足腰大丈夫な内に、出来る限り不要雑物整理をしようと決心してから久しいが、正直あまり捗っていない。書棚や天袋、押入れ等に詰め込まれていた古い書籍や辞書、百科事典等の類も、ここ数年間で大胆に整理処分してきたつもりだが、中には、「これ、面白そう?」等と目に止まり、残してしまったものも結構有る。その中のひとつに、多分、長男か次男かが、学生時代に使っていたものに違いない、小町谷照彦著 文英堂の「小倉百人一首」(解説本・参考書)が有る。パラパラとページを捲ってみたところ、なかなか詳しく、分かりやすく、決して、「今更 向学心?」なーんてものではなく、子供の頃、作者や歌意も分からないまま、「けふ、けふ、けふ・・」「なほ、なほ、なほ・・・」等と、正月になると必ず家族でやっていた「百人一首かるた取り」を思い出して懐かしくなってしまったからで、今更になって、「へー!、そういう歌だったのか・・」、目から鱗・・、になっているところだ。
「小倉百人一首」は、奈良時代から鎌倉時代初期までの百人の歌人の歌を、藤原定家の美意識により選び抜かれた秀歌であるが、時代が変わっても、日本人の心情が呼び起こされるような気がしてくる。
ブログネタに?、頭の体操に?、いいかも知れない等と思い込んでしまい、数年前から、「春」「夏」「秋」「冬」「恋」を詠んだ歌を取り上げて、ブログ・カテゴリー「懐かしい小倉百人一首」に書き留めてきたが、そのいずれの区分にも属さないとされる歌も沢山有り、引き続き、順不同、ボツボツ、書き留めてみることにした。
百人一首で、
「春」「夏」「秋」「冬」「恋」を詠んだ歌以外の歌
その13
人もをし 人も恨めし あぢきなく
世を思ふゆゑに 物思ふ身は
出典
続後撰集(巻十七)
歌番号
99
作者
後鳥羽院
歌意
ある時は人がいとおしく思われ、
またある時は人が恨めしく思われる。
嘆かわしいことだ。
この世をおもしろくないものと思うところから、
さまざまな物思いをするこの私の身には。
注釈
「人もをし」の「をし」は、「愛し(おし)」が原形で、
「いとおしい」「かわいい」の意。
「人も恨めし」の「恨めし」は、「恨みに思う」「にくらしい」の意。
「あぢきなく」=「苦々しい」「面白くない」の意。
「世を思ふゆえに」=「この世をつまらなく思うために」の意。
「物思ふ身は」=「まざまに世間の雑念にとらわれるこの身には」の意。
鎌倉幕府との対立が深刻化している時期、
後鳥羽院33歳の時の作。
鎌倉幕府の横暴に対する嘆き、
苦悩する人間上皇の深い悲愁が
格調高く、歌われている。
後鳥羽院(ごとばいん)
高倉天皇(第八十代)の第四皇子、第八十二代天皇、
安徳天皇の後を受け、4歳で即位し、
19歳で、皇太子為仁親王に譲位、
以後、院政を執った。
鎌倉幕府討幕を計画した「承久の乱」を起こしたが失敗、
隠岐島に流され、在島19年のまま没した。
参照・引用
小町谷照彦著「小倉百人一首」(文英堂)
(つづく)