映画と本の『たんぽぽ館』

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アデライン、100年目の恋

2015年10月31日 | 映画(あ行)
永遠の若さを誰もが望むけれど



* * * * * * * * * *

29歳の姿のまま、100年以上を生き続けた女性ジェニー。
こう聞くと、ついヴァンパイアを想像しますね。
決して年を取らない、永遠の生命と孤独を抱えた存在ということで。
でも本作、ヴァンパイアものではありません。
1908年生まれのアデラインが29歳で老化が止まってしまったのは、
車の事故による低体温と落雷による強力な電磁圧縮による・・・、
とかなんとか、まあどうでも良い理屈がつけられています。
まあ、理屈はどうでもよろしい。
ヴァンパイアものはどうしても人の生き血を吸わなければならないという制約がつき、
ホラー的展開にせざるを得ないのですが、
本作ではそこをバッサリ切り取って、
永遠の若さはすなわち、愛する人といつまでも寄り添うことができない
永遠の孤独である、という切ない事情のみを
クローズアップしているところで成功しています。



アデラインはここではジェニーと名乗り生活しています。
いつまでも年を取らないと怪しまれ厄介なことになってしまうため、
ほぼ10年ごとに名前も住所も変えなければなりません。
そんなある日、ホテルの年越しパーティーで彼女はエリスという青年と出会い、
互いに惹かれ合います。
でも、恋愛は無理。
彼の元を去ろうとしていたアデラインに、
彼女の娘フレミングが「あきらめないで」と励まします。
フレミングは娘と言っても、普通に年齢を重ねているので、
完全におばあちゃん。

不思議です。
娘というよりほとんど祖母に見える女性がアデラインの娘で、
彼女だけがアデラインの秘密を知っているのです。
でも、どう考えてもフレミングの寿命も残り僅か。
その先のアデラインの孤独を思うと暗澹としてしまいます・・・。



それで、しばしエリスとの別れを引き伸ばしたアデラインは、
彼の両親の結婚40周年を祝うためエリスの実家を訪れます。
しかし、エリスの父ウィリアムは彼女を見るなり「アデライン」と呼び、唖然としている。
実はウィリアムはかつてアデラインと愛しあった相手なのでした。

しかし、ここでも彼女は自分の秘密を守るため、
彼の元をある日突然に去っていたのです。
「アデラインは私の母です。」と、とっさに取り繕うアデライン。


うーん、なんとも切ない。
かつて愛した人は、でもその後結婚し、慣れ親しんだ妻がそばにいる。
このように普通に家庭を築くことができない自分を思い知ります。
私たちはアンチエイジングにやっ気になるけれど、
普通に年を取っていくことは、案外大切なことなのですねえ・・・。



アデラインが身に着けているその時々のファッションがステキです。
服装や髪型で、随分その時代の雰囲気が出るものですよね。
見かけは29歳でも実は100歳以上。
これまでに身につけた知識や教養、経験。
それがにじみ出る聡明さとなって表れます。
しっとりと落ち着き聡明な雰囲気がよく表されていました。
いい感じです、ブレイク・ライブリー。
ハリソン・フォードもさすがにすっかりお年を召しましたが、ステキでした。
彼の青年時代を演じた方が、若き日のハリソン・フォードに、
ほんのちょっぴり似ていたかも。

「アデライン、100年目の恋」
2015年/アメリカ/113分
監督:リー・トランド・クリーガー
出演:ブレイク・ライブリー、ミキール・ハースマン、キャシー・ベイカー、ハリソン・フォード、エレン・バースティン

時と人のロマンス度★★★★★
満足度★★★★☆