寒くなって雪が積もった今週、身内の年寄りが「もうヤマノカミサンだものな」と言った。
ヤマノカミサン→山の神さん→「山の神様」と想像が付くものの、何だろう? 昔から何度か聞いたことがあった言葉だけど、聞き流してしまっていて、今回も聞き流しかけた。
その直後、地元スーパー・いとく新国道店へ行くと、パン・生もの菓子売り場に、見慣れぬ商品があった。タカヤナギグランマートにもあったか。イオン系列にはなし。
それは、秋田で親しまれる餅菓子「おやき」。信州のおやきとは異なり、米の粉で作る。青森県津軽では同じものを「しとぎ餅(粢餅)」と呼ぶ(おやきと呼ぶ所もあるようだが、津軽でおやきとといえば、大判焼きを指すのが一般的)。また、青森県内でも南部(八戸など県東側)の「しとぎ」は豆で作る別物。
おやき自体は、1個~数個入りのものが、スーパーでもわりと売られている。ヤマザキ系列の地元企業・たけや製パンでも製造。
今回見たおやきは、たけやのものなのだが、たまに見かけるバラ売りではなく、複数個入り。※以下、商品の描写は店頭でちらりと見ただけなので、うろ覚えです。
たしか6個だったと思うが大量のおやきが、生のサンマを入れるような細長い発泡スチロールトレイに入っていた。白いものと、ヨモギ入りと思われる緑色のもの(おやきとしてはわりと珍しい)の2種。おやきの表面には焼き目というか焦げが少々入るのが普通だが、本品は焼印で押したかのような、均一で濃いめの焦げ(たけやのバラ売りおやきはそうではない)。
パッケージ代わりのシールは、「おやき」と大きく書かれていたはずだが、別に小さく表記があった。
「山の神」と。
山の神って山の神さん? それとおやきが関係あるの?
調べた。※詳しくは「山の神」「山の神の日 秋田」等で検索してください。
山の神とは「山に宿る神の総称」。猟師や林業などに関わる人の守護神。女神とされる。箱根駅伝の山の神は、これから着想を得たのかもしれないが、言葉(文字)以外には一切関係がないことになろう。
その神が、山の木の本数を数える日があり、その日は人間は山仕事をせず、山に入らず、祭礼や宴会をするならわしが、全国各地にある。それが「山の神の日/山の神様の日」。
日付は地域によって異なるが、東北地方では12月12日が基本で、林業業界を中心に今も受け継がれていて、酒や食べ物を供えるなどする。「山の神の年取り」と呼ぶ所もある。
農林水産省ホームページ「うちの郷土料理」秋田県 おやきには「毎年12月12日に山の神に供えてきたとも伝えられ、県南地域では今でもこの時期におやきを焼いて食べるのが習わしとなっている。」とある。なお、別に、五城目町の朝市、おやつ、祝い事、春彼岸の中日にも食べたり供えたりする記述がある。
2016年で更新を終えた「男鹿市観光商工課 公式ブログ 男鹿ブロ」に2012年12月12日付「12月12日は山の神(やまのがみ)(a href="http://ogablo.jp/2012/12/120830.php)」があった。
まず、男鹿では「やまのがみ」と濁るようだ。
「各家々で おやきを作って仏壇や神棚に お供えし、その後で家族でも 美味しくいただくのが昔からの習慣です。」そうで、旧・若美町払戸の「ふっと観光案内所」の産直「みどりの会 農産物直売所」では、大量にバラ売りされていた。
さらに2015年2月16日付「男鹿総合観光案内所ミニイベント「おやき餅を作ろう!」(http://ogablo.jp/2015/02/160830.php)」。船越の男鹿総合観光案内所で、同年2月21日に行われた体験イベントの告知。「男鹿には、12月12日あるいは1月12日の「山の神の日」におやきをつくって食べるという風習が残っています。」「本格的なお家だと、神棚を飾ったり、のぼり旗を立てたりもするそうなのですが・・・?」
県南でなく県中央部でも、おやきの風習が今(10年前)もあるのだった。男鹿で山に関わる人は多くはなさそうだし、神棚でなく仏壇に供えるといった点では、本来とは少し違う趣旨になっていそうだが、広く親しまれる風習であることを意味しているだろう。
県南・大仙市の鈴木酒造店の「酒蔵日記」2015年12月21日付「山の神の日(https://www.hideyoshi.co.jp/sake/2015/12/21/2694/)」では、「うちの会社ではお餅を12個、山の神様にお供えします。」。
杵と臼で付いた白い餅を、雪見だいふくくらいのサイズにしてお盆に並べて、ろうそくととっくりとともに和室の机の上に置いた(上に神棚がある?)写真も掲載。
餅やおやきは別として、秋田県内では建設会社や曲げわっぱメーカーでも、広い意味で山や木に関わるためであろう、山の神の日に行事を行うところがあった。
ここで青森県。県交通・地域社会部 地域生活文化課サイト(https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kotsu/seikatsu/kenjinkai31.html)より「東京青森県人会の会報『東京と青森』で連載中!」の「青森県史の窓」の「39 神様の年とり(2008年5月号?)」。
北東北では、旧暦12月は毎日のように神様の「年取り(の日)」があり、その1つが12日の山の神様。神様や地域によって風習はさまざまだが「共通の供物として「しとぎ」は欠かせないようだ。」
あんこを入れず、焼かずに生で食べるのが本来のしとぎのようなことが書かれている。
「南部地方の田子町や三戸町では12日は山の神の年とりで、お神酒としとぎを十二個供えた」とあり、これが米のしとぎなのか、豆しとぎなのか、不明だが、上記、農水省うちの郷土料理の「豆しとぎ」のページには、南部地方では「神様の年取り」で豆しとぎをお供えする旨があった。
というわけで、12月12日は山の神の日で、その供え物の1つがおやき/しとぎなのだった。
日付も、一部ではお供えの個数も12で、山の神は「12」がお好きなようだ。たけやのおやきが、おそらく6個入りだったのは、2セット買えば12個になるということなのか。
冒頭の「もうヤマノカミサンだものな」は、「12月12日だから、雪や寒さが厳しくなって来たな」というニュアンス。
我が家は、山林やその関連との関わりはまったくなく、(一部が日付を意識するだけで)12月12日は特にイベントはやらない。ばあさんは男鹿出身だったから、もしかしたらそこから受け継がれたのかもしれないが、「やまのがみ」とは濁らない。
一方、秋田市内のスーパーで、それ用のおやきが売られていたということは、秋田市でも、山の神の日にお供えする一般家庭が一定数あるということなのだろうか。
そして、たけや製パンが、それ用のおやきを製造販売するということは、秋田県内全体では、山の神の日を、山の神を大切にする人たちがたくさんいるということになる。
それならば、スーパーでもたけやでも、店頭のPOPや商品パッケージで、「12月12日は山の神の日 おやきを供えて1年の感謝を!」などと宣伝すれば、需要喚起・売上向上、伝統文化の継承になるだろうに。たけやさんは、毎月の新商品紹介(と今は2025年元日からの値上げ告知)しかアップしないホームページにも掲載して。
秋田にずっといても知らないことがまだまだ多いことを、今回もまた思い知った。
ところで、青森県の資料にもあったように、山の神の日は本来は旧暦。今年の旧暦12月12日は、2025年1月11日。平年通りなら、今以上に寒さも雪も厳しい頃。季語では冬の山を「山眠る」と形容するけれど、眠った山でも生活する人たちがいて、厳冬期のその中休みの意味もあるのだろう。
ヤマノカミサン→山の神さん→「山の神様」と想像が付くものの、何だろう? 昔から何度か聞いたことがあった言葉だけど、聞き流してしまっていて、今回も聞き流しかけた。
その直後、地元スーパー・いとく新国道店へ行くと、パン・生もの菓子売り場に、見慣れぬ商品があった。タカヤナギグランマートにもあったか。イオン系列にはなし。
それは、秋田で親しまれる餅菓子「おやき」。信州のおやきとは異なり、米の粉で作る。青森県津軽では同じものを「しとぎ餅(粢餅)」と呼ぶ(おやきと呼ぶ所もあるようだが、津軽でおやきとといえば、大判焼きを指すのが一般的)。また、青森県内でも南部(八戸など県東側)の「しとぎ」は豆で作る別物。
おやき自体は、1個~数個入りのものが、スーパーでもわりと売られている。ヤマザキ系列の地元企業・たけや製パンでも製造。
今回見たおやきは、たけやのものなのだが、たまに見かけるバラ売りではなく、複数個入り。※以下、商品の描写は店頭でちらりと見ただけなので、うろ覚えです。
たしか6個だったと思うが大量のおやきが、生のサンマを入れるような細長い発泡スチロールトレイに入っていた。白いものと、ヨモギ入りと思われる緑色のもの(おやきとしてはわりと珍しい)の2種。おやきの表面には焼き目というか焦げが少々入るのが普通だが、本品は焼印で押したかのような、均一で濃いめの焦げ(たけやのバラ売りおやきはそうではない)。
パッケージ代わりのシールは、「おやき」と大きく書かれていたはずだが、別に小さく表記があった。
「山の神」と。
山の神って山の神さん? それとおやきが関係あるの?
調べた。※詳しくは「山の神」「山の神の日 秋田」等で検索してください。
山の神とは「山に宿る神の総称」。猟師や林業などに関わる人の守護神。女神とされる。箱根駅伝の山の神は、これから着想を得たのかもしれないが、言葉(文字)以外には一切関係がないことになろう。
その神が、山の木の本数を数える日があり、その日は人間は山仕事をせず、山に入らず、祭礼や宴会をするならわしが、全国各地にある。それが「山の神の日/山の神様の日」。
日付は地域によって異なるが、東北地方では12月12日が基本で、林業業界を中心に今も受け継がれていて、酒や食べ物を供えるなどする。「山の神の年取り」と呼ぶ所もある。
農林水産省ホームページ「うちの郷土料理」秋田県 おやきには「毎年12月12日に山の神に供えてきたとも伝えられ、県南地域では今でもこの時期におやきを焼いて食べるのが習わしとなっている。」とある。なお、別に、五城目町の朝市、おやつ、祝い事、春彼岸の中日にも食べたり供えたりする記述がある。
2016年で更新を終えた「男鹿市観光商工課 公式ブログ 男鹿ブロ」に2012年12月12日付「12月12日は山の神(やまのがみ)(a href="http://ogablo.jp/2012/12/120830.php)」があった。
まず、男鹿では「やまのがみ」と濁るようだ。
「各家々で おやきを作って仏壇や神棚に お供えし、その後で家族でも 美味しくいただくのが昔からの習慣です。」そうで、旧・若美町払戸の「ふっと観光案内所」の産直「みどりの会 農産物直売所」では、大量にバラ売りされていた。
さらに2015年2月16日付「男鹿総合観光案内所ミニイベント「おやき餅を作ろう!」(http://ogablo.jp/2015/02/160830.php)」。船越の男鹿総合観光案内所で、同年2月21日に行われた体験イベントの告知。「男鹿には、12月12日あるいは1月12日の「山の神の日」におやきをつくって食べるという風習が残っています。」「本格的なお家だと、神棚を飾ったり、のぼり旗を立てたりもするそうなのですが・・・?」
県南でなく県中央部でも、おやきの風習が今(10年前)もあるのだった。男鹿で山に関わる人は多くはなさそうだし、神棚でなく仏壇に供えるといった点では、本来とは少し違う趣旨になっていそうだが、広く親しまれる風習であることを意味しているだろう。
県南・大仙市の鈴木酒造店の「酒蔵日記」2015年12月21日付「山の神の日(https://www.hideyoshi.co.jp/sake/2015/12/21/2694/)」では、「うちの会社ではお餅を12個、山の神様にお供えします。」。
杵と臼で付いた白い餅を、雪見だいふくくらいのサイズにしてお盆に並べて、ろうそくととっくりとともに和室の机の上に置いた(上に神棚がある?)写真も掲載。
餅やおやきは別として、秋田県内では建設会社や曲げわっぱメーカーでも、広い意味で山や木に関わるためであろう、山の神の日に行事を行うところがあった。
ここで青森県。県交通・地域社会部 地域生活文化課サイト(https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kotsu/seikatsu/kenjinkai31.html)より「東京青森県人会の会報『東京と青森』で連載中!」の「青森県史の窓」の「39 神様の年とり(2008年5月号?)」。
北東北では、旧暦12月は毎日のように神様の「年取り(の日)」があり、その1つが12日の山の神様。神様や地域によって風習はさまざまだが「共通の供物として「しとぎ」は欠かせないようだ。」
あんこを入れず、焼かずに生で食べるのが本来のしとぎのようなことが書かれている。
「南部地方の田子町や三戸町では12日は山の神の年とりで、お神酒としとぎを十二個供えた」とあり、これが米のしとぎなのか、豆しとぎなのか、不明だが、上記、農水省うちの郷土料理の「豆しとぎ」のページには、南部地方では「神様の年取り」で豆しとぎをお供えする旨があった。
というわけで、12月12日は山の神の日で、その供え物の1つがおやき/しとぎなのだった。
日付も、一部ではお供えの個数も12で、山の神は「12」がお好きなようだ。たけやのおやきが、おそらく6個入りだったのは、2セット買えば12個になるということなのか。
冒頭の「もうヤマノカミサンだものな」は、「12月12日だから、雪や寒さが厳しくなって来たな」というニュアンス。
我が家は、山林やその関連との関わりはまったくなく、(一部が日付を意識するだけで)12月12日は特にイベントはやらない。ばあさんは男鹿出身だったから、もしかしたらそこから受け継がれたのかもしれないが、「やまのがみ」とは濁らない。
一方、秋田市内のスーパーで、それ用のおやきが売られていたということは、秋田市でも、山の神の日にお供えする一般家庭が一定数あるということなのだろうか。
そして、たけや製パンが、それ用のおやきを製造販売するということは、秋田県内全体では、山の神の日を、山の神を大切にする人たちがたくさんいるということになる。
それならば、スーパーでもたけやでも、店頭のPOPや商品パッケージで、「12月12日は山の神の日 おやきを供えて1年の感謝を!」などと宣伝すれば、需要喚起・売上向上、伝統文化の継承になるだろうに。たけやさんは、毎月の新商品紹介(と今は2025年元日からの値上げ告知)しかアップしないホームページにも掲載して。
秋田にずっといても知らないことがまだまだ多いことを、今回もまた思い知った。
ところで、青森県の資料にもあったように、山の神の日は本来は旧暦。今年の旧暦12月12日は、2025年1月11日。平年通りなら、今以上に寒さも雪も厳しい頃。季語では冬の山を「山眠る」と形容するけれど、眠った山でも生活する人たちがいて、厳冬期のその中休みの意味もあるのだろう。
山の主、山の王でもいいじゃないかと思っていましたが、「神様」発言を前提としたのなら山の神になっちゃうでしょうね…
山岳信仰として霊場のような山もありますが、それよりも身近な山々にも神が宿っていることになります。
ある意味で神がかりなことではありますが。
(間違っても元総理暗殺犯には呼びたくない)
奥深い行事で、女人禁制とかもあるとか。
昔は田舎の温泉とかで山の神コースもあったらしいですが、最近はそこらも林業も衰退して見なくなりました。