠く九州と共通する車両が東北を走るとは。国鉄時代は当たり前のことだったけど。
五能線などは公募調達だし、大手鉄道会社でも、すべて自前で開発・設計する時代ではなくなったのかもしれない。
烏山線のEV-E301系は、現在のところ1日3往復の運行(固定ダイヤだが、検査・故障時は従来車両が代走)。男鹿線でもそんなところか。キハ40系との併結はできなくてラッシュ時に2両だけの運用は無理だろうから、昼間を中心に。
ワンマン運転も対応しそう(烏山線は対応)。
魁の記事で秋田支社長が答えているように、今年3月に沿線にメガソーラーが稼働(追分駅近くの大清水信号場跡【29日補足・信号場の跡地そのものでなく、その近くの線路際にソーラーパネルが並んでいる】)している。さらに秋田運転支所跡地にもできる。
男鹿線を、二酸化炭素排出量が現行車両の4割(魁より)という蓄電池車が走る、環境に配慮した路線として特徴づけて行くようだ。
男鹿線は1913(大正2)年部分開業、1916年全線開業だから、101年目での画期的な車両投入。
男鹿線に新型車両が入るのは、およそ40年ぶり(キハ40系もだし、1994年まで一部使われていた50系客車以来)。
今はキハ40系ばかりの男鹿線に、それ以外の営業用車両が入るのもかなり久々だろう。(リゾートしらかみ用が入ったことはあったが、あれは形式はキハ40系。貨物列車は2001年までだし、その頃までは急行「よねしろ」用キハ58系が普通列車に入ることがあったはず)
「(狭義の)電車が走る」といえば「架線を張って電化する工事が必須」であり、男鹿線でそんなことはどちらも未来永劫ないと思っていた。
ところが、「電池を積んだ電車」を走らせることによって電化同然の状態にして電車を走らせるとは、コロンブスの卵的な発想だ。
長距離とか急勾配のある路線では、充電が持たなくて難しいけれど、今後はこういう路線が増えていくのかもしれない。
※完成した実車はこちら。