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雄和線と切上経由廃止

2019-05-14 23:45:13 | 秋田の地理
2019年春に、秋田市内の秋田中央交通の路線バスで小規模なダイヤ改正が実施された。
秋田市中央部(秋田駅発着)に関係するものとしては、大住・みなみ野団地線の短縮・減便と雄和線の廃止。
旧市営バスエリアに思い入れのある者としては、そうでない雄和線には興味がほとんどない(ついでに内容に自信もない)のだが、ネット上の情報も少なく、ただ消滅してしまうのはもったいないので、仁井田地区を中心に記録しておきたい。

雄和線は、秋田駅西口と旧雄和町役場である秋田市雄和市民サービスセンターの間を、南通築地(秋田南中前~築山小横)・愛宕下橋・牛島東五丁目(牛島旧道)・大野口(国道13号)・切上(仁井田旧道)・四ツ小屋駅前経由で結んでいた。
運行開始は2011年7月で、その前年に開通した愛宕下橋周辺の道路を通る、初の路線であった。

しかし、秋田駅と雄和を結ぶバス路線の歴史は、ずっと以前からある。
1990年代までは、有楽町・牛島(旧道・牛島橋)経由で雄和町役場よりさらに先の集落まで行く系統が複数・それなりの便数あり、空港リムジンバスでない秋田空港行きなんてのもあった。
2000年に、雄和町内のバス路線が再編され、秋田駅発を雄和町役場止まり(牛島・切上・四ツ小屋経由。日赤病院に寄る系統もあったそうだ)とし、雄和町内で100円循環バス「ユーグル」が運行された(中央交通へ委託)。2005年の雄和町の秋田市合併後も、運行継続。
(再掲)牛島経由雄和町役場行きの表示
2009年9月にさらに路線再編。ユーグルも秋田駅発着便も廃止され、秋田市によるマイタウンバス(日赤病院、イオンモール、四ツ小屋駅前で接続)を運行。

その後、2年少しの空白をはさんで、愛宕下橋経由で秋田駅と雄和を結ぶ路線が復活したものの、それも8年持たなかった。
再び秋田駅と雄和を直通する路線バス(空港リムジンは除く)がなくなる。利用が少なく、人口が減っているとはいえ、鉄道がない雄和地区。合併で同じ秋田市内になったのに、こうなるとは皮肉なもの。


さて、愛宕下橋経由雄和線の運行開始当初は、平日下り4本・上り5本、土日祝日は上下3本ずつ運行されていた。例に漏れず徐々に減便が進み、2014年11月に土日が廃止(平日のみ運行)。
廃止時点では、秋田駅発は11時40分の1本だけ。雄和発(時刻の記録を忘れました)は、7時台・9時台・13時台の3本。

秋田営業所の担当で中型バスが使われていたが、2018年2月頃からは小型バス(日野リエッセ)も走るようになった。
小型バス限定路線だった築地・才八橋経由が減便(2018年秋に全廃)される中で、小型車の有効活用と、それで間に合うほど客が少なかったからだろう。
小型バスが充当された雄和市民サービスセンター行き
末期は、小型車が東口待機~回送→西口11時40分→雄和→西口→(県庁経由?)車庫と運用されることが多かったようだ。
秋田市内の路線だから雄和線にも系統番号が付与され、中型車なら「580」と表示されていた。LEDでない小型車では番号は表示されず、そもそも「雄和」のコマもセットされていないので、白幕+パソコン作成の「愛宕下橋 雄和市民SC」の紙を掲出していた。(上りは「秋田駅」の幕はセットされているはずだが、「愛宕下橋 秋田駅西口」だったかの紙を出していた)
経由地を青文字にしただけ気が利いているが、系統番号も入れればいいのに。五城目営業所はそうやっているのだし…


雄和線廃止で代替路線が設定されたのは、西口~二ツ屋上丁(下り)/牛島東五丁目(上り)の区間。「二ツ屋福島線(築山小学校経由)」を新設。
元は市営バス路線で、有楽町・牛島旧道経由で運行されている二ツ屋福島線(570系統)に、愛宕下橋経由の573系統を増設した形。
※571系統は欠番(駅経由車庫行きを想定?【31日訂正】コメントの通り、571系統は2014年で廃止(休止?)された、旧道・二ツ屋下丁経由南高校発着系統だった。)、572系統は駅を通らない直通・県庁経由車庫。
【6月2日補足】系統番号の付与方法のほか、公式サイトの路線別時刻検索で573系統が従来の「二ツ屋福島線」に含められていることからしても、「新路線」ではなく「新系統(路線の下位区分)」の位置づけになろう。

以前取り上げたように、この路線は、末端部が片方向に環状運行し、往路の最後と復路の最初が重複している。秋田駅発はなんぴあ別館前(旧南部公民館前)が終点で、秋田駅行きはそれより手前の二ツ屋中丁が始発の扱い。新系統も同じようだ。
【26日補足】牛島経由570系統の車両の行き先表示は「福島下丁」行きと、環状区間の途中バス停名を表示している(二ツ屋中丁→福島下丁→なんぴあ別館前の順)。市営バス時代からの慣習で、沿線の人には分かりやすいかもしれないが、「行き先」表示の基本からは逸脱している。だったら「旭野団地」「みなみ野団地」「桜ガ丘」もそうすればいいのに。

二ツ屋線は、雄和線に比べると短距離路線だし、近年は減便傾向(牛島経由駅発着は平日のみ5往復)なのに、それが増えるとは意外。
といっても、新系統は1往復だけ(もちろん平日のみ)で、秋田駅西口9時40分→二ツ屋中丁9時50分→秋田駅西口10時08分。時間的には、雄和線の上り2便に近いが、下りは2時間も早くなった。
近くを牛島経由が走る場所で、しかも短時間に行って戻って1本だけのバスなんて需要はほとんどないのではないか。

ここで邪推させてもらう。
中央交通の既存の牛島経由各系統のうち、いちばん短距離&短時間で駅から行き来できるのが、二ツ屋線。しかも、往路と復路が一体化しており、時刻表上30分で駅に戻ることが可能で、乗務員と車両の拘束も少なくて済む。
いったん設定してしまった「愛宕下橋経由」の系統をとりあえず残すために、いちばんお手軽な経路である二ツ屋線で1本だけ走らせ、愛宕下橋経由を「形だけ存続」させているのではないだろうか。
首都圏などでは、廃止して運行再開の手続きすることを嫌って、あるいは廃止後にライバル社に侵略されないように、ごくわずかな本数だけ運行し続ける「免許維持路線」と通称されるバス路線があるそうだ。愛宕下橋経由二ツ屋線も、それに近いものがあるような気がする。
秋田の場合、「地域公共交通協議会」に対するタテマエ、あるいは同協議会ぐるみの地域へ対するタテマエみたいなもの、かどうかは分からないけど…なんかそんなような…
以上、邪推。

これにより、愛宕下橋を渡る路線はなんとか維持、築地の南中前を通るのはこの路線と、平日朝片道1本の楢山大回り線だけになってしまった。
なお、愛宕下橋の牛島側では、南大通り・有楽町・牛島橋・城南中学校経由日赤病院線のルートと重なっており、逆向きで少し本数(平日3往復)は増える。
2022年9月で愛宕下橋経由二ツ屋線は廃止。愛宕下橋を渡るバスは11年でなくなってしまった。】


代替路線がない二ツ屋上丁から先について。
牛島旧道経由の他系統と同じ道で、二ツ屋下丁の三叉路で国道13号へ出て、大野口。
現在の主要系統である、御野場団地線や仁井田御所野線(ニュータウン御野場経由)は、大野口から先も、しばらく国道を進む(下の地図参照)。
雄和線は、大野口の次の三叉路で再び旧道へ分かれる。
地理院地図に加筆。緑線が雄和線、赤茶色線が御野場・御所野方面各路線
バス停順は、切上-仁井田-仁井田本町四丁目-目長田入口-仁井田横町-中野-四ツ小屋小学校入口-四ツ小屋駅前-(以降略)。
仁井田の集落内を進み、「四ツ小屋入口」交差点で国道13号を横断して、御野場団地を横目に、四ツ小屋の集落内を抜ける。大きい県道はごく一部で通るだけで、ほぼ狭い旧道。

この区間は雄和線単独だったので、廃止・代替なしにより、これらの停留所も廃止。
ただし、四ツ小屋駅前のバス停だけは、国際教養大学-イオンモール秋田の路線が延長されて四ツ小屋駅前発着になったため存続。
また、仁井田横町は、国道側に片道だけ、御所野発直通車庫行き用の同名バス停があるので、名称としては存続。

この切上~仁井田横町~四ツ小屋のルートは、近年はめっきり本数が少なくなっていたが、昔は、中央交通の複数の路線が通っていた。
2014年春まではイオンモールまで行く系統もあったが、これは以前の雄和線の廃止代替路線。以前の雄和線が走っていた10年ほど前は、2時間に1本かそれ以上は通っていた。

国道より南側の御野場側は(昭和末の)新興住宅地で、市営バスも路線を持っていたのに対し、北側の旧道は古くから家があり、市営バス移管以前から中央交通が幅を利かせていたようだ。
こちら側こそが、仁井田のバス路線網の原点なのだろうが、それが消滅した。

廃止直前に、切上から目長田入口だけであるが、ルートをたどってみた。
切上の三叉路から四ツ小屋入口交差点までの距離を測ると、旧道経由でも13号線経由でも、約1.5キロでほぼ同じ。
地図の通りバス停は旧道に5つ、13号線に4つ(御野場団地入口も含めて)。13号線はほぼ等間隔なのに対し、旧道はまちまち。
大野口側から切上の三叉路方向
ここで分岐して左へ。ちなみにこの三叉路は少し不思議な構造で、かつて市営バスがその恩恵を受けていた。いずれまた。
旧道に入ってすぐは、センターラインはないが片側に歩道がある。
三叉路分岐から350メートル、大野口から550メートルほど進んで、最初のバス停「切上」。
国道側では大野口から350メートルほどで「上新田」なので、旧道のほうがバス停間隔が長い。
ポールは片側だけ
昔の弘南バスではよくあって、秋田でもまれにある「両方向運行なのにポールは片側にしかない」設置。
歩道がない側に置かれているが、これは乗車客が多い上り側だからだろう。
時刻表は上下がまとまって掲出
ポールは、中央交通生え抜きバス停ならではの「バスで行こう」タイプ。
バス停名が手書きで、「次は」欄もあるのは標準的だが、パイプが白っぽく塗装されていたような痕跡があるのは珍しい。
両面とも「次は大野口」で上り側向け表示

すぐにちょっと複雑な交差点を左折してしばらく直進。切上から400メートルで「仁井田」。
両側にポール

下り側
それにしても「仁井田」とはなんと大雑把なバス停名か。【21日補足・「大字」レベルや小学校の「学区」に相当する広範囲な地名であり、その地域内にバス停はたくさん存在する】
秋田市内では旧国道に「八橋」というバス停もあるが、それは元市営バスの通町経由将軍野線用。
昔は、ここが仁井田の中心地で、仁井田を代表する場所だったのだろう。
今となっては、「仁井田御所野線(13号線・ニュータウン御野場経由のこと)」はここを通らないなど、まぎらわしいけど、問題になるほどメジャーなバス停でもなかった。

下り側ポールは、パイプが着色されていない、最も典型的なバスで行こうタイプ。「次は」は空欄だけど。一方、
上り側
基本的には同じだが、バス停名部分が黄色地に、パソコンの角ゴシック体の黒文字で表示されている。
他では見たことがない、としたいところだが、市営バスタイプの円形表示板の中央部と同じ色だ。【21日補足・他路線での市営バスから路線移管が始まったより後の時期に、この仁井田バス停の表示板が破損するなどしたため】市営バスタイプ用の表示と一緒に作成したか、間違って作ってしまったのではないだろうか。
この「仁井田」のポールは、
台座が地面に埋もれている?
かなり長い間、ここに置かれていたポールのようだ。撤去が大変そう。

その先で右折。歩道もないさらに狭い道になる。中型バスでは苦労したかも。わずか150メートルほどで「仁井田本町四丁目」。
ここも上り側のみにポール
「仁井田」と打って変わって具体的な名称。住居表示が実施される以前はどうだったのか気になるが、もしかしたら、昔はバス停そのものがなかったのかもしれない。
この近くに、集会所、土地改良区、小学校などが集まっていて、こここそがかつての仁井田村の中心地だったはず。ここが「仁井田」バス停であってもよさそうだから、後で増設されたのかも。
しかも表示板は、
カッティングシート文字(スーラか?)&ローマ字併記
活字・ローマ字入り表示板はまれにある(小中島入口)が、ここは社章と「バスで行こう」のスペースが空白になっていて、間が抜けて見える。


また左折して、同じような細い道へ。普通乗用車どうしでもすれ違いに気を遣う。
150メートルで「目長田入口」。駐車車両がいて撮影できなかったけど、両側に、バスで行こう標準仕様のポールあり。
上り側

下り側表示板。上下裏表とも筆跡は酷似

2009年までは「目長田団地行き」というのも運行されていたそうで、おそらくここから分岐して、国道へ出ずに仁井田目長田へ入っていったのだろうか。
(再掲)

雄和線はこの先で右折。くねっとしたカーブを抜けて350メートルほどで「仁井田横町」、そして四ツ小屋入口交差点。
Googleストリートビューによれば、仁井田横町は上り側のみにポール設置。バス停名はローマ字表記はないが、活字っぽくも見えた。

なかなかおもしろいけれど、運行は大変そうなルートだと感じた。
雄和線自体とは別に、谷内佐渡や神田などと同じく、旧道からバイパスへの経路変更の一環の意味合いもあって、この区間は廃止・代替なしとされたのかもしれない。
以上、仁井田の中を路線バスが走り抜けていた記録です。

※雄和線の終点、雄和市民サービスセンターのバス停表示板は、2021年に転用された
コメント (11)
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