仕方がないと承知しながらも
釈然としないのが、
スーツケース死体遺棄事件の
報道である。
【川崎市の多摩川で〜】と大概、
最初に書かれるのである。
スーツケースが見つかったのは
多摩川の川崎市側なのは確かだ。
けれど犯行及び遺棄は東京・大田区。
たまさか流れついた先がわが地元なだけ。
……なのに、まるで川崎で起きて、
なんなら川崎居住者が犯人みたいに
思われそーなのが、釈然としない。
全文読めば判ることだが、
見出しだけ見る人や
片手間に耳で聴くだけの場合には、
「やっぱ川崎はタチ悪いな〜」と
刷り込まれかねないと心配だ。
かつて公害の街として知られ、
決して治安も良くなかった頃を
生きてきた世代なので、
自意識過剰なのかもと自省しつつ
愛する故郷へのトバッチリは
許せないのである。
悲痛な事件にはあえて触れない。
そしてまた、地元案件ゆえに
私のアンテナに掛かっただけで、
他の街においてもあるだろう。
【見出し】は大事だと改めて思う。
くだんの件で容疑者が再逮捕、
というニュースでやはり川崎と
銘打たれたので、ついつい
キーを叩いてしまった。
既にその名称で報道してきて、
今更変えられないのは
重々飲み込んではいるのだが。
そんな折。
図書館で物色していたらば
『多摩川物語』という本が
目に飛び込んできて、手にとった。
ドリアン助川著。