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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

人生の特等席

2012年11月25日 | 映画(さ行)
イーストウッドを見る劇場こそが“特等席”



            * * * * * * * * *


2008年の「グラン・トリノ」以来4年ぶりのクリント・イーストウッド出演作品。
監督は、クリント・イーストウッド監督の愛弟子と言われるロバート・ロレンツ。
なるほど確かに、これはクリント・イーストウッドワールドでした。


大リーグの伝説的スカウトマンといわれるガス(クリント・イーストウッド)。
けれども最近は寄る年波には勝てず、
視力が衰えてきているのですが、周囲には隠しています。
けれど、フロントもそんなガスには危惧を抱いていて、
ガスに見切りをつけるか、継続か、そんな判断を次のドラフトにかけようという心づもり。
ガスはノースカロライナの注目の選手の試合を見に行くのですが、
やはり視力の衰えで心もとない。
そんなガスの手助けに来たのが一人娘のミッキー(エイミー・アダムス)。
けれどミッキーは長くガスと離れて暮らしていて、
どうにもうまく心が通じ合いません。
はてさて、この二人の行方は・・・



特に大きな事件が起こるわけでもありませんし、
まあ先も読めるし、どこかで見たような気もするストーリー。
だけれども、何なのでしょう、この安心感。
ゆったりと楽しめてしまう。
やはり、クリント・イーストウッドの存在感なのかも知れませんね。
しぶくて頑固で、時折ものすごく鋭い。
でも家族に対しては不器用で、なかなか本当の思いを口に出せない。
よく日本にもいそうな“お父さん”ですよね。
だから日本人は、特に親しみを感じるような気がします。
そして、この役は彼以外には考えられません。



エイミーは早くに母を亡くし、ガスに男手一つで育てられたのです。
彼とともにスカウトの旅をし、また、野球の知識をしっかりと学んだ。
けれど、ある時急に親戚に預けられ、
その後ほとんど連絡もなく、ほおって置かれた。
そのことでとても傷ついていたのです。
あまりにも冷たいその仕打ちと思えたのは、
単に彼が忙しかったからというのではなく、しっかりと理由があったからなのでしたが
彼女にはそれは知らされていなかったのです。


そんな父と娘の絆を結ぶものはやはり野球。
見終えた後の満足感たっぷり。
ハリウッド的なハッピーエンド、
お気楽といえばそうなのですが、やっぱり好きです。
この気分を味わいたくて映画を見ているといっても過言ではない。



今作中で、ガスはパソコンを使いません。
(というより、使えない)。
自分の目と耳と経験が全て。
このようなところで、先のヒット作でもある「マネーボール」を思い出してしまいました。
あちらは徹底したデータによる野球。
単純にどちらがいいというものではないとは思いますが、
人が積み上げた経験の価値は、コンピューターに勝ってほしい。
まあ、これは今や殆ど願望に近いかも知れませんけれど。


今作、原題は“Trouble with Curve”。
ドラフト1位指名候補の高校生が、
カーブを打てないとガスが見切ることからくる題名なんですね。
でも、邦題は「人生の特等席」。
これも作中のセリフにある言葉です。
ガスは自分のスカウトの仕事について「こんなのは人生の3等席だ」とミッキーにいうのです。
けれどもミッキーは、いつも一緒に旅をしたお父さんの横が「人生の特等席だった」といいます。
そこで私たちは、なるほど、だからこの題名・・・と気づくわけですが、
確かにこの邦題はいいですね。
自分にとっての人生の特等席はどこなのか。あるいはどこだったのか。
思いを馳せてみるのもいいかも知れません。


「人生の特等席」
2012年/アメリカ/111分
監督:ロバート・ロレンツ
出演:クリント・イーストウッド
エイミー・アダムス、ジャスティン・ティンバーレイク、ジョン・グッドマン、マシュー・リラード