映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「砂男」 有栖川有栖

2025年02月03日 | 本(ミステリ)

単行本未収録

 

 

* * * * * * * * * * * *

都市伝説“砂男”を調べていた学者が刺殺された。
死体にはなぜか砂が撒かれていて……。

奇怪な殺人事件に火村とアリスが挑む表題作など、
これまで雑誌掲載のみとなっていた
幻の〈火村シリーズ〉2作をはじめ、
〈江神シリーズ〉やノンシリーズの
貴重な作品6編が一冊に!

* * * * * * * * * * * *

 

有栖川有栖さんの、単行本未収録短編集ということで、これは見逃せません。
火村シリーズと江神シリーズが一冊の本に入っているなんて、贅沢すぎです。
といっても最近はほとんど火村シリーズが多いので、
江神シリーズのおなじみ登場人物、望月・織田コンビはなんとも懐かしい!!

 

著者の「前口上」にあるのですが、
本作中には法律の改正や社会情勢の変化によって、
内容が古びてしまったことで、単行本や文庫収録から漏れてしまったものもあるそうです。
確かに、めまぐるしく変わる世の中で人々の心の動きやトリックにも変化が現れますね。
例えば、スマホがある時期と無かった時期とでは、
推理の仕方にもかなりの違いがあるのは容易に想像がつきます。

まあつまり、有栖川有栖さんのシリーズものも、
それくらい長きにわたって描き続けられているということでもあります。

 

表題作「砂男」は、都市伝説“砂男”を調べていた学者が刺殺されたというもの。
しかも、その死体には砂がふりかけられていた・・・。

元々は西洋で語られている話、砂男。
夜寝付けずにいると、砂男が来て、パラパラと砂を振りかけるというのです。
もしその砂を振りかけられたら、深い眠りに落ちてしまう。

ところが作中で語られる日本の都市伝説は、
砂をかけられたら2度と目が覚めない、すなわち死んでしまうのだと・・・。

「口さけ女」を代表とするこのような話が、どこから生じてどのように広まっていくのか、
確かに研究すると面白そうですね。
ただ、それこそ現在であれば、SNSであっという間に拡散する都市伝説。
なんだか夢がないなあ・・・。

 

「砂男」 有栖川有栖 文春文庫

満足度★★★.5