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旭川ダム緊急放流

2023-07-15 23:40:43 | 秋田の季節・風景
秋田市とその北側(男鹿、五城目など)を中心とした秋田県では、2023年7月14日夜から記録的な大雨になっている。梅雨前線の停滞によるもので、線状降水帯は発生していないようだが、秋田市などでは観測史上最高の24時間降水量を記録。

秋田市街地では、バケツをひっくり返したような、というよりは、しとしと多めの雨が絶え間なく降り続ける感じだろうか。気が付けば、たくさん降っていたというような。
その結果、太平川の氾濫、添川の土砂崩れ、さらに道路冠水が相次いでいる。
報道で見た限りでは、大住、旭川地区(新藤田郵便局前)、広面~東通一帯のほか、秋田駅東口ロータリーや、西口の北側・明田地下道西交差点(アンダーパス部だけでなく交差点も)も冠水。NHK秋田放送局のリモコンカメラ(アルヴェに設置)から見下ろす、東通仲町などの住宅地が、車のタイヤが隠れるほど水浸しなのは衝撃的。リニューアルオープンしたばかりのイオンスタイル広面も、臨時休業してしまってお気の毒。

そんな中、駅西側の市中央部・市中心部、古くからの市街地のエリアでは、目立った被害はなさそう。たいへん幸運なことで、感謝しなければならない。
その中央部を南北に貫いて流れるのが、旭川(あさひかわ)。太平川と同じくらいの規模で、いずれも太平山を水源とする雄物川の支流であるが、太平川のように氾濫することはまずない。旭川では、氾濫注意水位に達することはあっても、避難判断水位・氾濫危険水位を超えずにキープすることが多い(2017年の例)。川の線形や、対策工事の違いもあるとは思うが、旭川には「旭川ダム」があって、市街地へ流れる水量を調節してくれているのが、大きな原因なのだと思う。

今回も、旭川ダムはがんばってくれたようだが、下流の水位はどんどん増え続け、氾濫危険水位を越えてしまった。
旭川と旭川ダムを管理する秋田県は、旭川ダムの緊急放流を決定。
15時過ぎ辺りの時点で、緊急放流の可能性があることがNHK総合の字幕で伝えられた。実際に放流が始まったのは17時22分。

旭川ダムの緊急放流は初めてとのこと。
秋田魁新報など他のマスコミのサイトや、NHKの全国ニュースでも伝えられ、氾濫のおそれがあるので、流域では安全確保するよう呼びかけられた。

我が家は、旭川から遠くなく、ハザードマップでは0.5~3.0メートル浸水するエリアになっている。ただ標高は、川岸よりいくらか高く、年寄りは、ここは水が上がったことはないと言う。
それに、昔は、下流に緊急放流警告のサイレンや説明板があった(盛岡市中津川の例)が、今はなくなった。これは、ダムの性能が向上して、緊急放流しても下流部には影響がなくなったため、ということらしかった。
だから安心しきっていたが、これは心配になった。

まずは、国交省や県のサイトで、ダムの現状と下流の水位を見守ろうと確認。【以下のデータは停電や落雷により、正しいデータでなかったことが発表された。末尾の17日付追記参照】


秋田県 河川砂防サイトより10分ごとの旭川ダムのデータ
緊急放流すれば、「放流量(国のサイトでは全放流量)」が増えるのだと、素人には思われる。
緊急放流開始直前に、60立方メートル/秒台だったのが、放流開始後は70~80になって、たしかに増えている。
それも、18時50分頃には60程度に戻った。緊急放流が終わったのかと思ったが、その時点では、マスコミではまだ放流中かのような報道【末尾追記の通り、緊急放流は翌日まで続いた】。

そして19時50分から20時40分にかけては、なぜかデータがない。国交省のサイトでは「閉局」と表示されていた。
復活した20時50分には、ダムの水位が上がり、放流量も95立方メートル/秒に増えていた。
どういうことなのだろう。緊急放流といっても、一気に全部放出するのではなく、様子を見ながら少しずつ放流するのだろうか。
【16日追記・緊急放流の定義について】そもそも「緊急放流」とは何か。ダムがあふれそうな時に、大量放出することだと思っていたが、そうではないらしい(それ以前に緊急放流は正式な用語ではないそうだが)。ダムがあふれそうな時に、流入量と同量相当を放流することだそう。それを踏まえれば、緊急放流開始時にどばっと出なかったのも分からなくはないけれど、それでもなお、流入量に対して放流量が少なすぎるという疑問は残る。(以上追記)


緊急放流で、実際に下流の水量は増えたのか。
保戸野通町の保戸野川反橋たもとにあるのに、なぜかその名前の「中島(指定)」観測所のデータ。
国土交通省 川の防災情報サイトより
グラフ中の赤紫の太い線が水位。緊急放流前後とも、4.0メートル前後で微増微減を繰り返している。緊急放流による水位への影響はほぼないといえるだろう。降雨量が落ち着いたことも一因かもしれないが。
【16日追記・旭川沿い、川反の対岸の土手長町通り~有楽町付近でも、冠水や柵(というか護岸?)護岸(県道歩道部分)の崩壊があった模様。旭川の増水(緊急放流かどうかに関わらず)によるものなのかもしれないが、東方向・太平川→明田地下道→南大通りから来た水の影響なのかもしれない。】
【16日追記・中島(指定)観測所の水位は、16日朝には、氾濫注意水位を下回る3メートル程度まで下がった。】

これで、緊急放流しても旭川は大丈夫なんだと、安心できるのだろうか? そうでなく、たまたま今回はこれで済んでいるのかもしれない。【16日補足・ハザードマップで浸水が想定されている以上、そうなる可能性はあるわけで、やはりたまたまだろう。】
我々住民が、身近なはずの旭川に対して、日頃いかに無関心であったかを思い知らねばならない。

ところで、国交省 川の防災情報サイトには「ダム放流通知」というタブがある。緊急放流すればここに掲載されそうなものだが、未掲載。
15日18時45分のキャプチャを一部加工
佐竹知事が記者会見はしていたが、そのほか県の河川砂防サイト、県庁の美の国あきたネットには、旭川緊急放流中の旨の告知は見当たらなかった。
直接関係はないが、秋田市役所のサイトでも同様だし、秋田市には防災行政無線もない。
イーロン・マスク氏のやりたい放題により、6月末頃から、未ログインでツイッターが閲覧できなくなっているのも、こういう時には困る。この点は、以前から、広く情報を伝えるべき組織(役所や公共性の高い事業を行う企業)が、1社によるネットサービスに依存しすぎるべきではないと考えていたけれど。

今回は、マスコミの報道が役に立った。
裏を返せば、ラジオ・テレビに接しない人は、緊急放流を知らなかったかもしれない。万一、氾濫してしまったら、予告なしに氾濫したも同然の事態になっただろう。
秋田市は、大雪以外は大きな自然災害は起こりにくい、安全な土地だと思っている。それが魅力の1つなのだが、それで何もしないのでは、何かあった時大変になる。行政だけでなく市民一人ひとりも、もっともっと意識を高めないといけないと感じている。

14日からの大雨は、ピークは越えたようだ。しかし、この後、火曜日くらいまではまだ降る予報で、気が抜けない。
【16日追記】16日午前時点では、いくぶん水は引いたが、まだ冠水したままの道路もあり、JR運転見合わせ、路線バス運休・迂回、店舗休業(イオンスタイル広面のほか、イオン秋田中央店、イオンスタイル茨島、コープあきた茨島店など)が続いている。
南通の中通総合病院は浸水のため救急を含む新規受付等を停止、広面の秋田大学医学部附属病院は病院前の道路浸水(院内は被害なし)のため救急受け入れを停止。
マックスバリュ泉店は、パンや弁当が品薄傾向で、来店客は通常並みか。極端な品不足はなさそう。車の通行量は、若干少ないかも。
旭川ダムの緊急放流は、16日10時02分で終了したとのことだが、県の周知もなく、NHK以外では報道もなさそう。放流量は16日午前1時には263.26立方メートル/秒に達していた。終了時点では65立方メートル/秒前後まで減り、その後16日夕方は63立方メートル/秒程度とさほど減っていない。

【17日追記・県の説明】17日に秋田県河川砂防サイトに「お知らせ」が掲載。全文を転載。
「・旭川ダムの緊急放流(異常洪水時防災操作)について
 7月15日17:22から7月16日10:02の期間において緊急放流(異常洪水時防災操作)を実施しましたが、15日10:43から発生した停電及びダム周辺への落雷の影響により、15日10:50から16日10:00の期間については、正しいデータの配信ができなかったことをお知らせします。
 なお、緊急放流(異常洪水時防災操作)は、旭川ダム管理事務所において職員の目視及びダム制御装置の状況確認により実施しました。」
とのことで、データが異常であったようだ。納得はしたが、この調子では今後が少し不安。

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コメント (19)
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