映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

薄氷の殺人

2015年10月20日 | 映画(は行)
美しき未亡人と・・・



* * * * * * * * * *

本作は、2014年ベルリン国際映画祭で
グランプリと主演男優賞を獲得したということで興味を持ちました。
中国の沈んだトーンのクライム・サスペンス。
ノワールですね。



1999年中国北部の地方都市。
一人の男の切断された死体が、6つの都市にまたがる15箇所の石炭工場で次々と発見されます。
妻に去られ、呆然としていた刑事ジャン(リャオ・ファン)が、捜査を担当。

容疑者は逮捕時に抵抗し射殺されてしまい、
事件は未解決のままになってしまいます。
その5年後、ジャンはその時に負った怪我のため警察をやめ、
生きる目的を見失ったまま酒浸りで、しがない警備員をしています。
そんな時、警察が5年前と似た手口の事件を追っており、
容疑者はあの5年前の事件の被害者の妻ウー・ジージェン(グイ・ルンメイ)であることを知り、
独自で調査を始めます。
美しく、何かしら陰りがあり、謎めいた未亡人ウーに、
ジャンは次第に惹かれていきますが・・・。



バラバラ死体が一度に拡散して発見された謎。
そして真犯人。
しっかりしたミステリです。
暗く重いトーンでありながら、時折ふと笑ってしまいたくなるほのかなユーモアもあり、
なかなか見応えのある作品です。


本作、中国語の原題は「白昼の花火」という意味の言葉。
これは見事にラストシーンそのものなのですが、このラストがいい。
ここまでの暗いトーンを吹き飛ばして、何やら痛快な気分すらします。
そしてまた、英語の原題はまた別で
“BLACK COAL,THIN ICE”(石炭と薄氷)。
薄氷は、スケートリンクのシーンが出てくるので、そのことを指しています。
邦題はこちらを採ったんですね。
何しろ凶器がスケートの刃だったりするので・・・これも意味深。



薄氷の殺人 [DVD]
リャオ・ファン,グイ・ルンメイ,ワン・シュエピン
ポニーキャニオン


「薄氷の殺人」
2014年/中国、香港/106分
監督・脚本:ディアオ・イーナン
出演:リャオ・ファン、グイ・ルンメイ、ワン・シュエビン、ワン・ジンチュン