足腰大丈夫な内に、出来る限り不要雑物整理をしようと決心してから久しいが、正直あまり捗っていない。書棚や天袋、押入れ等に詰め込まれていた古い書籍や辞書、百科事典等の類も、ここ数年間で大胆に整理処分してきたつもりだが、中には、「これ、面白そう?」等と目に止まり、残してしまったものも結構有る。その中のひとつに、多分、長男か次男かが、学生時代に使っていたものに違いない、小町谷照彦著 文英堂の「小倉百人一首」(解説本・参考書)が有る。パラパラとページを捲ってみたところ、なかなか詳しく、分かりやすく、決して、「今更 向学心?」なーんてものではなく、子供の頃、作者や歌意も分からないまま、「けふ、けふ、けふ・・」「なほ、なほ、なほ・・・」等と、正月になると必ず家族でやっていた「百人一首かるた取り」を思い出して懐かしくなってしまったからで、今更になって、「へー!、そういう歌だったのか・・」、目から鱗・・、になっているところだ。
「小倉百人一首」は、奈良時代から鎌倉時代初期までの百人の歌人の歌を、藤原定家の美意識により選び抜かれた秀歌であるが、時代が変わっても、日本人の心情が呼び起こされるような気がしてくる。
ブログネタに?、頭の体操に?、いいかも知れない等と思い込んでしまい、数年前から、「春」「夏」「秋」「冬」「恋」を詠んだ歌を取り上げて、ブログ・カテゴリー「懐かしい小倉百人一首」に書き留めてきたが、そのいずれの区分にも属さないとされる歌も沢山有り、引き続き、順不同、ボツボツ、書き留めてみることにした。
百人一首で、
「春」「夏」「秋」「冬」「恋」を詠んだ歌以外の歌
その11
吹くからに 秋の草木の しをるれば
むべ山風を あらしといふらむ
出典
古今集(巻五)
歌番号
22
作者
文屋康秀
歌意
山風が吹きおろすと直ぐに、
秋の草木はしおれてしまうので
なるほど、
それで、山風のことを「嵐」というのだろう。
注釈
「吹くからに」の「からに」は、
「・・と直ぐに」「・・とともに」
「・・のために」「・・によって」意の接続助詞。
「しをるれば」=「萎れ弱ること」
「むべ」=「なるほど」と訳す副詞。
「山風をあらしといふらむ」の「あらし」は、
「嵐」と「荒らし」の掛詞。
「山」+「風」=「嵐」、シャレになっている。
古今集の中の詞書(ことばがき)によると
この歌は、歌合(うたあわせ・和歌の優劣を争う行事)の時のもので、
「山」+「風」=「嵐」
「嵐」と「荒らし」を掛詞にする等
どちらかというと、頭を使った歌、
言葉の遊戯、字解き、シャレ、に類する歌になっているが、
当時は、高く評価されたようだ。
文屋康秀(ふんやのやすひで)
平安時代初期の歌人、六歌仙の一人、
刑部中判事、山城大掾、縫殿の助、等に、任じられた。
「六歌仙」とは、
平安時代初期の優れた歌人6人のこと。
在原業平(ありわらのなりひら)
僧正遍昭(そうじょうへんじょう)
小野小町(おののこまち)
文屋康秀(ふんやのやすひで)
喜撰法師(きせんほうし)
大伴黒主(おおとものくろぬし)
参照・引用
小町谷照彦著「小倉百人一首」(文英堂)
(つづく)