映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

終の信託

2012年11月04日 | 映画(た行)
“もしも”のときのために



                    * * * * * * * * * 

薄暗く冷え冷えとした検察庁の待合室。
長々と一人待たされ、過去を回想する女。
それが本作主人公、女性医師の折井綾乃(草刈民代)です。
彼女がこの検察庁に呼び出されることになった顛末が、
回想という形で語られます。



不倫相手に捨てられ、どん底の気分の綾野は、
重度の喘息患者、江木(役所広司)の優しさに癒されていきます。
その江木が綾乃に言う。
もしもの時は早く楽にして欲しい、と。
その後、江木は発作のため心肺停止状態で病院に運び込まれるのですが、
命は取り留めたものの、こんこんと眠り続けるばかり。
江木のかつての言葉を思い出した綾乃は、
ある決意をするが・・・。



なんとも重苦しい・・・。
でもこの作品、
この回想の後に更にまた、がーんと打ちのめされるような展開となります。
ようやく、検察官との面談となるのですが・・・。


法と言うのは非情なものですね。
検察官役の大沢たかおさんがすごーく嫌な奴に見えました・・・(^_^;)
ここまでストーリー上で連綿と語られてきた綾乃の心情はバッサリと切り捨てられ、
丸裸の骨子だけにされてしまう。
そうなってしまうと、浮かび上がってくるのは犯罪。
生前の患者の意思をあくまでも尊重しようとしただけなのに、
それが果たして犯罪なのか・・・?
今作は、非常に重く難しい問いを私達に投げかけているのでした。


私もやはり、もしもの時にはさっさと楽にして欲しいと思うのですが、
そのためには予めしっかり家族にその旨を伝え、文書にも記しておく、
と、そういうことをしたいと思います!!
・・・でも、その“もしも”の時はまだまだ先だと思っている。
“もしも”とは明日かも知れないのですけどね・・・。

「終の信託」
2012年/日本/144分
監督:周防正行
出演:草刈民代、役所広司、浅野忠信、大沢たかお、細田よしひこ