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池波正太郎著 「仇討群像」

2022年04月14日 00時16分42秒 | 読書記

図書館から借りていた、池波正太郎著 「仇討群像」(文春文庫)を、読み終えた。池波正太郎の作品の中には、「剣客群像」「忍者群像」「仇討群像」と、「群像」の付く作品が、3作品有り、「群像3部作」とも呼ばれているが、そのひとつ。本書には、「よろいびつ」「興奮」「坊主雨」「波紋」「敵」「情炎」「大石内蔵助」「逆転」「深川猿子橋」の、仇討ち物、短編時代小説、9編が収録されている。

「よろいびつ」
主な登場人物・池尻小文吾、お秀、西村太兵衛、細井新三郎、笠原重次郎、三ノ松の平十
鎧櫃(よろいびつ)は、武士の鎧等を収めておく武家の誇りを象徴するもの、旗本細井新三郎の鎧櫃も書院の床の間に据えられていたが・・、細井家の新参の家来池尻小文吾が書院に忍び込み、鎧櫃を開けて取り出したものは、春画、春本の他に、金百両、盗んで逃走、一方で、用人西村太兵衛の妻、お秀が失踪。しめし合わせたものではないのか?、「必ず、斬れ!よいか」、太兵衛は、主、細井新三郎の命に従うが、小文吾を斬り伏せる自信が無い。小文吾は、弥助と名を替え、町人の姿になっていた。「あ、あいつだ」、「西村殿、斬ってしまったが、最後まで後をつけて女の居所を確かめるのでしたな」、奉行所が、お秀を捕縛、真相が明らかに・・・、

「興奮」
主な登場人物・北条造酒之助(みきのすけ)、川野九十郎、池田七郎左衛門、浅田十兵衛、山名主殿頭矩豊(とものかみのりとよ)、近藤源太兵衛、近藤宇右衛門、山田又市、高橋喜兵衛、丹羽重兵衛、小山田清左衛門、
北条造酒之助(16才)、川野九十郎(18才)は、共に山名主殿頭矩豊の小姓だったが、寵愛を一身に受けた九十郎の傲慢さが際立っていた。九十郎に、耳垢を茶碗に落とし込む等、悪い悪戯をされた造酒之助は、カッとなり小刀を抜き、九十郎を刺し殺してしまい、横目、池田七郎左衛門浅田十兵衛に報告したが、「造酒之助、逃げい」だった。ところが、寵愛した九十郎を殺害されたことと、下手人を逃した七郎左衛門、十兵衛に激怒した、山名矩豊は、七郎左衛門、十兵衛に、「上意討ち」の討手を命じる。造酒之助は、亡父主馬の親友、近藤宇右衛門を頼り、名を近藤一学と替えていたが、その近藤宇右衛門が、七郎左衛門、十兵衛に殺害された。造酒之助は、宇右衛門の実弟、近藤源太兵衛等と共に、その仇討ちに加わることになる。逃亡を助けた側が、「上意討ち」の討手となり、逆に、敵として追われる立場になるという筋書き。一時の興奮、判断ミスで失敗を重ねる「仇討ち」、実際は、かっこいい仇討ち等無いという話に思える。
「拙者、斬り合っている最中は、夢中で、少しも恐ろしくなかったが、池田七郎左衛門が討たれて、斬り合いが一段落し、残る浅田をさがしまわっている内、・・・(略)、一時も早く逃げのびたいとおもいました」

「坊主雨」
主な登場人物・入江長八郎、金子栄之助、坂田彦蔵、おつな、
蜂賀道場の高弟入江長八郎の実兄で、金子惣右衛門の養子となり、旗本堀江五左衛門邸に奉公していた金子栄之助が、同僚坂田彦蔵に斬り殺された。長八郎は、兄の仇討ちに出立するが・・・、彦蔵の行方知れず・・、思い掛けず出逢った女おつなの話から、栄之助、彦蔵、旗本の妻女を巡る事件の真相が明らかになり、長八郎は、ついに彦蔵を討つことが出来なかった。15年の歳月が流れ、北国街道の屋代宿外れに中年浪人の死体が。了誉和尚が、白木の墓標に筆を走らせた。「俗名・入江長八郎の墓」。「わしも、このお人も・・・たれが蒔いた種やら・・・」

「波紋」
主な登場人物・三宅権十郎光少(みつまさ)、長阪忠太夫、長阪折之進、朝倉筑後守宣正、大久保忠教、染川銀右衛門、染川銀之助、
大久保彦左衛門忠教の推挙で、掛川藩朝倉筑後守宣正に剣法指南役として仕えた三宅権十郎は衆道好み激しく、美少年長坂折之進を死に至らしめ、屋敷押し込みとなったが、激怒、藩士を殺し出奔、「上意討ち」の命が下される。討手が相次いで権十郎に殺され、藩の面目が立たず。討手で殺された染川銀右衛門の弟銀之助等5人が、改めて掛川を出立する。果たして「上意討ち」成就なるのか。

「敵」
主な登場人物・山崎十次郎、徳七、大黒屋儀助、中尾九兵衛、中尾伝四郎、中尾平馬、亀蔵、おふじ、初、
伊勢の国、津藩で納戸役内用掛だった山崎十次郎は、上司中尾九兵衛を殺めてしまい出奔して3年目、江戸の大黒屋儀助の家に匿われているが、九兵衛の息子伝四郎、平馬が探し回っており・・・。徳七が殺され、伝四郎が・・・、亀蔵が、おふじが・・、津、江戸、京都が 舞台。「主人、山崎十の仇討ちをした」と亀蔵。南町奉行牧野大隅守の裁決は?

「情炎」
主な登場人物・伊東政七、内山文五郎、おぬい、おたか、与蔵、藤木左右助、中西作兵衛、木村源治郎、
内山文五郎は、足軽長屋の伊東政七の妻おぬいを犯し、政七を殺し、新発田藩城下から逃亡した。おぬいと娘おたかは、おぬいの実兄与蔵に引き取られたが、おぬいは自殺、おたかは江戸の藤木左右助の養女となり成長。おたかと婚約した木村源治郎が、内山文五郎と遭遇し・・。

「大石内蔵助」
主な登場人物・大石内蔵助良雄、鍔屋家伴、大石主税、山城屋一学、おやす、吉田忠左衛門、
吉良上野介邸討ち入り直前から討ち入りまでの大石内蔵助の動向を描いた作品。

「逆転」
主な登場人物・内田十蔵、たか、中根政之助、中根才次郎、井上弥五郎、森口清左衛門、
中根政之助が、同じ勘定方で隣家同士の井上弥五郎に斬り殺される事件が起きる。井上弥五郎は逃亡。政之助の妻たかと政之助の弟中根才次郎と奉公人の内田十蔵の3人が、夫、兄、主の敵討ちを果たすため国を出るが・・、その裏には、入不義密通が隠されており、・・・、「御上意である。覚悟をせよ」

「深川猿子橋」
主な登場人物・平井仙竜、鹿島相模、神保左京、蒲生彦作、おきみ、おはる、崎山平内、
陰陽師平井仙竜は、おはると夫婦になったが、おきみ、おはる、母娘から「一生添いとげることは出来ないかも知れない」と言われる。その分けは?、深川猿子橋で、崎山平内を見掛けたおきみ、おはるは・・・。平井仙竜が馳せ参じ・・・、崎山平内は?、平井仙竜は?・・・。母娘が泣きくずれ、仙竜はかすかに笑い、「強い者は、弱い者を馬鹿にしちゃいけないのだよなあ」、この夜、仙竜は 29歳の生涯を終えた。


「解説」 佐藤隆介
仇討(あだうち)という単語を、たとえば広辞苑で調べてみると、「君父などを殺した者を討ちとって報復すること。かたきうち」とあり・・・・(略)。日本人は昔から仇討というテーマに強く惹かれるようである。日本三大仇討といえば、曽我兄弟の富士の裾野の仇討、伊賀上野の荒木又右衛門の三十六人斬り、それから四十七士の忠臣蔵、というのが通り相場になっているが、われわれにとっては史実がどうであったということより、芝居や講談本を通じて得たイメージの方が身近である。・・・・・(略)。折角この「仇討群像」を読まれた読者には、是非、すでに刊行されている「剣客群像」「忍者群像」の二冊をも読まれることをお勧めする。池波正太郎ならではの小説の醍醐味を満喫出来る三部作だからである。・・・(略)。


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